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今年生まれた2頭の赤ちゃんザル 市川市動植物園の「沈黙」は、すべての命を平等に愛する覚悟か

  • 2026.5.3
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パンチくんの存在で注目が集まる市川市動植物園(千葉県)から先日、「ニホンザルの個別の名前公表は当面の間控える」という声明が公式Xに投稿されました。声明の冒頭ではこの春に誕生した2頭の赤ちゃんにも触れ、赤ちゃんザルも、ほかのサル同様、名前を発表する予定はないと説明しました。この対応には、市川市動植物園の「パンチくん同様にすべての命も守りたい」という信念があるのではないでしょうか。

「名前は非公表」に込められた思い

今回の声明は、これまで以上に市川市動植物園の苦渋の決断が伝わってくる内容でした。園では「4月20日にメス、4月26日にオスの赤ちゃんが誕生」と報告。本来であれば、かわいい赤ちゃんの名前を発表し、来園者と一緒にその誕生を祝うなどの展開も考えられます。

しかし現在、市川市動植物園にはパンチくんへの応援が過熱するあまり、「パンチを攻撃した個体」や「一緒に遊ぶ個体」など、特定のサルの名前の問い合わせも殺到しているといいます。

これに対し、園は「特定の個体名を明かせば、保護や隔離を求める声が殺到し、すべての動物の飼育環境に影響が出るおそれ」について説明。サル山の平穏を守るため、「パンチ以外の個体名や個性について公表も質問への回答もしない」という方針を固めました。

4月に生まれたばかりの赤ちゃんたちも、このルールの対象となりました。祝福のメッセージを寄せてくれるファンに対し、園は声明の中で「お気持ちにお応えできないことは大変残念であり、お詫びいたします」と、率直な思いを吐露しています。

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YouTube「市川市公式チャンネル」より

「パンチ以外の全個体も平等に大事」だからこその沈黙

2頭の赤ちゃんの名前が明かされないのは、市川市動植物園がすべてのサルたちを守り抜こうとしているためでしょう。

声明文には書かれていませんが、園にとってパンチくんが大切であるのと全く同じように、パンチくんを攻撃してしまうサルも、一緒に遊んでくれるサルも、新しく生まれた赤ちゃんザルも、すべてが等しく「大切な命」です。

パンチくんは現在、群れ入りを目指すデリケートな時期を過ごしています。そして新しく生まれた2頭の赤ちゃんザルたちも、母親に抱かれながら少しずつサル社会のルールを学んでいく段階です。パンチくんを含めたサル山の群れ全体にとって、人間の過剰な干渉を受けずに生活することはとても重要なのです。

「それぞれの個性を紹介できるその日まで」

声明の最後には、動物たちを見守る園の温かい願いが込められていました。

公式Xより:「いずれパンチが大人になり、私たちがそれぞれの個性を紹介できるその日までお待ちいただければ幸いです」

いつかパンチくんがたくましい大人のサルになり、群れ全体が落ち着きを取り戻して、4月に生まれた赤ちゃんたちが元気にサル山を駆け回る日が来るはずです。飼育員が笑顔で名前を紹介してくれる日を信じて、今は静かにサル山の風景を見守り続けたいと思います。

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YouTube「市川市公式チャンネル」より

ライターコメント

市川市動植物園の皆さんも本当は「この赤ちゃんはこんなにかわいいんですよ!」と世界中に自慢したいはずです。でもパンチくんだけではなく、すべてのサルたちを平等に守るための決断なのだと思うと、ますます市川市動植物園を応援したくなります。4月に生まれた2頭の赤ちゃんザルが、いつかパンチくんと一緒に遊ぶ姿が見られる日が楽しみです。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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