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「二人で会うのは、ちょっと困ります」行事のたびに近づいてきた保護者。卒業前の昇降口で返ってきた、思いがけない一言

  • 2026.9.16

バザーの準備中、隣の椅子に座った人

子どもが同じ学校に通っているというだけの間柄だった。授業参観で顔を合わせれば会釈をして、天気の話を少しする。その程度の付き合いが、何年も続いていた。

変わったのは、体育館でバザーの準備をしていた日からだ。私が並べ終えたパイプ椅子の端に腰を下ろすと、その人は列をぐるりと回り込んできて、隣の一脚を引いた。

「休みの日って、何してるの?」

突然だったので、私は少し考えた。

「え…特に何も。洗濯したり、家のことをしたりするくらいですよ」

「へえ。じゃあ、仕事は何曜日が休みなの?」

そこまで聞かれるとは思わず、私は曖昧に笑った。

「曜日は、その週によっていろいろなので」

それ以上は答えなかった。

世間話にしては質問が細かい。そう感じ始めて、配る予定の名簿の束を、私はいつのまにか二度数え直していた。

「あのさ、実はちょっと相談したいことがあるんだよね。うちのことで」

そのとき、先生から次の作業について声がかかり、話はそこで途切れた。私は少しほっとして立ち上がった。

ところが片づけのあいだも、その人は何度か私の近くへ来た。

作業が終わりかけたころ、また声をかけられた。

「ねえ、このあと時間ある?よかったらランチでも行かない?」

私は一瞬、どう返すか迷った。

「すみません。そういうふうに二人で会うのは、ちょっと困ります」

相手は少し驚いたような顔をして、「そっか」と言った。

曖昧に終わらせてはいけない気がして、私はもう一度伝えた。

「ごめんなさい。これからも、こういうお誘いはやめてもらえると助かります」

言いながら、声が震えないように気をつけていた。ここまで言えば伝わったはずだと、そのときの私は思っていた。

断ったあとも、同じことを聞かれた

次の運動会の日、その人は保護者の列から離れ、受付をしていた私の机の前まで来た。

「久しぶり。元気だった?」

「はい」

短く返して、私は手元の作業を続けた。

すると、少し間を置いて聞かれた。

「休みの日って、何してるの?」

またその話かと思い、手が止まりそうになった。

私は答えず、受付票だけを差し出した。

「こちらにお願いします」

相手は何か言いたそうにしていたが、そのまま受付票を受け取って列へ戻った。

二度目だった。

三度目は、卒業前の進路説明会の帰りだった。昇降口で靴を履き替え、傘を開こうとしていると、横から声をかけられた。

「もう帰るの?」

顔を上げると、その人だった。

「はい。失礼します」

そのまま外へ出ようとすると、後ろからまた声がした。

「休みの日って、何してるの?」

今度は、何もなかったように返す気にはなれなかった。

「……その話、前にもしましたよね。もう答えません」

相手は少し黙ったあと、何気ない口調で言った。

「でも、水曜が休みなんでしょう?」

私は思わず振り返った。

「…どうして、水曜って知ってるんですか?」

相手はすぐには答えなかった。

私はそれ以上聞かず、そのまま昇降口を出た。

帰り道、同じ委員をしていた友人に追いつかれた。

「どうしたの?なんか顔、こわばってるよ」

顔を見た途端、張っていたものが少し緩んだ。

「……ちょっと聞いてほしいことがあって」

歩きながら事情を話すと、友人は足を止めた。

「え、前にちゃんと断ったんだよね?」

「うん。二人で会うのは困るって言った」

「それなのに、まだ聞いてくるの?」

私はうなずいた。

「休みの日は何をしてるの、と聞かれた」

友人は眉を寄せた。

「それは嫌だよ。しかも、水曜って何で知ってるの?」

「分からない。私、言ってないと思う」

口に出してみると、急に気味が悪くなった。

それまでにも、行事で顔を合わせると、人の多いほうから私を探すようにその人の顔が動くことがあった。廊下でも体育館でも、その視線の先に自分がいると感じることが増えていた。

卒業式の日、体育館にはパイプ椅子がずらりと並んでいた。

私は席につくまで、無意識に何度か周囲を確認していた。

けれど、その日は声をかけられることはなかった。

それきり、その人と会うこともなくなった。

それでも、ときどき思い出す。

「でも、水曜が休みなんでしょう?」

私は、自分の休みが水曜日だと、その人に話した覚えがない。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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