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平均年齢86歳の勉強会が刺激に。元日テレアナウンサー【石川牧子さん】76歳が語る、老人ホームで広がる人づき合いと学びの時間

  • 2026.9.13

平均年齢86歳の勉強会が刺激に。元日テレアナウンサー【石川牧子さん】76歳が語る、老人ホームで広がる人づき合いと学びの時間

かつて日本テレビで、「アメリカ横断ウルトラクイズ」「世界陸上」など伝説的番組の司会を務めた名アナウンサー石川牧子さん。民放キー局で女性初のアナウンス部長となったレジェンドです。第一線を退いた後もフリーランスで仕事を続けながら、5年前、老人ホームへ入居。人生の新たなフェーズに入った石川さんが考える「これからの人生で一番大切にしたいこと」とは。

Profile

いしかわ・まきこ●1949年山形県鶴岡市生まれ。東京女子大学短期大学部卒業後、日本テレビにアナウンサーとして入社。「アメリカ横断ウルトラクイズ」など数々の番組の司会を担当し、民放キー局で女性初のアナウンス部長に。第一線を退いた後、2014年5月まで日テレ学院学院長としてアナウンサーの指導・育成に携わり、コーラスグループ「フォレスタ」ライブの司会を16年間務めた。NPO法人日本マナー・プロトコール理事、BSよしもと番組審議員など多数歴任。最新刊は『自分らしく老いる覚悟。元祖女性アナウンス部長 私、老人ホームに入りました!』(青娥書房)。

英会話に水墨画、囲碁……まだまだ上達したい

「ガチャガチャとした音に囲まれた、移り変わりの速い世界で長い間、仕事をしてきたので、第一線を退いてからは、ゆったりと穏やかに過ごしたいというのが願いでした。老人ホームに入ったら、好きなDVDを心ゆくまで観ようとプレーヤーを購入して持ってきましたが、実は忙しくてまだ一度も見ていないんです」

仕事のない日は、部屋の整理をしたり、読書をしたり、料理を作ったり、何かと忙しいと言う。

「月2回、英会話のオンラインレッスンを受けています。予習復習もしますし、英作文の宿題もあります。忘れている単語やスペルが多く、いちいち辞書を引くところからなので、ものすごく時間がかかります。でも、『ここでくじけてはいけない』と自分を奮い立たせています。レッスンのおかげで、外国の方に話しかけられてもパッと返事ができるようになりました。『素晴らしいじゃない!』と自画自賛しています(笑)」

月1回、ホーム内で開かれる水墨画教室に参加している。囲碁クラブにも入っていた。

「負けず嫌いなので、勝ちたいんです。でも、あまり強くないので負けてばかり。イライラするのでいったんお休みしています。そのかわり、AIを使って自習したり、時間のあるときは囲碁盤に碁石を打って勉強。本である程度の定石を学ばないと先に進めないので、そういうことをしているうちに時間が過ぎていきます。自分で言うのもなんですが、勉強している時間が結構長いです。でも、まだ自分の理想とする過ごし方には遠く……。もっと部屋をすっきりさせて、もっと読書する時間を増やしたいんです」

平均年齢86歳の勉強会も刺激に

ホーム内の気心の知れた友だちと、お茶を飲みながらおしゃべりをするのも楽しい時間。

「今、一番ウマが合う友だちは90歳。私は何かわからないことがあると『どうしてそうなったの?』とか『なんで?』と聞いてしまうんですが、彼女も同じタイプ。『あなたといると学生時代に戻ったみたい』と喜んでくれて、話も弾みます。『大人ならいちいち聞かずに察するべき』とか『そんなことどうでもいいじゃない』と多くの人が思うようなことも、聞かずにいられない。私が子どもっぽいのかしら」

客観的に見ると、その知的好奇心こそが石川さんの若々しさの秘訣だと思える。

「確かに、年を重ねることで知る喜びをなくしてしまう人もいますね。老いてくると世間が狭くなって、世間話以上に話が膨らまないんです」

石川さんは勉強会にも参加している。

「よく夕食を共にする人たちと、ときどき勉強会を開いています。94歳と85歳の男性、90歳の女性と76歳の私がメンバーで、85歳の男性が元大学教授なので、先生役として脳の話やAIの話などをしてくれます。この会に誘われたのは、私がしょっちゅう外に出て、新しいことを吸収してくるから。会に新しい空気を入れるため、ということらしいです」

