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「なんで分からないのかな」3度注意されても動かなかった家族。ロープウェイの最前列から聞こえてきた、耳を疑う会話

  • 2026.9.16

列の先頭の、真横から

連休の観光地は、ロープウェイの乗り場から外の坂道まで行列が伸びていた。

私の前に並んでいた親子は、順番が近づくたびにゴンドラの中をのぞき込んでいた。

「ねえ、前の席に座れるかな」

子どもが母親の袖を引いた。

「どうだろうね。空いてたら座れるかもね」

「座りたいなあ」

子どもの目当ては、足元近くまで大きな窓が広がる最前列だったらしい。親子は三十分ほど列に並び、ようやく乗り場の近くまで来ていた。

列がロープの手前まで進んだときだった。

横から四人家族が歩いてきた。大人が二人、小学生くらいの子どもが二人。四人はあたりを見回したあと、そのまま先頭のすぐ脇に立った。

制服姿の係員がすぐに近づいた。

「すみません、お客様。最後尾はあちらです」

大人のひとりが、意味が分からないというように首をかしげた。

係員は坂の下を指さし、もう一度伝える。

「こちらではなくて、あちらから並んでいただけますか?」

それでも四人は顔を見合わせるだけだった。

係員は今度は順路を示す掲示を指さした。

「列は、あちらです。お願いします」

これで三度目だった。

大人の二人はまた首をかしげた。

後ろから、小さな声が聞こえた。

「なんで分からないのかな…」

私も、そうなのかもしれないと思った。

そのときゴンドラが乗り場へ入ってきた。係員は扉の前へ移動し、降りてくる乗客の案内を始めた。列も少しずつ前へ動き出す。

四人は先頭の横に立ったままだった。

動き出した瞬間に

乗客が降り終わり、今度は乗車が始まった。

前の人たちが歩き出すと、四人家族もその流れに混ざるように中へ入っていった。

そして、そのまま最前列へ向かった。

「ここ!ここ座ろう!」

子ども二人が嬉しそうに席へ駆け寄る。

私の前にいた親子も続いて乗り込んだが、最前列はもう埋まっていた。

二人は少し離れた壁際に立った。

子どもが最前列を見ながら、小さくつぶやいた。

「…前、座りたかったな」

母親は一瞬だけそちらを見てから、子どもの肩に手を置いた。

「うん。残念だったね。でも、ここからもちゃんと見えるよ」

「…うん」

「ほら、もう動くよ」

扉が閉まり、ゴンドラがゆっくり地面を離れた。

木々が少しずつ下へ遠ざかり、谷が見え始める。

その瞬間だった。

最前列から、さっきまでとはまるで違う調子の声が聞こえた。

「うわ、けっこう揺れる!」

「だから言ったじゃん。最初ちょっと怖いって」

「ねえ、下見て!すごいよ!」

私は思わず最前列を見た。

四人は笑い合っていた。

さっきまで係員に何を言われても首をかしげていた姿が頭に浮かび、すぐには状況が飲み込めなかった。

最前列では子どもたちが窓の外を指さし、大人二人も楽しそうに景色を眺めている。

少し後ろでは、さっきの子どもが母親のそばで黙って外を見ていた。

目の前にはきれいな山の景色が広がっていた。それでも私はしばらく、さっきのやり取りが頭から離れなかった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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