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彼女の服を採点し続けた俺、先に帰られて気づいた自分の「正しさ」

  • 2026.8.29
ハウコレ

先に帰る彼女を見送ったあと、送りかけた下書きを前にして、俺は自分の「正直さ」が誰のためのものだったのかを考え始めました。

彼女はいつからか、会った直後に俺の表情をうかがうようになっていました。その理由を、俺は考えようとはしませんでした。

言わないほうが不誠実だと思っていた

俺は昔から、思ったことを口にせずにいるのが苦手でした。学生時代、周りの誰も指摘してくれないまま、ずれた格好で人前に立って恥をかいたことがあります。あれから、気づいたことを伝えるのが相手への誠実さだと信じてきました。だから彼女の服にも、会うたびに感想を口にしていました。「その服、前のほうがよかったよ」。良かれと思っての一言に彼女が小さくうなずくのを見て、ちゃんと伝わっていると思い込んでいました。

眉が先に動いた日

その日、改札の向こうから歩いてきた彼女は、見たことのないワンピースを着ていました。似合うかどうかを先に判定してしまうのは、もう癖のようなものでした。「うーん、悪くないけど、この前の白のほうが似合ってたかな」。彼女は返事の代わりに、少し先の信号へ目をやりました。俺はその横顔の意味を、深く考えないままカフェへ向かいました。

「自分の正しさだよ」

席に着いてしばらくして、彼女は「あなたに会う日は、褒められる服を探すようになってた」と言いました。責められている理由がわからず、俺は「本音を言っただけだよ」と返し、「似合ってないのに言わないほうが不誠実でしょ」と続けました。彼女は伝票を手に取り、「あなたが見てるのは私じゃなくて、自分の正しさだよ」と言い残して、先に店を出て行きました。1人で残ったテーブルで、俺は思い返していました。待ち合わせのたびに俺の表情をうかがっていたことも、俺が色について口を出してから黄色のカーディガンを着なくなったことも、そこで初めてつながりました。俺は彼女の服を見るたび、似合うかどうかを勝手に判定していたのです。

そして...

その夜、送りかけていた「言い方は悪かったけど間違ってはない」の下書きを消しました。考えた末に送ったのは、謝罪のあとに「気づかせてくれてありがとう」と書いたメッセージです。返信はすぐには来ませんでした。後日会った彼女から、感想を聞いていないときは服を評価しないでほしいと言われ、俺はうなずきました。自分は正直だったのではなく、求められていない評価を押しつけていたのだと、今は分かります。感想を口にする前に、それを彼女が聞きたがっているかを先に考えるようになりました。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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