政治家の講演会をたびたび聞く機会のある石川さんは、そこで聞いたことを食事の席で披露することもあり、皆が関心を持って聞いてくれると言う。

新しいことを知ると、頭にパッと電球が灯る

人との関わりによる学びを大事にしている石川さんだが、本から得られる知識もかけがえのないものだと思っている。

「読書の時間はできる限り増やしたいと思っています。『えっ、これってそうだったの?』と、本から知ることはたくさんあります。若い頃は面倒だと思っていた勉強も、この年になると楽しくなるから不思議ですね」

新しい知識を取り入れ、自分がバージョンアップしていく感覚は純粋な喜びだ。

「漫画で言うと頭にパッと電球が灯るあの感じ。パッと輝いて全身の細胞が活性化する感じがたまらなく好きです」

若い頃の自分を思い出して、恥ずかしくて顔から火が出そうになることもあると言う。たとえば、1977年に誕生した日本テレビの超人気番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」。この伝説的番組が誕生50周年を記念して復活することが先日、発表されて話題になった。石川さんは、高島忠夫さんと共に番組の総合司会を務めた、局を代表するアナウンサーだった。

「それを言われるのがすごく恥ずかしいです。『触れないで、その話には』と言いたいくらい。20代から30代にかけて、知ったかぶりをしてしゃべっていた私。もっと早く自分の無知さに気づけばよかった、と今になって悔やんでいます」

学んだことはアウトプットも大事

今でも年に数回、ステージに立って司会の仕事をしている石川さん。そこで感じるのが、最近、余裕をもってお客様に話しかけられるようになったこと。

「以前は大過なく終わらせることに心を砕いていましたが、今は、お客様が喜んでいるかどうかが一番気になります。私の言葉に、うんうんと快くうなずきながら次のパフォーマンスを待ってくださっているのを見ると、手ごたえを感じます」

過去は必ずしも「お客様ファースト」ではなかったと振り返る。

「もちろん『お客様のために』と口では言っていましたが、終わったときに『石川さんに頼んでよかった』と評価されることのほうが大事だったと思います。今やっと、十分に間を取って、当たり前の話題を普通の言葉で説得力を持って話せるようになり、お客様との交歓を楽しめるようになりました」

その変化の理由は?

「昨年5月までコーラスグループ『フォレスタ』のコンサートの司会を16年間務めました。ライブは全国で行うので、ステージに立つ前に開催地のことをいろいろと調べるのですが、土地にはそれぞれ深い歴史があります。知らないことだらけで、にわか勉強では追いつかないほどでした」

「今まで、こんなことも知らずに生きてきたんだ……」と衝撃を受けることもしばしばだったと言う。

「現役時代のあわただしさから解放されてからは、じっくり勉強する時間がとれるようになりました。自分の中に堆積した知識や気づきがいつの間にか血肉となり、自信と余裕が生まれたのかもしれませんね」

学ぶことで心の世界は豊かに広がっていく。でも、それを自分の中だけにとどめておくのではなく誰かと共有することで、喜びは何倍にもなる。インプットしたことはアウトプットすることでこそ、初めて輝きを増すのだ。

一番、大切にしたいのは「学び」。学ぶことに終着点はない

現在、身辺を整理しながら、自分に必要と思われるモノやことを見直している石川さん。そんな石川さんが今、人生で一番、大切にしたいと思うのは何だろう。

「それって、とても難しい質問で、答えがなかなか出てきませんでした。私には、もう家族がいないから、家族を大切に思うということはないですし……。でも、今、いろいろと話している中で初めてわかりました。私が一番、大切に思っていることは『学ぶこと』なんだって。「知る喜び」や「学ぶ楽しさ」は私にとって、とても大切なことです」

若い頃に読んだ小説『徳川家康』の中で、著者の山岡荘八による、石川さんの心に今も残る言葉があるという。

「家康の言葉として『年を取るということは肉体や体力は衰えても、精神は向上するということ』という意味のことが書かれています。いい年の取り方をするには、衰えるものと向上していくものとのバランスが大事なんだとそのときに思いました。バランスが取れないと見苦しい年寄りになってしまう。であれば、うまくバランスの取れる自分でありたいと思いました」

石川さんは、老人ホームの先輩から、「80歳になったら目がおぼつかなくて、本を開いても2行も読めないのよ」と聞いた。

「年を重ねるとそういうこともあるのだな、と知りました。今、76歳。いつまで本が読めるかはわからないですが、これからもできるかぎり本を読んで、新しいことを知る喜びを味わっていきたいと思っています」

撮影/佐山裕子(主婦の友社) 取材・文/依田邦代

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