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一度入ったら脱出不可能!?『CUBE』に『8番出口』、話題の『バックルームズ』まで異質な空間ホラーたち

  • 2026.9.6

全米&全世界興収ランキング1位を獲得した異色ホラー『バックルームズ』(公開中)。インターネット発の都市伝説をベースにした本作は、地下に広がる「あるはずのない空間」に迷い込んだ男の物語。弱冠21歳のケイン・パーソンズ監督が、無人のオフィス風の空間がどこまでも続いていく違和感や不気味さで不安をかき立てる。キャラクター同様に、ホラー映画に欠かせない重要な要素がこのような空間。本作と同じく、現実世界と地続きの不気味な空間の怖さを描いたホラー映画を紹介したい。

【写真を見る】謎の立方体に閉じ込められた男女6人が脱出を目指す『CUBE』

全米&全世界興収ランキング1位を獲得した異色ホラー『バックルームズ』 [c] 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.
全米&全世界興収ランキング1位を獲得した異色ホラー『バックルームズ』 [c] 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

殺人トラップが仕掛けられた立方体空間『CUBE』(97)

突如として、謎の立方体に閉じ込められた男女6人がそこからの脱出を目指す大ヒットシリーズ第1弾。立方体の前後左右、そして上下の面にはハッチがあり、そこから移動することができるが、その先にはまた別の立方体空間が広がっている。さらに、部屋の中にはランダムでトラップが仕掛けられており、火炎や酸を発射する装置、体を一瞬で切り刻むワイヤースライサーなど、そのどれもが死を伴う危険極まりないものばかり。また、この立方体群はより大きな立方体空間の中に設置されたものであり、それぞれが定期的に移動を繰り返すことから全体の構造も一定ではないという厄介な設計になっている。

【写真を見る】謎の立方体に閉じ込められた男女6人が脱出を目指す『CUBE』 [c]Everett Collection/AFLO
【写真を見る】謎の立方体に閉じ込められた男女6人が脱出を目指す『CUBE』 [c]Everett Collection/AFLO

立方体はなぜ作られたのか?6人が閉じ込められた理由は?その理由や背景を語らない不条理な世界観が話題に。一方で、各部屋をつなぐハッチには3桁の数字が刻まれており、その数字を読み解くことが脱出のヒントにつながる(?)ロジカルな要素もあり、ほかのソリッドシチュエーション系作品とは一線を画している。本作のヒットにより、重力や時間を歪めるなど難易度を増した『CUBE2』(02)、立方体の管理者と被験者の2つの視点で展開される『CUBE ZERO』(04)のほか、菅田将暉主演の日本版リメイク『CUBE 一度入ったら、最後』(21)も製作された。

立方体内には様々な殺人トラップが仕掛けられている(『CUBE』) [c]Everett Collection/AFLO
立方体内には様々な殺人トラップが仕掛けられている(『CUBE』) [c]Everett Collection/AFLO

灼熱地獄に雪山、天地逆さまの空間が舞台の脱出ゲーム『エスケープ・ルーム』(19)

高額な賞金に誘われて、ある企業が主宰する命懸けの脱出ゲームに参加した男女6人を描くサバイバルスリラー。謎の招待状を受け取り、オフィスビルに集った年代も素性も異なるゲーム参加者が強制的に知力と体力の限界を試される。ゲームのステージは灼熱地獄と化す待合室に始まり、リアルに再現された極寒の雪山、落下したら死ぬ床と天地が逆のビリヤードルーム、猛毒が充満する病室などの疑似空間。6人が室内に隠されたヒントを探り当てながら、ステージを進んでいくスリリングな展開に加え、ステージとリンクしたそれぞれの過去を絡めた心理戦も見どころ。ゲーム生存者が仕掛け人であるミノス社に復讐する続編『エスケープ・ルーム2:決勝戦』(21)も製作された。

ある企業が主宰する命懸けの脱出ゲームに参加した男女6人を描く『エスケープ・ルーム』 [c]Everett Collection/AFLO
ある企業が主宰する命懸けの脱出ゲームに参加した男女6人を描く『エスケープ・ルーム』 [c]Everett Collection/AFLO

一見快適そうな人工的ディストピアから抜け出せない『ビバリウム』(19)

