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【豊臣兄弟!】天下人を目指す秀吉(池松壮亮)を小一郎(仲野太賀)はどのような覚悟で支えていくのか?

  • 2026.8.28

【豊臣兄弟!】天下人を目指す秀吉(池松壮亮)を小一郎(仲野太賀)はどのような覚悟で支えていくのか?

2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」。今まであまりスポットライトの当たることのなかった豊臣秀長を主人公に、戦国時代がどう描かれるのか? ここでは、ストーリー展開が楽しみな本ドラマのレビューを隔週でお届けします。今回は、第31回「これで、お別れにございます」と第32回「賤ケ岳(しずがたけ)の決闘」です。

第31回「これで、お別れにございます」

天正10(1582)年、清須会議を経て、羽柴筑前守秀吉(ちくぜんのかみひでよし/池松壮亮)らは、名代を据えずに、亡き織田信長(小栗旬)の長男・織田信忠(のぶただ/小関裕太)の忘れ形見である三法師(さんぼうし/清水伊織)を、秀吉を含む家老衆が補佐するという体制を取った。しかし皆を出し抜く形の披露になったため、家老衆の間の不協和音も大きくなってくる。領国の配分についても、秀吉が織田家家中で最も大きな所領を持つに至り、山城の地に山崎城を築く。

そんな中、その取り決めを無視するように、信長の三男・織田信孝(のぶたか/結木滉星)が、安土城にいた三法師を岐阜城へ連れていったとの報せが入る。戦で焼け落ちた安土城の修繕が終わるまで三法師を保護するという言い分だったが、秀吉や羽柴小一郎長秀(こいちろうながひで/仲野太賀)らは、信孝がこのまま三法師を懐柔して、織田家の権力を掌握していく魂胆なのだろうと見ていた。

しかしここで無理やり奪い返せば、相手が「安土城が直るまで」ともっともらしい理由を掲げている限り、こちらが筋を曲げたとの責めを受けかねない。小一郎のその忠告により、まずは、安土城の普請(ふしん)を担っている丹羽長秀(ながひで/池田鉄洋)に修繕を急がせることになった。黒田官兵衛(かんべえ/倉悠貴)は、信孝の背後に誰かがいるのではないかと警戒してもいた。

第31回のタイトルは「これで、お別れにございます」。これは誰が誰に言っているのだろうと思いながら観始めると、途中答えは出てくるのだが、果たしてそれだけなのだろうか。信長亡きあと、これまで信長配下で表面的には平和に肩を並べていた諸将たちの攻防が露わになってくる。これまでの親しかった関係が崩れたり、敵対関係となって、袂を分かったりする場面も出てくる。秀吉が天下人と周囲にも認められるようになるまでに、いったいいくつの「別れ」があったのだろうかと、そんなことも思いながら第31回を観始めた。

第30回で、市(いち/宮﨑あおい)は柴田勝家(かついえ/山口馬木也)に「私を娶れ」と命じていたが、二人は夫婦になり、市は勝家の所領である越前の北庄(きたのしょう)城に移った。その市のもとに秀吉から書状が届く。信孝の行為が清須会議での取り決めに反するため、もしもそこに勝家が関わっているのであれば、市から手を引くように諫めてほしいと書かれていた。

秀吉は、「織田家のためだ」と言って市に勝家との結婚を進言したのだったが、市はそこに、信長に取って代わり天下を取ろうとしている秀吉の野心を感じていた。市が勝家との結婚を決めたのは、秀吉の進言を真に受けたからではなく、むしろその逆、秀吉が織田家を滅ぼそうとしていると読み、その秀吉を何とか止めなければいけないとの思いがあったからだった。勝家に「信長の妹である私を旗頭とし、逆臣を討つのです」と命じた市は、「あやつが兄上の代わりなどと」と吐き捨てると、市は文を破り捨てた。かつて秀吉・小一郎兄弟に癒やされていた市もまた、この乱世の中で、兄弟が「別れ」を告げざるを得ない相手の一人なのだった。

