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杉山紀彰・梅原裕一郎、TVアニメ最終クール『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』雨竜とハッシュヴァルトの最終決戦を語る “似た者同士”の二人に宿る自己犠牲の美学

  • 2026.8.30
(左から)杉山紀彰、梅原裕一郎 クランクイン! 写真:吉野庫之介 width=
(左から)杉山紀彰、梅原裕一郎 クランクイン! 写真:吉野庫之介

TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』で、石田雨竜とユーグラム・ハッシュヴァルトの最終決戦がついに決着を迎えた。敵として対峙した二人の戦いは、単なる“正義対悪”ではなく、それぞれが大切なもののために信じた道を貫こうとする、静かな覚悟のぶつかり合いでもあった。今回、石田雨竜役の杉山紀彰と、ユーグラム・ハッシュヴァルト役の梅原裕一郎にインタビューを実施。二人で向き合った最終決戦の収録、互いの芝居から感じた雨竜の“青さ”とハッシュヴァルトの“強者感”、そして敵味方を超えて浮かび上がる“自己犠牲の美学”について語ってもらった。

【写真】杉山紀彰(石田雨竜役)・梅原裕一郎(ユーグラム・ハッシュヴァルト役)撮り下ろしが満載!

■“静かな覚悟”で臨んだ雨竜とハッシュヴァルトの最終決戦

――二人の最終決戦の収録に臨むにあたって、特に意識されていたことを教えてください。

杉山:僕自身は、特別に緊張するような感覚はあまりありませんでした。というのも、雨竜の心境としては、もう“後がない”状態だったと思うんです。戦うしかない。やるべきことをやるしかない。星十字騎士団(シュテルンリッター)側に行った時点で、すでに覚悟は決まっていたのだと思います。

だから最終決戦だからといって、「戦ってやる」「勝ってやる」と気持ちを高ぶらせるというよりは、淡々と、自分が今やらなければならないことに向き合っている。そんな心持ちだったのではないかなと。そこにあったのは“静かな意気込み”というか、“静かな平常心”だったんだろうなと捉えて、収録に臨みました。

梅原:ハッシュヴァルトも雨竜と同じく、最後の戦いだからといって、強く意気込んでいたかというと、きっとそうではなかったと思います。彼には、可能性としての未来が視えていた。それでもなお、最後まで陛下のために働く。その姿勢は、ハッシュヴァルトの中で揺らがなかったのだと思います。だからこそ、ある種の達観のようなものもあったのかなと感じています。

アフレコに臨む僕自身としては、杉山さんと二人で収録させていただけたことが、ものすごくありがたかったです。演出面でもかなり丁寧に時間をかけて収録していったのですが、それがすごく心地いいアフレコだったなという感覚があります。雨竜とハッシュヴァルトの最後のやり取りを、杉山さんと向き合いながら作れたことは、とても大きかったです。

――最終決戦の収録では、相手の芝居を受けて生まれる感情や駆け引きも大きかったのではないかと思います。杉山さんから見た梅原さんのハッシュヴァルト、梅原さんから見た杉山さんの雨竜について、それぞれ印象的だった部分を教えてください。

杉山:やっぱり、梅ちゃん(梅原さん)が演じるハッシュヴァルトの存在感ですよね。有能さ、クールさ、ストイックさ。そして、その余裕を裏付ける“強者感”のようなものが、お芝居からすごく伝わってきました。

雨竜としては、そんな相手にどう向き合うのか。ハッシュヴァルト戦に限らず、雨竜はこれまでも、自分の持っている能力や戦い方の中で、どうすれば相手の弱点を見つけられるのか、どうすれば勝てるのかを考えてきたキャラクターだと思うんです。会話をしながら、戦いながら、少しずつ突破口を探っていく。

その中で印象的だったのが、ハッシュヴァルトの反応の変化でした。最初は平常心で淡々と語っている。でも、会話が進むにつれて、少しずつ感情の動きが見えてくる。映像でもそこは丁寧に描かれていますし、梅ちゃんもクールさの中にある感情の機微を、すごく繊細に出してくれていたんです。

だからこちらとしても、お芝居を返すときに「ここなんだな」「ここを突けば揺さぶれるのかもしれない」と感じられる瞬間がありました。雨竜として、少しニヤリとするような余裕を見せたり、その余裕が本当のものかどうかはわからないけれど、そう見せることでさらに相手を揺さぶったり。そうした駆け引きのお芝居ができたことが、すごく楽しかったですし、嬉しかったですね。

梅原:雨竜は、もちろん頭が切れる人物ですし、冷静な部分も持っているキャラクターです。でも、その奥にはものすごく熱いものがあるんですよね。その熱さというのは、友人に対する思いだったり、こちらが口にするのを少し恥ずかしく感じてしまうくらいのまっすぐさだったりする。雨竜には、そういう純粋さが確かにあるんだなと感じていました。

でも、その“青さ”をお芝居で出すというのは、本当にすごいことなんですよ。僕自身、年齢を重ねるにつれて、意識しなくても自然に出ていた青さのようなものが、だんだんなくなってきている感覚があって。だからこそ、どうやって芝居の中でその青さを出そうかと、今まさにもがいている部分があります。

アニメーションでは若い役を演じる機会も多いので、その難しさをより感じているのですが、杉山さんはそれを本当に自然に表現されている。隣で杉山さんの雨竜を聞いていて、「これは自分もできるようにならないといけない」と思うくらい、刺激を受けました。

その青さやまっすぐさを、無理なく、でも確かに雨竜の中に存在するものとして表現されている。そのお芝居を間近で感じられたことは、自分にとっても大きな収録でした。

■雨竜とハッシュヴァルトは“似た者同士”だった 敵味方を超えて浮かび上がる自己犠牲の美学

――雨竜とハッシュヴァルトは、敵味方という単純な関係だけでは語れない距離感があると思います。お二人は、この二人の関係性をどのように捉えていましたか?

