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ラットはチョコを食べながら「おいしい」と鳴いていた

  • 2026.9.10
ラットはチョコを食べながら「おいしい」と鳴いていた、超音波の声をAIが聞き分けた
ラットはチョコを食べながら「おいしい」と鳴いていた、超音波の声をAIが聞き分けた / Credit: 村田航志(福井大学)/名古屋大学 研究成果情報

残業の合間に口へ入れた板チョコのひとかけらに、思わず「うまい」と声がこぼれる。そんな夜。

ラットの超音波の声は場面によって変わり、気持ちを映すと考えられてきました。

名古屋大学と福井大学の研究チームは、この声を手がかりに、食べている最中のラットがどんな声を出すのかを調べました。

これまで知られていたのは、ラットが食べ物を「期待している」ときの声。仲間と遊ぶときや、おいしいものを期待しているとき、ラットは50 kHz帯の高い超音波で鳴きます。

ところが、おいしいものを食べている最中の声を調べた例はほとんどない。

チョコを与える前と後の声を比べると、オスのラットが大好物のチョコを食べている最中にだけ現れる鳴き声が見つかりました。

高さは40 kHz帯とやや低く、鳴いている途中で上がってから下がる、逆U字型と呼べる形です。

研究チームはこれを、新しいタイプの声として報告しています。

では、この声は本当に「おいしさ」と結びついているのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年7月17日に『eNeuro』にて発表されました

目次

  • 録音と映像を重ね、ふつうのエサとも比べた
  • 快感に関わる働きを薬で妨げると、声も減った
出どころの画像
出どころの画像 / Credit: Medical Xpress

録音と映像を重ね、ふつうのエサとも比べた

録音と映像を重ね、ふつうのエサとも比べた
録音と映像を重ね、ふつうのエサとも比べた / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

食レポの善し悪しは、たいてい声に出る。

研究チームはオスのラットをペアで飼い、防音箱の中で声と行動を記録する。チョコを与える群では、チョコを入れたガラス瓶をケージに入れる前の10分と、入れた後の10分を記録しました。

ペアで飼ったのは、ラットが仲間といるときのほうがよく鳴くからです。

求愛や発情周期の影響を避けるため、使ったのはオスだけ。

録音と映像の時刻を合わせておき、どの声のときにラットが何をしていたかを、後から照らし合わせられるようにしました。

学習用のデータでは、チョコを与える録音に先立って3日間、毎日4粒ほどのチョコを飼育ケージに入れておきました。見慣れない食べ物を警戒して食べない、ということを防ぐため。

分類に使ったのは、機械学習。

声の記録(スペクトログラム)の特徴をもとに、待っている間の声と食べている最中の声とを、AIが高い精度で聞き分けています。

見つかった逆U字型の声は、チョコを食べている行動と時間的に強く対応していました。

ふつうのエサを食べるときと比べると、平らな40 kHzの声は同じくらい出ましたが、逆U字型の声はチョコのときにはっきり多くなりました。

分類が単に時間の経過を拾っただけではないかを確かめるため、別のラットの記録と、チョコを与えない群でも同じ分類を試しています。

快感に関わる働きを薬で妨げると、声も減った

快感に関わる働きを薬で妨げると、声も減った
快感に関わる働きを薬で妨げると、声も減った / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

おいしさを消す薬があったら、と思う人はまずいない。

声が快さと関係するのかを確かめるために使ったのは、快さに関わるオピオイドの働きを妨げる薬、ナロキソン。

研究チームはこれをラットに投与した。すると、チョコを食べている最中の逆U字型の声が減りました。

かむ音そのものであれば、快感に関わる働きを妨げても声は減らないはずです。

研究チームは、この声が単なる咀嚼の音ではなく、おいしいものを食べているときの体の内側の状態を映している可能性があるとみています。

【これまでの研究】

ノースウェスタン大学の研究チームは以前に、交尾、けんか、そして仲間や別の種とのじゃれ合い(くすぐりと呼ばれる遊び)の場面でラットの声を録音し、行動と突き合わせています。

相手に近づいて関わろうとする行動と結びついたのは、音の高さが変わる50 kHzの声(トリルと呼ばれる声など)で、その出会いの報酬としての価値とも相関していました。

平らな50 kHzの声にはそうした関連が見られず、22 kHzの声は避けたり引いたりする行動と結びついていました。

再生した声を聞かせる実験でも、ラットは50 kHzのトリルの再生を自分から求め、22 kHzの声の再生は避けたと報告しています(関連研究)。

ただし今回の実験はオスのペアだけで行われ、どちらの個体が声を出したかを分けるのは今後の課題です。動物の「おいしい」は、外からはかるのが難しい。

研究チームは、この声を手がかりにすれば、食の満足感や正の感情を調べる指標になりうるとしています。

今夜あなたが「うまい」ともらす声も、誰かにとっては40 kHzかもしれません。

参考文献

ラットはチョコを食べながら「おいしい」と鳴いていた ― 超音波の声からAIが聞き取った食の満足感 ―(名古屋大学 研究成果)
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2026/09/-ai-9.html

Ultrasonic vocalizations of rats during mating, play, and aggression (Journal of Comparative Psychology, 2008)
https://doi.org/10.1037/a0012889

元論文

A Subtype of Ultrasonic Vocalizations during Palatable Food Consumption in Rats Identified by Machine Learning-Assisted Classification
https://doi.org/10.1523/eneuro.0356-25.2026

ライター

天道銀河: 科学、歴史、心理、宇宙、生き物、テクノロジーなど、気になるものにはジャンルを問わず首を突っ込む雑食系ライターです。ひとつの分野を深く極めるというより、さまざまな知識を広く集め、意外なつながりを見つけるのが好きです。専門家ほど深くはなくても、好奇心の広さなら負けません。「こんな世界もあるのか」と思えるような、面白くてわかりやすい話題を届けていきます。

編集者

ナゾロジー 編集部

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