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疑問符だけの曲名を覚えているか?30年前、人気バンドメンバーがソロで鳴らしたポップロック

  • 2026.9.8
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2013年10月、舞台「私のホストちゃん」の取材会に出席した貴水博之(C)SANKEI

曲名は疑問符ひとつ。けれど、鳴っている音のほうは迷っていないように聴こえる。跳ねるリズムに乗った、明るいポップロックだ。記号を曲名に立てた一枚の中身が、こんなに弾んだ音だという落差。そこがこの曲の入り口に映る。

貴水博之『? (question)』(作詞:貴水博之/作曲:原一博)ーー1996年9月21日発売

accessのボーカル・貴水博之のソロ名義では5枚目のシングルにあたる。難しい話は要らない。この曲がどんな音で鳴っているか、そこから順に聴いていきたい。

機械の音を脇へ回し生の楽器でうねる

まず、この曲が置かれた音の環境から入りたい。本曲の翌月、1996年10月に出たアルバム『WALL』は、accessの頃のデジタルな音の世界からはっきり距離を取った一枚だ。打ち込みの手法も使われてはいるが、あくまで脇役で、主役は生の楽器が骨太にうねる、荒々しく有機的な音。本曲もアルバムでは別のミックスで収められていて、その流れの中にある。

ロックへ舵を切ったソロ期の中で、この曲は重く押すのではなく、跳ねる側に立っていると伝わる。リズムは前へ前へと弾み、どこか懐かしい手触りを帯びて聴こえる。

生の楽器のうねりと、跳ねるリズムと、懐かしい手触り。この三つがそろうと、疑問符を掲げた曲名から想像する暗さは、音の側には感じられない。ロックへ向かう1年の出口に、尖った音ではなく弾む音を置いた。その配置に、この曲の聴きやすさの理由を感じる。

疑問符を頭に付けた短い言葉の跳ね方

サビを歌詞カードで追うと、疑問符が言葉の頭に置かれている。

「? 未来は ? 本音は」

「? 未来は ? 自由は」

問いの記号が先に来て、未来、本音、自由という短い名詞があとから続く。一語ごとに区切られた短い言葉は、跳ねるリズムと相性がいい。区切りのたびに息が継げて、言葉が一つずつリズムの上に落ちていくように聴こえるからだ。

二つのサビで、頭の「未来は」は同じ場所に戻ってくるのに、後ろの言葉だけが本音から自由へ入れ替わる。同じ形の上で言葉だけが差し替わる作りなので、聴くたびに一語ずつ覚えていける。口ずさみやすさの種は、ここにあると感じる。

旋律の側も暗い方へ寄っていないように聴こえる。問いを歌っているのに、聴き終えて重くならないのは、メロディとリズムが明るい側にあるからだと感じる。疑問符は悩みの記号ではなく、次の一語へ跳ぶための合図に聴こえる。

歌声について触れておきたい。『WALL』全体では、歌が切れ味よく尖っているのが持ち味だと伝わる。この曲もその中にある。アルバム版ではド頭で貴水のシャウトが足され、全体がどっしりと重い仕上がりに聴こえる。

バンドの人が書いた旋律を自分の声にする

作曲は原一博。このころはWILD STYLEというロックバンドの一員としてメジャーデビューしたばかりで、のちにTRFやEXILE、BoAへ曲を書いていく人だが、この曲はまだ名前が出始めたばかりのころの仕事にあたる。ロックバンドの現場にいる書き手の旋律を、貴水が自分の声で歌った、という組み合わせだ。

編曲は武部聡志。この曲が跳ねる手触りを持って聴こえる理由の一つは、武部聡志という名手が編曲を担当したところにある。バンドの人が書いた旋律を、跳ねるポップロックとして整え、最後に貴水の尖った歌がその上に乗る。この三段の受け渡しが、この曲の骨組みに映る。

そして着地は貴水の歌だ。accessが1995年1月1日に活動休止を発表してから、貴水は同じ年の9月に最初のソロシングルを出し、翌1996年9月の本曲まで1年で5枚のシングルを重ねた。自分の名前だけで歌う1年の終わりに、疑問符を頭に付けた言葉を、跳ねるリズムの上で歌い切った。その声が、この曲でいちばん前に立っている。

ロックの側に置かれた跳ねる一枚

2025年8月27日、貴水博之はヒストリー盤『HIROYUKI TAKAMI THE HISTORIES』を出した。ロックの曲を集めたDisc1「The Rock Histories」の12曲目に、この曲が置かれている。初回限定盤のBlu-rayにはPVも収められた。

疑問符を掲げた曲が、こんなに軽やかに跳ねて聴こえる。その落差を、ヒストリー盤の12曲目でもう一度確かめられるのが、いまの聴きどころに映る。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

(文・笄坂かける)

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