小一郎は坂本城に丹羽長秀を訪ね、安土城の普請を急がせようとしたが、秀吉らの昨今の増長に「おぬしらも同じ穴の狢ではないか」と反論する。また秀吉が諸将に書状を送っていることも非難し、「ともに三法師様をお支えすることなどできぬ」と追い返されてしまう。

また、ちょうど丹羽を訪ねてきた前田利家(としいえ/大東駿介)ともすれ違うが、冷たくあしらわれてしまう。利家は、「人のことをとやかく言う前に、己のふるまいを顧みることだな。明智を討ったからといって図に乗るでない。サルに伝えよ!」と敵対心を露わにするのだった。

丹羽長秀が言ったように諸将に書状を書いてとりなしているのかと、小一郎は兄に問い質したところ、秀吉はあっさり認めた。小一郎は何も知らされなかったことにショックを受け兄をなじるが、「まことにことを言えば、お前は止めたであろう」と秀吉に返されてしまう。「お前に止められたらやらんかった。だから言わんかったんじゃ。それでは何も変わらぬからのう」。そして秀吉はこう続ける。「わしが変える。このわしが、上様の思いを継ぐ」

この回から次の回にかけて、この秀吉の「それでは何も変わらぬ」という言葉と、「わしが変える」が頻繁に登場する。諸将と足並みをそろえていたのでは、「何も変わらない」のだ。だから今こそ仲間を裏切り、「これで、お別れです」と言うことになっても己の信じた道を行くのだ、と決めた秀吉の強い意思がそこには感じられる。

秀吉の孤立を心配した小一郎は、勝家や長秀らとの話し合いの場を設けるために、信長の葬儀を執り行ってはどうかと提案する。そして喪主を三法師とすれば、さすがに信孝も連れてこざるを得ないだろうと読んだのだ。

秀吉らも賛成し、各所に書状を送るが、誰一人来ないということが判明する。実は、信長の法要は、市を喪主として既に京の妙心寺(みょうしんじ)で執り行われており、信孝、勝家、長秀、池田恒興(つねおき/堀井新太)など、主だった面々はそちらに参列していたのだった。

自分だけが招かれていなかったことを知った秀吉は、まことの敵が信孝や勝家ではなく、紛れもなく市であることを、今さらながらまざまざと思い知らされた。「我らの相手はお市様じゃ」という秀吉の言葉に、小一郎は少なからずショックを受ける。葬儀は取りやめるしかないという小一郎に、秀吉は「ならぬ。葬儀は行う」と命じる。養嗣子(ようしし)として迎え入れた信長の四男・羽柴秀勝(ひでかつ/柊木陽太)を喪主とするというのだ。

葬儀は天正10(1582)年10月、京の大徳寺(だいとくじ)で盛大に執り行われた。しかし、その中に刺客が紛れ込んでいた。その隠し持っていた苦無(くない/両刃のナイフ)が伊勢のものだったことから、滝川一益(かずます/猪塚健太)の手の者だということがわかった。

葬儀は無事終了し、秀吉は「上様の目指した新しき、面白き世にしてみせまする」と決意を述べたあと、「今からその覚悟をお見せいたす。捉えた賊をここへ連れて参れ」と命じた。並べられた賊に向けて、自ら太刀を振り下ろそうとした秀吉は、なぜかその縄だけを切って、彼らを解放してやる。「もしもこたびのことで滝川殿のもとにいられなくなったときは、戻って参れ。わしが家来にしてやる。わしとともに面白き世を作ろう」。その様子を陰から見守っていたのは利家であった。

秀吉は信長の位牌に、信長から贈られた片方の草履を供えた。脳裏には、それを賜ったときのことが浮かんでくる。「草履は片方だけでは何の役にも立たぬ。互いに大事にせよ」。そして、秀吉はこう告げるのだった。「これでお別れにござりまする」

