1. トップ
  2. エンタメ
  3. 【齋藤飛鳥が語る】伊坂幸太郎『マイクロスパイ・アンサンブル』の魅力。彼女を魅了した不思議な世界観とは?

【齋藤飛鳥が語る】伊坂幸太郎『マイクロスパイ・アンサンブル』の魅力。彼女を魅了した不思議な世界観とは?

  • 2026.9.8

読書をこよなく愛する齋藤飛鳥ちゃんがオススメの本を1冊ピックアップし、その本の世界観をファッションやヘアメイクなどときめく感性で表現する連載企画。今回もこだわりたっぷりの演出で、作品が映し出す世界観へと誘います。

今月の作品:『マイクロスパイ・アンサンブル』伊坂幸太郎 著

似ているようでどこか異なるふたつの物語が交錯する不思議な世界

ワンピース ¥327,800、シューズ ¥155,100(共にロエベ/ロエベ ジャパン クライアントサービス)

元いじめられっ子のスパイ達が住むあちらの世界と、失恋した社会人が住むこちらの世界―――。互いが互いの世界に影響を与え、偶然がいくつも重なったとき二つの世界を行き来できる扉が現れ交錯する、それはまるで現代版おとぎ話のよう。何層にもレイヤードしたかのような奥行きのある表情のワンピースで不思議な魅力を引き立たせて。


強い光の指す方向になにか……? いま見えていることだけが世界の全てではないのかもしれない

シャツ ¥275,000、スカート ¥530,200、シューズ ¥435,600※参考価格(全てアライア/リシュモン ジャパン合同会社 アライア)、バングル ¥238,700(シャルロット シェネ/シャルロット シェネ 青山店)

前後の印象に差をつけるスタイリングでギャップを。あらゆる物差しがあり、いま目の前で見ているモノを自分の解釈だけで考えるのではなく、もっと広い視野で物事を様々な角度から捉えることが大切。そんな鮮やかな伏線回収によって、心が洗われる気持ちさえも生まれる。


誰かの些細な行動が他の誰かの助けに、そんな想いを詩にのせて

ボウタイつきシャツワンピース ¥401,500(ヴァレンティノ/ヴァレンティノ インフォメーションデスク)

福島県の猪苗代町で開催される「オハラ☆ブレイク」という音楽とアートのイベントで配布される小冊子として執筆されたのが本作品の出発点。作品の中で歌われるプレイリストは、歌詞のポジティブさやエモーショナルなムードが重なり、彼らの曲を必要としている誰かに届くきっかけに。


奇跡の繋がりを通じて分かる見えない優しさに満たされる

ベルトつきブラウス ¥506,000、スカート ¥363,000、タイツ ¥93,500 ※参考価格(全てヴァレンティ)、リボンモチーフつきパールネックレス ¥238,700、6連パールネックレス ¥781,000 ※参考色、シューズ ¥181,500(全てヴァレンティノ ガラヴァーニ/全てヴァレンティノ インフォメーションデスク)

読んでいてちょっぴり心が沁みるような“優しさ”“幸せ”を感じるこの作品。ここ最近の連載では、少しヘビーな内容の作品を取り上げることも多かったので……(笑)、ぜひオススメしたいと思って選びました。

この作品は、絡み合うふたつの物語が同時に進んでいくのですが、スパイの話は一見壮大なスケールの内容に思えつつも、身近に感じられるような人間み溢れる描写が盛り込まれていたり。もう一方の物語では失恋したばかりの社会人一年生・松嶋くんが最初は頼りないけどその成長していく様子に愛くるしさがあったり。そんな、全く異なる人生のふたりが交わっていくような伏線回収の心地よさがなんとも素晴らしく爽快感があります。別々の世界に見えるけど実は繋がっていて、自分のしたことが何気なく誰かの救いになっていたり、その巡りが大げさではなくて本当にあるかも……と思えるようなシーンに魅了されました。

その優しい世界観を今回クリエイティブで表現。すごく楽しそうに笑うわけではないけれど、ほんの少しポジティブな空気感を纏えるように佇まいや表情、仕草を工夫して撮影。光の感じもいいニュアンスで重なり、まるで異国へと繋がる扉の出現を思わせるような写真の雰囲気に仕上がりました。

この作品は登場人物もみんな魅力的。私は特に松嶋くんの上司の「門倉課長」がお気に入り。周りにも“そんなに謝らなくてもいいじゃん”と思う人っているけれど、門倉課長の秘めたるかっこよさとそれを自覚していないところが素敵な人だなって。

読後は、自分がしている行動がなにかに繋がっているのかもしれない、と思えるような温かく新しい視点をくれる感覚があります。もちろんすぐじゃないかもしれないし、時間がかかるかもしれないけど、なにかどこかで繋がっているし、自分自身の行動が誰かやなにかの役に立っているかもしれないと思うと日々が少し輝くように感じます。逆に自分がなにか救われるようなことがあったらどこかの誰かが何かをしてくれたことが巡り巡って自分のところにやってきたのかな、と前向きな気持ちになります。不思議と、なんだか自分がちょっといい人になったような温かさを感じる素敵な1冊です。


\今月の1冊!/『マイクロスパイ・アンサンブル』伊坂幸太郎 著/幻冬舎

失恋したばかりの社会人一年生の日常と、元いじめられっこのスパイ一年生のスパイ活動が交錯する、優しさと驚きに満ちた現代版おとぎ話。猪苗代湖で2015年から開催されている音楽フェス「オハラ☆ブレイク」のために、伊坂幸太郎さんが毎年書き続けた短編「猪苗代湖の話」が文庫化。


model : ASUKA SAITO

photo : TAKEMI YABUKI[W]

styling : KAORU WATANABE

hair & make-up : CHIE FUJIMOTO

edit & text : MAIKO WATANABE

web edit : KIMIE WACHI

※記事の内容はsweet2026年8月号のものになります。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