異様な街に住むことを強いられたカップルをジェシー・アイゼンバーグとイモージェン・プーツが演じたSFスリラー。不動産業者に紹介され巨大な住宅街ヨンダーを見学したトム(アイゼンバーグ)とジェマ(プーツ)は、迷路のような街から出られなくなってしまう。街は同じ形のパステルカラーの家が延々と続き、どんなに車で走ってもなぜか自分の家に舞い戻ってしまう謎仕様。ライフラインは整い、なぜか食事も届くため仕方なく暮らし始めた彼らのもとに、ある日、赤ん坊の入った段ボール箱が届く。そこには「子どもを育てたら解放される」と書かれていて…。

パステルカラーの家が延々と続く住宅街ヨンダーから抜け出せない『ビバリウム』 [c]Everett Collection/AFLO
パステルカラーの家が延々と続く住宅街ヨンダーから抜け出せない『ビバリウム』 [c]Everett Collection/AFLO

ビバリウムとは飼育室のこと。2人はやむなく子どもを育て始めるが、しだいに精神を病んでいく。気候は穏かで過ごしやすく空には綿あめのような雲が浮かんでいるヨンダーは、見た目だけが快適な人工的ディストピアだ。仕組みやルールは異なるが、『トゥルーマン・ショー』(98)や『ドント・ウォーリー・ダーリン』(22)などでも、人工的な世界に違和感を抱く人々の姿が描かれている。

ヨンダーで暮らすことになったトムとジェマが赤ん坊を育て始める(『ビバリウム』) [c]Everett Collection/AFLO
ヨンダーで暮らすことになったトムとジェマが赤ん坊を育て始める(『ビバリウム』) [c]Everett Collection/AFLO

人間の尊厳や倫理観を問う階層空間『プラットフォーム』(19)

2人1組の牢獄のような部屋が無数に階層になった塔で暮らす人たちの物語。天井と床の中央に穴が開いた部屋で目覚めた男は、同室の老人からここは塔のような建物で、食事は上層階から台座に乗って穴を降りてくると知らされる。ただし、上階の住人たちから順に食べていくため、下層階に着くころには食べ残しばかりでそこにいる人は常に飢餓状態。月に一度の部屋替えで運がよければ上層階に行けるが、男は体を縛り付けられた状態で目覚める…。

無数の部屋が階層になった塔で暮らす人たちの倫理観を揺さぶるスリラー『プラットフォーム』 [c]Everett Collection/AFLO
無数の部屋が階層になった塔で暮らす人たちの倫理観を揺さぶるスリラー『プラットフォーム』 [c]Everett Collection/AFLO

部屋はいくつかの小窓とベッドがあるだけで、穴から見える上下の住人たちとの交流は禁止されている。唯一の楽しみは食事だけで、ありつけないと自殺をしたり、時に同室の相手を食べるしかない過酷な世界。そこで一人の少女を救おうとする男を通し、人間の尊厳や倫理とはなにかを問うダークなファンタジーになっている。

下層階の住人は常に飢えに苦しむことに(『プラットフォーム』) [c]Everett Collection/AFLO
下層階の住人は常に飢えに苦しむことに(『プラットフォーム』) [c]Everett Collection/AFLO

幼い姉弟が怪現象に見舞われる『SKINAMARINK/スキナマリンク』(22)

子どもの悪夢をそのまま映画にしたような幻想的なゴーストホラー。深夜、目を覚ました幼い姉弟は父親の姿が見当たらないことに気が付いた。家中を探し回っていた2人は、家そのものに異変が起きていることを知る。勝手に転がるオモチャ、クローゼットが開いたり不穏な音や声が聞こえてくるなど定番のポルターガイスト現象に加え、部屋の扉やトイレの便器が消失したり、子どもの肉体が変容するなど理解を超えた謎現象が本作の魅力。暗くて解像感が低い、フィルム傷も見られるスーパー8を思わせる映像や音の加工もおもしろい。ジャンプスケアではなく、暗闇やわずかな照明に照らされた壁と天井のテクスチャなど、うす暗い家の怖さで圧倒する、実験的な異色作といえる。