そこには、無事に信長を見送ったという安堵する思いもあったかもしれないが、いつまでも信長の家臣に留まってはいられない、これからは自分が新しい世を作っていくのだ、という決意表明もあっただろう。

そんな秀吉の様子は、名代として参列した家臣たちから、長秀や信孝へも報告される。そして長秀には、「これを預かって参りました」と一通の巻物が手渡された。

市と勝家は、信孝に三法師を引き渡すように促すが、信孝は頑なに拒み続ける。そのような中、北庄城に小一郎が訪ねてきた。「追い返せ」という勝家を制して、市は小一郎に会う。小一郎は、「我らは決して織田家をないがしろにはいたしませぬ。お市様を悲しませるようなことはいたしませぬ。ともに生きる道があるはずじゃ!」と必死で訴えるも、市は自分たちの道は分かれた、もう戻れぬと応じない。逆に小一郎に、「お前に、今の兄をまことに支える覚悟があるのか」と迫ってきた。「この私を殺してみよ。織田家を滅ぼすということはそういうことじゃ。それができぬのなら、お前らに勝ち目はない。新しき世を作るなど到底なし得ぬ。兄上の志は私が受け継ぐ。お前らなどには渡さぬ」

そう言って立ち去ろうとするも、市はふと立ち止まるとこう一言残した。「そなたらを止めることが、今一度生きる力となった。礼を申す」「であれば、であればお市様! 必ずやまた参りまする」。小一郎の必死の訴えに、かつてを懐かしむように市はこう一言残すのだった。「しぶといサルじゃな」

その頃、長秀は、利家に向かって「わしは羽柴につく」と伝えていた。今一度よく考えてくれと懇願する利家に、長秀は先日届けられた文書が、すでに調略され起請文を交わした織田家諸将の名前だったことを告げた。「わしのほうがはるか高みにいたはずであった。なのに気づけば今は、わしがあやつを見上げておる。口車に乗ったわけでも情にほだされたわけでもない。わしは羽柴秀吉に屈服したのじゃ」

秀吉のほうでも、信孝が三法師を抱え込んで聞く耳を持たないことを案じていた。そしてもはや見過ごすことはできない、岐阜に向けて出陣すると小一郎に告げる。官兵衛がすでに、信長の次男・信雄(のぶかつ/山脇辰哉)が秀吉らの後ろ盾になるとの約束も取り付けていたのだった。清須で一度は三法師を殺そうとした信雄まで味方につけるとは、その節操のない采配に小一郎は驚き戸惑う。その頭の中には、市に言われた言葉「お前にはあるのか、今の兄をまことに支える覚悟が」が重く響いているのだった。

第32回「賤ケ岳の決闘」

そして、物語はいよいよ「賤ケ岳の戦い」へ入っていく。天正10(1582)年12月、織田信雄を擁した秀吉は、柴田勝家の領地となっていた長浜を取り戻し、岐阜の織田信孝との戦いを始めた。雪によって道が閉ざされ、勝家からの援軍が来ないことを見越しての攻撃であった。信孝はあっさりと三法師を敵方に引き渡し、人質も差し出して降伏。三法師は当面、秀吉が手元で保護することになった。しかし、小一郎は信孝がこのまま引き下がるとは思えなかった。

能登の七尾城には雪が降りしきっていた。自分と夫婦になったために苦労をさせてすまないと利家がまつ(菅井友香)に謝ると、まつは自分は「あなた様といられますゆえ」雪も冬も大好きだと答える。そして、「雪はこの北国に平穏をもたらしまする。いっそこの日の本中に、ずっと雪が降ればいいのに」と笑顔で言うのだった。

そこへ、秀吉が義弟の副田甚兵衛(じんべえ/前原瑞樹)を連れて、酒を土産に無邪気に利家を訪ねてくる。そのあまりの無謀さに、戸惑いながらも迎え入れた利家だったが、その表情は厳しい。

