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27年前、YUKIが英語で歌ったドラマ主題歌を覚えてる? 豪華メンバーが集まった幻のユニット

  • 2026.9.8
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1998年12月、JUDY AND MARY初の東京ドームライブより(C)SANKEI

これはJUDY AND MARYの休止を埋めるための曲ではない。YUKIが自分の声をもう一度、別の設計図の上で試した記録だ。相手は声の重さがまるで違う歌い手。言葉は全編が英語。音を組んだのは、歌謡曲ともギターロックとも別の場所から来た作り手たち。条件を一つ変えるだけでも声は違って聞こえるのに、この曲は三つを同時に変えている。

NiNa『Happy Tomorrow』(作詞:Yuki/Kate・作曲:Yuki/Ma-Chang)ーー1999年7月14日発売

再生して最初に気づくのは、聞き慣れたはずの声の輪郭が、いつもより少し丸いことだ。その丸さがどこから来るのかを、順に確かめていきたい。

活動休止の中で別の声を探した日々

JUDY AND MARYは1999年1月から翌2000年1月まで活動を止めていた。速いギターの上で高い声を張り、語尾を短く切って前へ投げる。バンドでのYUKIの歌はそういう身振りで記憶されている。休止の1年は、その身振りをいったん脇に置く時間でもあった。

NiNaはその期間の真ん中で生まれた。中心にいたのは佐久間正英と島武実。ともにプラスチックス出身で、佐久間はJUDY AND MARYの『そばかす』などを手がけたプロデューサーでもある。その佐久間が、プラスチックス時代から親交のあったケイト・ピアソンに話を持ちかけ、休止中のYUKIを誘った。1999年に限って組まれた顔ぶれだった。

同じ年の11月にはCharaとのユニット・Chara+YUKIで、1stシングルを発表している。休止の1年にYUKIがやっていたのは休むことではなく、自分の声を置く場所を変えて鳴らしてみることだった。この曲をその試みの記録として聴くと、聞こえ方が変わる。

細い声の縁を太い声が下からなぞる

YUKIの声は高く細く、音の立ち上がりが速い。子音が前に出て、母音を長く引かない。ケイト・ピアソンの声はその逆で、太く、低めの位置に重心があり、一音を張ったまま保つ力が強い。細い線に太い線を重ねると、線そのものが太くなるのではなく、輪郭がはっきりする。この曲の二人の声は、そういう関係に置かれている。

歌い出しの主導はほぼYUKIが握る。ケイトの声は最初は下に潜り、サビで同じ旋律に乗ってきて、細い声の縁を下から支える。二つの声が同じ高さでぶつかるのではなく上下に少しずらして置かれているから、どちらの声か聞き分けられたまま一つの塊に聞こえる。所々でケイトの声が前へ出る箇所があり、そこでは曲の温度が一段下がって、YUKIの高い声が戻ってきたときの明るさが際立つ。

サビの旋律は大きく跳ばず、近い音の間を行き来しながら同じ言葉を繰り返す。跳躍が少ないから、性質の違う二つの声が同じ線の上に長く留まっていられる。旋律の設計そのものが、二人で歌うことを前提にしているように聞こえる。

英語で歌うYUKIは、日本語のときとは別の声に聞こえる。日本語は一音ごとに母音が立つが、英語は子音でつなぎ、母音を必要以上に開かない。語尾を無理に切らず、息を抜きながら次の言葉へ滑らせる歌い方は、バンドの速い曲ではあまり出てこなかった顔だ。

励ましの言葉を使わずに重い季節を前へ押す

このデビュー作は、フジテレビ系ドラマ『彼女たちの時代』の主題歌として毎週流れた。深津絵里が主演し、就職氷河期とリストラを背景に、悩みながら前を向く26歳たちを描いた群像劇。ドラマアカデミー賞で作品賞と主演女優賞を受けた作品でもある。

このドラマに彩りを加えたのが、英語の歌声だった。なんともオシャレだ。日本語で励ますのではなく、高い声の明るさと低い声の落ち着き、そして軽い足取りの伴奏で、先に体を前へ向かせる。言葉の意味より先に響きが届く主題歌は、悩みの中身を説明しないぶん、見る側それぞれの悩みに寄り添った。

細い道の先で声が触れる一瞬

NiNaの活動は1999年で終わった。今となっては知る人ぞ知る幻のバンドとして残り、YUKIの名で探しても、すぐには行き当たらない。

だから、この曲に出会う経路はいまも細い。ドラマの記憶から辿る人、名前の並びの珍しさから辿る人。どの道から入っても、最後に残るのは同じ箇所だ。高い声の縁に太い声が触れて、縁が一段濃くなる、サビの入口の一瞬。伴奏に残った空気はいまも埋まらず、その一瞬のために空いたままでいる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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