子どもの悪夢をそのまま映画にしたような幻想的ゴーストホラー『SKINAMARINK/スキナマリンク』 [c]Everett Collection/AFLO
子どもの悪夢をそのまま映画にしたような幻想的ゴーストホラー『SKINAMARINK/スキナマリンク』 [c]Everett Collection/AFLO

無限にループする地下鉄通路からの脱出を目指す『8番出口』(25)

無限にループする地下鉄通路に迷い込んだ男を描いた、ゲームクリエイターのKOTAKE CREATE(コタケクリエイト)による同名人気ゲームの映画化。派遣の仕事に向かうため、地下鉄の通路を移動していた男のもとに、別れ話が持ち上がっていた恋人から電話がかかり、妊娠を告げられる。男が返事に戸惑っているうちに電話がつながらなくなり、出口にたどり着けず同じ通路をループしていることに気がつく。

ループする地下鉄の通路に迷い込んだ男が脱出を目指す『8番出口』 DVD <通常版> 発売中 価格:4,400円 発売元:STORY.inc 販売元:東宝 [c]2025 映画「8番出口」製作委員会
ループする地下鉄の通路に迷い込んだ男が脱出を目指す『8番出口』 DVD <通常版> 発売中 価格:4,400円 発売元:STORY.inc 販売元:東宝 [c]2025 映画「8番出口」製作委員会

通路の壁には「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から外に出ること」という案内版が。困惑しながらもルールに従うことにした男は、注意深く異変を察知しながら徐々に8番出口へと近づいていく。しかし、脱出までもう少しというところで0番出口へと戻ることになり、精神的にも限界を迎えてしまう。一見なんの変哲もない地下通路だが、天井から血が流れ出したり無数の蛍光灯が並んでいたり、通路の奥から大量の水が押し寄せたりと次々に異変が発生。数々の異変は男が抱える罪悪感や不安にリンクしており、視覚や聴覚に訴える体感的な構成も魅力的だ。

見慣れた景色なのにどこか不気味なリミナルスペース『バックルームズ』

海外のインターネット上で広まった都市伝説や怪談などの怖い話、いわゆるクリーピーパスタを題材にした異色スリラー。公私共にストレスを抱える家具店店主のクラーク(キウェテル・イジョフォー)は、店の地下室で無人の部屋が迷路のように広がる異空間への入口を発見する。憑りつかれたように調査を始めた彼は、その全容をビデオカメラで撮影するため従業員を連れて奥へ奥へと進んでいく。一方、連絡が途絶えたクラークを心配したセラピストのメアリー(レナーテ・レインスヴェ)もまた、彼を追って異空間に足を踏み入れる。

バックルームズを発見した家具店店主のクラーク(『バックルームズ』) [c] 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.
バックルームズを発見した家具店店主のクラーク(『バックルームズ』) [c] 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

異空間はパーテーションや廊下で仕切られたオフィス風のスペースで、どこまで行っても似た光景が続いている。少し黄色みがかった壁やどんよりとした蛍光灯の光、不自然な場所に立つ柱など、元ネタ「バックルームズ」が盛り上がるきっかけになった不気味なオフィスの画像「Level 0:“The Lobby”」のイメージがそのまま再現されている。『シャイニング』(80)のオーバー・ルック・ホテルに代表される、リミナルスペース(見慣れた日常空間から人影が消えた不気味な空間)を前面に出した不条理な恐怖が不安感を増長。時折挿入されるビデオカメラを通したPOV映像が没入感を醸しだす、映画館で体感すべき作品だ。

クラークを心配し、バックルームズに足を踏み入れるセラピストのメアリー(『バックルームズ』) [c] 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.
クラークを心配し、バックルームズに足を踏み入れるセラピストのメアリー(『バックルームズ』) [c] 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

ここで紹介した作品以外にも、記憶や街の構造が毎晩書き換えられる街を舞台にした『ダークシティ』(98)、閉鎖された精神病院に立ち入った作業員の体験を描いた『セッション9』(01)、非常階段や郊外の一本道で35年にわたって無限ループが繰り返される『パラドクス』(14)、訪れると急速に老いていくビーチの物語『オールド』(21)など空間を主役にしたホラー映画は数多い。一度でも入ったら出られない、不穏な空間を味わってみてはいかがだろうか?

文/神武団四郎

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