来訪の意図を聞かれ、秀吉は利家とまつ夫婦には、夫婦の娘・豪姫(福地美晴)を養女に授けてもらった恩義があること、寧々(ねね/浜辺美波)とまつを敵同士の妻にしたくないことなどを語ったうえで、こう説得し始めた。「おぬしが我らに降れば、戦となる前にことを終わらせられるかもしれぬ」

しかし、利家は耳を貸さない。「あの親父殿はそんなたまではないわ。わしが寝返ろうが寝返るまいが、降伏などはせぬ」。秀吉も食い下がった。「今の織田では何も変わらぬ。柴田殿は今あることを守ることはできても、新しき世を作ることはできまい。だからわしがやると決めたのじゃ。もうこんな世はうんざりじゃからのう。又佐(利家の通称・又左衛門の略)、わしは天下人になる」

そのあまりに物怖じしない堂々とした宣言に、利家は驚愕、手から盃を落とし、「ふざけるな! なんでこのわしがお前に仕えねばならぬのじゃ」と怒って、秀吉を追い出してしまう。それを雪降りしきる凍てつく濡れ縁で聞いてきた甚兵衛は、「まだ誰にも言うでない」と命じられてこう返す。「ですが、皆も待っている気がします。殿の口からそのお言葉を聞けるのを」

北庄城では、勝家が家臣らを集めて宴を開き、まもなく雪解けとなれば、改めて秀吉を討つと決意を新たにする。利家と佐々成政(さっさなりまさ/白洲迅)が腕相撲を始めて、その場は大いに盛り上がる。最後、勝家も参加するとなり、利家と勝負をしたところ、利家が勝つ。褒美に何がほしいかと聞く勝家に、利家は思わずこう伝えてしまうのだった。「殿、天下人になってくだされ。天下人となって、新しき世を作ってくださりませ。わしはその手伝いがしとうござりまする!」

しかし、それを聞いた勝家は激怒、「このたわけが! このわしがそのようなことを望むとでも思うておるのか。上様が作られた織田家をお守りし、いずれ三法師様を天下人にする。それこそがこのわしの務めだ。つまらぬことを口にするな!」

天正11(1583)年3月、勝家は2万の軍勢を率いて出陣し、北近江の柳ケ瀬(やながせ)に陣を敷いた。秀吉も軍を動かし、両軍は北近江で対峙した。小一郎は守りの要である田上山(たがみやま)砦に入るが、予想通り、信孝が岐阜で再び挙兵したという知らせが入り、秀吉は岐阜へ急行した。しかし、その間に、大岩山(おおいわやま)砦を守る中川清秀(きよひで/すがおゆうじ)が柴田方に寝返り、砦が陥落、岩崎山(いわさきやま)砦も落ちた。

しかし、万事休すと思われたときに、知らせを聞いた秀吉の軍勢が驚異的な速さで引き返す。その甲斐あって、秀吉軍は柴田軍を次々に退け、田上山砦を攻撃していた佐久間軍は敗走した。

勝家のもとを利家が訪れた。命令に背いて佐久間軍の救援に利家が従わなかったことを察した勝家は、利家に斬りかかる。利家も応戦し激しく戦った末、勝家の刀が利家の腕を切りつけた。「わしは親父殿に上様のあとを継いでほしかった。親父殿とともに新しき世をつくりとうござりました!」そう思いをぶつける利家に、勝家はこう答えるのだった。「わしは織田家家老、柴田勝家じゃ。今さら変わることなどできん。その願いは別の者と果たせ」

深々と頭を下げる利家の上に雪が降り続いていた。利家は、秀吉の陣に向かった。「待っとったでよ」と出迎える秀吉。「約束しろ。天下人になるなら、この日の本にずっと雪を降らせろ」。「わかった、約束する」と答える秀吉だった。

織田家の世をもう一度生きたかった者たちと、新しい戦のない平穏無事な世の中を望む者たち。時代の移り変わりというのは、常に残酷だ。天下を取るために次々と驚く手段に出る兄を、小一郎はこれからどのような覚悟で支えていくのか。市の行く末も見守りたい。

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