杉山:単純に“正義対悪”という戦いではないんですよね。どちらも、自分にとっての正義のために戦っている。そこがすごく大きいなと感じています。

梅原:そうですね。立場の違いがあって、結果的に二人は戦うことになった。でも、ハッシュヴァルトにとってのある種のウィークポイントと、雨竜が大切にしているものが重なってしまったような関係性でもあると思うんです。

そこが、物語として本当によくできているなと感じました。この二人が戦うことには、ちゃんと意味がある。戦いの結末だけを見ると、ハッシュヴァルトはああいう倒れ方をするわけですが、そのうえで最後に「友を助けにいくべきだ」と心から言えるようになったのは、きっと相手が雨竜だったからなんだと思います。雨竜と戦ったからこそ、ハッシュヴァルトの中でたどり着けたものがあったのではないかなと感じました。

杉山:もし、ユーハバッハを倒す側と守る側という最終的な利害がぶつかっていなかったら、雨竜とハッシュヴァルトは、かなり近い考え方を持つ二人だったのかもしれないですよね。

例えば同じチームにいたとしたら、物事の捉え方や、状況をどう分析してどう動くかという立案の仕方は、意外と近かったんじゃないかなと思います。だからこそ、この戦いでは“優先順位”の違いが強く浮かび上がっていたのかなと。

友という存在を、自分の中でどう扱うのか。守るべきものとして捉えるのか、それとも別の使命のために切り離すのか。そうした葛藤が、二人の戦いを通して、ものすごくフォーカスされて描かれていたように感じます。

――久保帯人先生の描くキャラクターは、敵味方を問わず、それぞれが美学や信念を持っているところも大きな魅力だと思います。お二人が演じる雨竜、ハッシュヴァルトには、それぞれどのような“美学”を感じていますか?

杉山:雨竜は、最初のTVシリーズの頃から、祖父であり師匠だった石田宗弦を、死神によって失ったという思いを抱えていました。だから彼の物語は、死神への憎しみから始まっているところがあるんですよね。

当時の雨竜は、自分が滅却師(クインシー)の最後の生き残りだと思っていた。その中で、復讐心に近いものも抱えていたと思います。でも、ユーハバッハという存在が現れて、自分が知らなかった真実に触れていく。祖父がどういう経緯で命を落としたのかを知るにつれて、本当に倒さなければならない相手は死神ではないのではないか、と気づいていくんです。

そこには、自分が信じていたものが真実ではなかったのかもしれないという葛藤もあったと思います。それでも、雨竜の根底にはやはり、幼い頃から慕っていた祖父への思いがある。そこが彼の信念を支えている大きな部分なのかなと感じています。

そう考えると、雨竜とハッシュヴァルトはすごく似ているんですよね。ハッシュヴァルトにとっては、幼い頃に手を差し伸べてくれたユーハバッハが大きな存在で、彼の力になりたい、救いたいという思いがある。一方で雨竜には、幼い頃から慕っていた祖父の無念を晴らしたいという思いがある。

向いている方向や立場は違っても、根底にある価値観は近いのかもしれません。自分にとって大切な存在のために、信じた道を貫こうとする。言葉にするのは難しいですが、二人にはどこか“似た者同士”の美学がある気がします。

それは、ストイックな信念と言えるものなのかもしれません。感情だけで動くのではなく、自分の中で譲れないものを持ち、それを貫こうとする。その姿勢が、雨竜にもハッシュヴァルトにも共通しているのだと思います。

梅原:そうですね。ハッシュヴァルトにとって、陛下という存在は、自分の命すら捧げる覚悟を持てる相手なんだと思います。実際、最終的には自分の命を陛下に捧げることに、喜びすら感じているような人物でもありますし。

わかりやすく言うなら、武士道の精神に近いものがあるのかもしれません。自分自身よりも、自分を滅してでも守りたい陛下がいる。その在り方こそが、ハッシュヴァルトの美学なのかなと感じています。

彼は「全知全能(ジ・オールマイティ)」の代行によって、陛下がたどる未来を視ている。たとえそれが視えていたとしても、立場を変えない。最後まで、死ぬまで、陛下のために生きる。そのブレなさ、揺るがなさが、ハッシュヴァルトという人物の美学なのだと思います。

杉山:今のお話を聞いていてふと思ったのですが、雨竜もハッシュヴァルトも、どちらも自己犠牲的な美学を持っているのかもしれません。

雨竜は雨竜で、一人で向かえば命を落とす可能性がある。それでも、やらなければいけないことがあるから進んでいく。勝てる可能性もあるけれど、同時に自分が死ぬ可能性も受け入れているんですよね。ハッシュヴァルトも同じで、たとえ陛下が敗れる未来を視ていたとしても、それでも自分が陛下を守らなければならないという思いを貫く。

二人とも、自分の命の優先順位が一番ではないように感じるんです。大切なもののために、自分を差し出すことができる。それが良いか悪いかは別として、そういう“自己犠牲の美学”のようなものを、それぞれが信念として持っているのかなと思いました。

(取材・文・写真:吉野庫之介)

TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』は、テレ東系列ほかにて毎週土曜23時から放送中。

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