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全編IMAXで撮影したクリストファー・ノーラン監督作『オデュッセイア』は、やはりIMAXで観るべき映画だった!

  • 2026.8.18

『オッペンハイマー』(23)でアカデミー賞7冠に輝いたクリストファー・ノーラン監督最新作『オデュッセイア』が9月11日(金)に公開される。古代ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩を基に映画化した本作は、“トロイの木馬”でおなじみトロイア戦争の英雄オデュッセウスの旅路を描いたアドベンチャー超大作だ。18年にわたってIMAXを取り入れてきたノーランは、今作で初となる全編IMAXフィルム撮影を敢行。圧倒的な没入感だけでなく、ストーリーテリングやテーマにもラージフォーマットを活かした本作は、まさにIMAXで観るべき作品だ。

【写真を見る】どこにいるの?撮影中のクリストファー・ノーラン監督を発見!

海の神、ポセイドンの怒りを買ったオデュッセイアは10年もの間、消息不明に… photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.
海の神、ポセイドンの怒りを買ったオデュッセイアは10年もの間、消息不明に… photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.

“トロイの木馬”作戦でトロイア戦争を勝利に導いたイタケの王オデュッセウス(マット・デイモン)は、王妃ペネロペ(アン・ハサウェイ)や息子テレマコス(トム・ホランド)が待つ故郷を目指し出航した。しかし旅の途中で神々の怒りに触れたオデュッセウスは、次々と試練に見舞われ多くの家臣を失ってしまう。王が消息を絶って10年、イタケではアンティノオス(ロバート・パティンソン)ら王位を狙う多くの求婚者がペネロペのもとに押しかけていた。

木馬、トロイアの陥落、手漕ぎの帆船、一つ目の怪物…IMAXのスクリーンで際立つ、リアルな映像表現の力強さ

トロイア戦争の命運を分けた、トロイの木馬も撮影用に制作した photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.
トロイア戦争の命運を分けた、トロイの木馬も撮影用に制作した photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.

ノーランの映画哲学のひとつがリアルな映像表現の追求。デジタル化により不可能な表現はなくなったが、ノーランはつねに思い描いたイメージを視覚化する最適解はなにかを模索。CGありきではなく、実物が使えるなら実物を、それが無理ならセカンドベスト、サードベストはなにかを考える。フィルム撮影を続けているのも、0と1の信号で表現するデジタルに対し無限の諧調を持っている化学反応へのこだわり。そんなノーランのスタンスが今作にも貫かれている。

本作でまず圧倒されるのが木馬のシークエンスだ。IMAXの特長は、シネマスコープの2.35:1より縦方向に広い1.90:1(フィルム撮影は1.43:1)の画角。上下にもスクリーンが広いIMAXシアターは、映画の中に入り込む感覚になる。撮影にあたってノーランは、約10mのフルスケールで木馬を制作。空にそびえる巨体を見上げるカットは、高さのあるIMAXで観ると圧倒的な威圧感で迫りくる。トロイア軍との激しいバトル、炎上した塔や建物が倒壊していくトロイア陥落など、広い画角を活かした体感的な見せ場が次から次に登場。内面描写や思考の視覚化でIMAXが威力を発揮した『オッペンハイマー』から一転、今作はスペクタクルを押し出している。

炎に包まれる、トロイアの街はIMAXのスクリーンならさらに臨場感がある! photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.
炎に包まれる、トロイアの街はIMAXのスクリーンならさらに臨場感がある! photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.

勝利を手にしたオデュッセウスとその家臣は、故郷イタケを目指して船を出す。航行シーンは全長30mを超える手漕ぎの帆船を調達し、波の高い外洋に乗り出し撮影。巨大な船が荒波を受けながら進む臨場感あふれる映像に、あらためて自然の力を思い知らされる。近年は「アバター」シリーズや『ゴジラ-1.0』(23)で緻密にシミュレーションされた海の描写が話題になりアカデミー賞視覚効果賞にも輝いたが、リアルな映像の持つ力強さは別格だ。重苦しい雲がたちこめた空と波に翻弄される船、荒れた海をひとつに収めた映像から伝わってくるのは、解放感や爽快感ではなく人間の弱さや小ささ。全身を包み込む立体的なサウンドと相まって、過酷な旅が体感できる。

故郷に帰れないオデュッセウスと部下たちは大海原を彷徨い、様々な困難にぶつかるが… photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.
故郷に帰れないオデュッセウスと部下たちは大海原を彷徨い、様々な困難にぶつかるが… photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.

オデュッセウスを襲う神々の脅威の代表格が、海の神ポセイドンの息子キュクロプスだ。食料や水を求めて見知らぬ浜辺に降り立った一行は、そうとは知らず一つ目の巨人キュクロプスの棲み処に立ち入ってしまう。人間を軽々と持ち上げ頭から喰らいつくキュプロクスは、特殊メイクをしたビル・アーウィンと実際の洞窟内で操った10mもの巨大パペットで撮影された。アーウィンは『インターステラー』(14)で鉄板のようなロボットTARS “ターズ” の声優を務めていたパントマイム出身の俳優で、その個性的な振り付けはロープで操るマリオネットの動きと見事にマッチ。薄暗い洞窟のロケーションも手伝って、不気味なキャラクターに仕上がった。

そんなキュクロプスと兵士たちを一緒に収めたカットは、その巨体や洞窟の天井など縦方向を意識した画作り。スケール感ではなく洞窟に閉じ込められた閉塞感を強調するためIMAXの画角を活かした撮影は、『インターステラー』以降ノーランとコンビを組んでラージフォーマットの限界に挑んできたホイテ・ヴァン・ホイテマが担当。洞窟から脱出したオデュッセウスらを追いかけるシーンも臨場感があり、逃げる兵士の背後の木々の上に怒り狂ったキュクロプスの頭がのぞく縦を活かしたカットも迫力満点だった。一方、6つの頭を持つ怪物スキュラはCGがメインに使われており、同じクリーチャーでもキャラクターによってベストな手法を使い分けているのがわかる。

【写真を見る】どこにいるの?撮影中のクリストファー・ノーラン監督を発見! photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.
【写真を見る】どこにいるの?撮影中のクリストファー・ノーラン監督を発見! photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.

