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人の「うんち」を混ぜたコンクリートが42%強くなった

  • 2026.9.11
人の「うんち」を混ぜたコンクリートが42%強くなった
人の「うんち」を混ぜたコンクリートが42%強くなった / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

朝、トイレのレバーを回す。流れていった先のことを考える人は、まずいない。

建物の土台になるコンクリート。その材料のセメントを作るときに、大量の二酸化炭素が出ます。石灰石を熱して加工する工程は、世界でも有数の排出源。

セメントの一部を廃棄物の炭に置き換える試みは、木くずやもみ殻で先にありました。

インドのマニパル大学ジャイプール校の研究チームは、し尿の処理施設に集まる汚泥を炭にしてセメントの一部と置き換えると、コンクリートが強くなったと発表しました。

実験室の試験体で、セメントの10%をこの炭に置き換え、91日かけて固めた配合です。

曲げ強度(曲げる力への強さ)は通常より42%、圧縮強度(押しつぶす力への強さ)は21%高くなりました。

実際の環境で同じ強さが出るかは、これから確かめる段階です。

炭は、多いほどよいのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年9月5日に『Scientific Reports』にて発表されました

目次

  • 「5%と10%」が強く、15%は届かなかった
  • 「水がめ」になる空洞とシリカに、理由があるとみる

「5%と10%」が強く、15%は届かなかった

「5%と10%」が強く、15%は届かなかった
「5%と10%」が強く、15%は届かなかった / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

レシピは、分量を間違えると台無しになる。

多いほどよい、ではありませんでした。

研究チームが試したのは、セメントの5%、10%、15%を炭に置き換えた3つの配合。

炭の元は、インドのワランガルにある処理施設のし尿汚泥。乾かして、酸素の少ない状態で熱する。それを挽いてふるいにかけ、細かい粉にする。

測ったのは、縮み方、押しつぶす力と曲げる力への強さ、水の吸いやすさ、内部のすき間。

全体でいちばん強い傾向を見せたのは、5%の配合でした。

ただし通常配合と比べた91日後の伸びは、10%のほうが大きくなりました。

どの配合も、固める日数が延びるほど強さを増しています。

5%は通常より水を吸いにくく、すき間も縮みも小さめでした。10%はおおむね通常並み。

強さと引き換えに何かが落ちる様子は、調べた範囲では見えていません。

15%まで増やすと、固めるうちに強くなることは同じでも、全体の強さは5%と10%に届きませんでした。

では、なぜ強くなると研究チームは考えているのでしょうか。

「水がめ」になる空洞とシリカに、理由があるとみる

「水がめ」になる空洞とシリカに、理由があるとみる
「水がめ」になる空洞とシリカに、理由があるとみる / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

研究チームは、いくつかの効き目が重なっているとみています。まずは空洞。

炭の粒は小さな穴だらけで、水を吸い込んでは固まる間に少しずつ放せる、という説明です。

放した水がセメントを固く強くする化学反応に回り、粒が内側の小さな水がめとして働く、というのが研究チームの見立てです。

もうひとつはシリカ。

炭に多く含まれ、セメントが固まるときにできる化合物と反応して、強さのもとになるケイ酸カルシウムを増やしうるとされます。

細かい粒がすき間を埋め、材料どうしの詰まりと結びつきを良くする効果も挙げられています。

顕微鏡でも、違いが見えた。

5%の配合は通常より緻密で、粒どうしが固く結びついた構造でした。

15%では逆に、穴やひび、うまく結びついていない部分が増えていました。

炭を増やすほど、コンクリートに含まれる重金属の濃度は下がったとも報告されています。

有害な物質が溶け出すのを抑えられる可能性があります。

残るのは、実際の環境。

凍結と融解の繰り返し、塩分、極端な温度にどこまで耐えるかは、これから調べる必要があると研究チームは述べています。

【これまでの研究】

廃棄物を蒸し焼きにして作る炭を、セメントの代わりに使う試みは以前からあります。

ただ、どれだけ入れ、どれだけ細かくするのがよいかは、まだはっきりしていないとされています(関連研究)。

オークランド大学の研究チームは以前に、家きんの敷料、もみ殻、製紙工場の汚泥から作った3種類の炭を、それぞれ全体積の1%までセメントと置き換えて調べています。

用意した試験体は、168体。

家きんの敷料の炭ともみ殻の炭を0.1%入れた配合で、曲げ強度が対照より20%高くなりました。

製紙工場の汚泥の炭を0.1%入れた配合は、ほかの炭入りより圧縮強度が対照に近い値でした。

ごく少量でも性質を良くできる可能性がある、というのがその結論です(関連研究)。

トイレで流したものが、建物を支える材料になる。

その筋道の確かめはこれからですが、処理施設に集まる汚泥の行き先を変える見方が、ひとつ増えました。

朝の一仕事にも、これで少し値打ちが出ました。

参考文献

Scientists Are Making Concrete With Human Poop – And It Gets 42% Stronger (ScienceAlert)
https://www.sciencealert.com/scientists-are-making-concrete-with-human-poop-and-it-gets-42-stronger

Novel biochar-concrete composites: Manufacturing, characterization and evaluation of the mechanical properties (Science of The Total Environment)
https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2017.10.319

Effect of Biochar Dosage and Fineness on the Mechanical Properties and Durability of Concrete (Materials)
https://doi.org/10.3390/ma16072809

元論文

Mechanical, durability, and microstructural performance of biochar-modified concrete using faecal sludge–derived biochar
https://doi.org/10.1038/s41598-026-66956-6

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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