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スイスの土や水に年間200トン超の微小プラスチックが降る

  • 2026.9.14
スイスの土や水に年間200トン超の微小プラスチックが降る
スイスの土や水に年間200トン超の微小プラスチックが降る / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

山小屋のテラスに干した服にも、都会と同じ空気が降りてくる。

機能性の衣類からほつれた繊維、捨てられたペットボトル、置き去りの包装。

こうしたプラスチックは環境に入ると長く残り、紫外線や雨、オゾンでもろくなって、力が加わるたびに細かく砕けていきます。

風に巻き上げられれば、大気に乗って遠くまで運ばれる。

その粒子がどれだけスイスの土と水に戻ってくるのかは、これまで分かっていませんでした。

スイス連邦材料科学技術研究所(Empa)などの研究チームは、都市から山地まで5地点で1年間、空から降るマイクロプラスチックを測りました。

結果、標高2000m未満の地域には、年におよそ219トンのマイクロプラスチックが降り積もると推計されました。

対象は直径20〜215マイクロメートル(1マイクロメートルは1mmの千分の1)の粒子で、タイヤの摩耗粉は含みません。

農地にはおよそ78トン、水域には直接およそ10トンが入ると見積もられています。

都市から離れた場所では、どれくらい少ないのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年8月20日に『Atmospheric Chemistry and Physics』にて発表されました

目次

  • チューリッヒは2倍以上、でも田舎と山は「同じくらい」
  • 粒子を1つずつ「赤外線」で見分け、重さに換算した

チューリッヒは2倍以上、でも田舎と山は「同じくらい」

チューリッヒは2倍以上、でも田舎と山は「同じくらい」
チューリッヒは2倍以上、でも田舎と山は「同じくらい」 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

測定した場所は5つ。

チューリッヒ、デューベンドルフ、マガディーノ、パイエルン、そしてジュラ山脈のショーモン山です。

都市、郊外、農村2か所、山地という顔ぶれ。

2024年5月から2025年5月まで、4週間ごとに試料を集めました。

集めたのは、雨や雪が空気中の粒子を洗い落とす「湿性沈着」と、重力で粒子が落ちてくる「乾性沈着」の両方です。

都市のチューリッヒでは、1平方メートルあたり1日平均881個の粒子が降っていました。

ほかの4地点は249〜331個で、都市よりはっきり少なく、しかも互いによく似た値でした。

人口の密度、交通、屋外のプラスチック製品を考えれば、チューリッヒが2倍以上になるのは驚きではありません。

研究チームが予想外だったのは、大都市の外での値の近さでした。

人の多い場所に近いほど高いと予想していたのに、そうした差は見えなかった、と研究チームは述べています。

大気中のマイクロプラスチックは都市だけの現象ではなく、人の少ない地域にも届いていることを示唆する結果です。

重さで見ると、都市では1平方メートルあたり1日53マイクログラム、ほかの地点は13〜21マイクログラムでした。

粒の数から、どうやって「トン」を出したのでしょうか。

粒子を1つずつ「赤外線」で見分け、重さに換算した

粒子を1つずつ「赤外線」で見分け、重さに換算した
粒子を1つずつ「赤外線」で見分け、重さに換算した / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

分析に使ったのは、3つの研究機関が共同で使う粒子の実験室。

集めた粒子をフィルターの上に載せ、赤外線の顕微分光という方法で画像として分析します。

怪しい粒子だけを調べるのではなく、無作為に選んだフィルターの領域を点ごとに自動で走査する手法を、研究チームは開発しました。

これで、どの粒子が本当にプラスチックで、どの種類なのかを判定できました。

赤外線のスペクトルをポリマーの参照データと照合するのですが、区別しにくい組み合わせもあります。

そのため一部の種類は、まとめて1つの分類として報告しています。

最も多かったのはPET(ペットボトルなどに使われるポリエチレンテレフタレート)の仲間で31%、次いでポリエチレンの仲間が26%、ポリプロピレンが21%。

ポリエチレンとポリプロピレンは最も広く使われるプラスチックで、包装やフィルム、容器、日用品に入っています。

重さは、粒子1つ1つの2次元の寸法から楕円体の体積を求め、種類ごとの密度を掛けて計算しました。

処理の途中で失われる分は標準の粒子で補正し、空試料に混ざる分も差し引いています。

年間219トンという量は、この沈着率と土地利用の統計から求めた推計です。

大気を通じたプラスチックの移動は、以前の研究でも示されてきました。

ただ、手法や対象の粒径がまちまちで結果を比べにくかったため、研究チームはスイスのデータを、できるだけ信頼できる方法でそろえることを目指しました。

【これまでの研究】

この測り方の不確かさは、同じ研究機関のチームが以前に評価しています。

スイス連邦材料科学技術研究所などの研究チームは以前に、試料の採取から赤外線の分析までの一連の手順を作り、各段階の不確かさを1つずつ見積もりました。

標準の粒子を加えて回収率を調べると平均でおよそ九割が回収され、粒子の損失は限られていると考えられました。

一方、1つの試料の粒子の数の総合的な不確かさはおよそ九割、粒子の数と大きさから重さへの換算にはさらに五割ほどの系統的な誤差が見込まれると報告しています(関連研究)。

空から降るプラスチックは、都会の空の話ではなく、山の上の空気の話でもありました。

山小屋の洗濯物が乾く間にも、1平方メートルに数百個が降ってくる計算です。

参考文献

Microplastics fall on rural Switzerland, adding up to hundreds of tons a year (Phys.org / Empa)
https://phys.org/news/2026-09-microplastics-fall-rural-switzerland-adding.html

Atmospheric deposition of microplastics: a sampling and analytical method including the associated measurement uncertainties (Atmospheric Measurement Techniques, 2026)
https://doi.org/10.5194/amt-19-371-2026

元論文

Wet and dry atmospheric deposition of microplastics at urban, suburban, rural and mountainous sites in Switzerland
https://doi.org/10.5194/acp-26-11803-2026

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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