モノトーンで描かれた冥界、主人公の孤独や虚無感を表現する映像

冥界(ハデス)のシーンのメイキング photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.
冥界(ハデス)のシーンのメイキング photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.

IMAXが威力を発揮したのは、アクションやスペクタクルだけではない。航路を見失ったオデュッセウスたちが答えを求めて冥界(ハデス)に立ち入るシーンでは、霧に覆われた白い地上と真っ黒な地面で画面を上下に分割し、その狭間を進む兵士たちもシルエットとモノトーンで描写。暗い足もとが地面に溶け込んで見える映像は、縦方向に広い画角も手伝って、地面から這い出た死者たちに冥界へと引きずり込まれる錯覚を覚えてしまう。

女神カリュプソ(シャーリーズ・セロン)の島に漂着したオデュッセウスが浜辺で海を眺めるシーンでは、空から砂浜までを切り取った画面の中にその姿をポツンと小さく置くことで、彼の孤独や虚無感を表現。ほかにも緻密に再現された壮麗な王宮や神殿などスケール感ある映像で、青銅時代をリアルに味わうことができる。

 海の女神カリュプソは島に7年間もオデュッセウスを留めてしまう… photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.
海の女神カリュプソは島に7年間もオデュッセウスを留めてしまう… photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.

マット・デイモンら演技派の魅力、さらにルドウィグ・ゴランソンがオーケストラを封印して挑んだ劇伴も堪能

オデュッセウス役のマット・デイモン、ペネロペ役のアン・ハサウェイ、カリュプソ役のシャーリーズ・セロン、そして双子のスパルタ王妃とミケーネ王妃を一人二役で演じたルピタ・ニョンゴと4人のオスカーウィナーが名を連ねている本作。技巧派たちの演技がじっくり味わえるのもラージフォーマットの魅力である。帰らぬ夫や命を狙われる息子の身を案じつつ、凛とした態度で宮廷を仕切るペネロペ、孤独をにじませオデュッセウスを引き留めようとするカリュプソ、顔に大きな傷を負わされて感情を押し殺すヘレネなど名演の連続だが、圧巻はなんといってもオデュッセウスだ。デイモンは強さと弱さ、知性派でありながら時に感情に流される王を熱演。10年にわたる苦難の旅を通じて疲弊していく心身や、激しいアクションシーンを含め大役を務めあげた。オスカーを手にした『オッペンハイマー』同様、クローズアップを交えて感情のデティールをみごとに可視化したホイテマの手腕もお見事。感情のふり幅の大きい王子テレマコス役のトム・ホランド、王座を手に入れるためテレマコス暗殺を企てる求婚者アンティノオス役のロバート・パティンソン、魔女キルケ役のサマンサ・モートン、オデュッセウスに寄り添う女神アテナ役のゼンデイヤなど、並み居る演技派の魅力をあますことなく味わえるのもIMAXのアドバンテージなのだ。

 夫であり王であるオデュッセウスの帰還を待ちわびる、妻ペネロペと息子テレマコスを、アン・ハサウェイとトム・ホランドが演じる photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.
夫であり王であるオデュッセウスの帰還を待ちわびる、妻ペネロペと息子テレマコスを、アン・ハサウェイとトム・ホランドが演じる photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.
 オデュッセウスの妻、ぺネロぺへ求婚するアンティノオス役はロバート・パティンソン photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.
オデュッセウスの妻、ぺネロぺへ求婚するアンティノオス役はロバート・パティンソン photo by Melinda Sue Gordon [C] Universal Studios. All Rights Reserved.

IMAXでもう一つ特筆すべきは、非圧縮によるダイナミックレンジの広いサウンド。体感的な超低音、そしてどの座席でも音の移動が把握できる微調整もIMAXシアターの特徴だ。ノーランはサウンド面でも青銅時代を再現するため、オーケストラを封印。音楽は『TENET テネット』(20)、『オッペンハイマー』でも組んだルドウィグ・ゴランソンが担当し、硬質で生々しい打撃音を中心に劇伴が組み立てられた。音のテクスチャーの細部まで味わえるIMAXシアターなら、映像と音楽でオデュッセウスの時代を味わうことができるのだ。

ノーランのこだわりが詰め込まれた『オデュッセイア』は、IMAXの持ち味を極限まで活かした壮大なる叙事詩。理想的な環境でその真価を味わってはみてはどうだろう。なお、ノーランの意図が100%味わえる正方形に近いIMAXフィルム規格1.43:1で上映できるIMAXレーザー/GTテクノロジー対応シアターは、グランドシネマサンシャイン池袋と109シネマズ大阪エキスポシティにあるので、可能ならこちらでの鑑賞がおすすめだ。

文/神武団四郎

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