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「もうピアノ、弾かへんの?」隣人に下手くそと言われたと思っていた私。数年後に知った隣人の本当の気持ち

  • 2026.9.1
「もうピアノ、弾かへんの?」隣人に下手くそと言われたと思っていた私。数年後に知った隣人の本当の気持ち

同じところでつかえては、最初から弾き直していました

まだ実家で暮らしていたころの話です。私は毎日のように、居間にあるピアノを弾いていました。

上手だったわけではありません。練習していた曲にはどうしてもうまく弾けない部分があり、そこへ来ると指が止まります。悔しくなって最初からやり直しても、また同じ場所でつかえてしまいました。

それでも、ピアノを弾くこと自体は好きでした。

夏になると、暑さのため窓を開けたまま練習することもありました。今思えば、音はかなり外へ響いていたはずです。当時の私は、自分が弾くことに夢中で、そこまで考えていませんでした。

ある日の午後、いつもの場所で何度目かにつかえたときです。

塀の向こうから、隣の家に住む年配の女性の声が聞こえてきました。

「またそこで止まってるやん。そんな急いで弾かんと、もう少しゆっくり弾き」

普段から、思ったことを短くはっきり言う方でした。

けれど、そのころの私は「下手だと言われた」としか受け取れませんでした。恥ずかしくなり、その日はすぐにピアノの蓋を閉じました。

翌日からは窓を閉めて弾くようになりました。それでも、また声が聞こえるような気がして落ち着きません。

練習する時間は少しずつ減り、いつの間にか、ほとんどピアノに触れなくなっていました。

何年後かに聞いた、思いがけない言葉

その後、私は実家を出しました。

何年か経って実家へ帰ったある日、庭にいると、塀の向こうから久しぶりに声をかけられました。あの隣人でした。

「もうピアノ、弾かへんの?」

突然聞かれて、私は少し驚きました。

「最近は全然です」

そう答えると、その方は懐かしそうに笑いました。

「昔、よう弾いてたやろ。台所におったら毎日聞こえてきたんよ」

そして少し間を置いて、続けました。

「いつも同じとこで止まって、また最初から弾いてたな。もうちょっとで弾けそうやったのに、急に聞こえんようになったから」

その言葉を聞いた瞬間、昔言われた「もう少しゆっくり弾き」という一言を思い出しました。

あの人は、ただ騒音として聞いていたのではありませんでした。私がどこでつかえて、何度やり直していたのかまで覚えていたのです。

「あのとき、怒られたと思ってました」

私がそう言うと、その方は少し驚いた顔をしました。

「あら、そうやったん。言い方きつかったなあ」

それ以上、大げさな謝罪があったわけではありません。ただ、その一言で、何年も引っかかっていたものが少しほどけた気がしました。

その日の午後、私は久しぶりにピアノの蓋を開けました。

指は思うように動かず、やはり昔と同じ場所で止まりました。

それでも今度は、そこでやめずにもう一度弾き直しました。

窓は閉めたままでしたが、塀の向こうにも少しくらい届いていたらいいなと思いました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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