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40℃超の酷暑をどう止める?「地球とスポーツの未来」 を守る、アスリートたちのアクション

  • 2026.8.18
Brian Scott Peterson, HEROs PLEDGE, 高橋とんこ, 渡部暁斗

2026年、国内で初めて5日連続の酷暑日を記録。年々厳しくなる夏の暑さは、スポーツ界にも大きな影響をおよぼしている。特に野外競技の開催は暑さを理由に延期や中止になったり、ウィンタースポーツでは積雪量が減ってしまったりと、将来的に競技存続の危機にも!?

そこで、ここでは気候変動対策に本気で取り組むアスリートたちをご紹介! 地球とスポーツの未来を守るために、最前線で活躍する彼らからパワーをもらって。

髙梨沙羅さん「自然の中で学ぶ機会をつくる」

「自然環境を次世代へ残したい」「スキージャンプ競技の素晴らしさを伝えていきたい」という想いから、髙梨さんが立ち上げた「JUMP for The Earth PROJECT」では、定期的にトレッキング&クリーン活動などの取り組みやイベントを実施中。2026年6月に開催した山形県蔵王での活動では、参加者から「自然を保護する社会の仕組みについて考えるきっかけになった」「一人ひとりがごみを捨てない意識を持つと町はこんなにきれいになると知った。いろんなところに広げていきたい」という声も。こうした経験や体験から生まれる一人ひとりの心、そして社会の変化を目指している。

蔵王・樹氷保護活動の一環でオオシラビソ植樹活動も実施 Hearst Owned
競技に打ち込めるのは、かけがえのない自然があるから

「私が環境について意識するようになったきっかけは、競技者として世界で転戦するなかで、気候変動の影響を身近に感じるようになったことです。最近では、気候変動の影響で、雪不足のため大会が延期されたり中止されたりしています」

「大会が開催されても、大半は人工雪を使って行われますが、これには多くのエネルギーが必要です。そうした現実に触れるたびに、私がスキージャンプ競技に打ち込める環境は決して当たり前ではなく、かけがえのない自然に支えられているのだと実感します」

蔵王で実施したトレッキング&クリーンアクションでの1枚 Hearst Owned
毎日の小さな選択には、社会に良い影響を与える力がある

「私が普段意識しているのは、特別なことではなく、毎日の暮らしの中でできる小さな選択です。例えば、フェアトレードの商品を選ぶことや、冷蔵庫の食材を最後まで使い切ってフードロスを減らすことも心がけています。また、友人と古着屋さんに行って服を探したり、気に入ったものを長く大切に使ったりすることも、資源を無駄にしないための大切な行動だと思っています」

「こうした取り組みを続けるなかで、一人ひとりの小さな選択にも社会や環境に良い影響を与える力があると感じるようになりました。そして、自分だけで終わらせるのではなく、家族や友人と話題にしたり、一緒に行動したりすることで、その輪が少しずつ広がっていくことも実感しています」

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【Profile】 スキージャンプ選手・髙梨沙羅
小学2年生からジャンプをはじめる。FISワールドカップ総合優勝4回、男女通算歴代最多の63勝を達成。2026年ミラノ・コルティナオリンピック混合団体では銅メダルを獲得。世界各地の雪山を転戦するなかでの経験から「JUMP for The Earth PROJECT」を立ち上げ、自然環境の保全とスノースポーツを次世代へつなぐ活動を推進している。

一ノ瀬メイさん「ファッションから地球環境を変えていく」

現役引退後、もともとファッションが好きなこともあり、洋服との向き合い方への知識を深めてきたと言う一ノ瀬さん。Fashion Revolution Japan主催のイベントにも登壇し、ファッション×サステナビリティというテーマでトーク。買い物ではブランドのサステナビリティへの取り組みをチェックしたり、自分の理想のワードローブをイメージして長く着ることができる一着を選んだり、他にも古着の購入や服のお直しをするなど、服との付き合い方を発信している。

私にとって気候変動は、みんなで変えていける“障害”

「私の好きな考え方に“障害は社会がつくっていて、だから社会の仕組みで障害はなくすこともできる”というものがあります。眼鏡をしないと生活できない人や、言語の壁によってコミュニケーションがとれない人にはそれぞれ障害がありますが、眼鏡によって見えるようになったり、また新しい言語を学んだり通訳者がいたりすることで障害をなくしています。気候変動も同じ。気候変動も人が引き起こしているからこそ、人の力で変えていける障害のはず。そう気づいたのが『ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償』『Cowspiracy:サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』などのさまざまなドキュメンタリーを見て、環境のことを知った時でした」

大好きなファッションからアクション

「平和の祭典と言われるオリンピック/パラリンピックに参加することで、私はいい影響を与えていると思っていましたが、私の着ている服が環境汚染や低賃金労働の原因になっているかもしれないなど、違う分野に目を向けると人の生きづらさに自分が加担していると気づいたのです。障害をつくる側に自分がいると知って、本当にショックでした」

「そこから一人ひとりが心地よく生きられる地球環境にしたいと思い、もともと好きだったファッションでも、服選びに気をつけるようになりました。いまも現役当時も、私が目指していることは変わらないです。"みんながより生きやすい社会にしたい"という想いが、日々の行動の選択につながっています」

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【Profile】パラリンピアン・一ノ瀬メイ
1歳半から水泳をはじめ、史上最年少13歳でアジア大会に出場。2016年リオパラリンピックでは日本人女子最多の8種目に出場。現在も9つの日本記録を保持。21年に現役を引退後はスピーカー、モデル、俳優など国内外で幅広く活躍。23年には「TEDx」に登壇。25年には映画『The Edge』に主演。

渡部暁斗さん「“エコパートナー”とともにCO2排出削減」

渡部暁斗さんの取り組みは、“エコパートナー”と名づけられたスポンサーから得た広告料をすべて二酸化炭素排出量の削減や森林整備などの地球温暖化防止対策に充てる仕組みを取り入れたこと。渡部さん自身が排出していた年間約70トンのCO2を削減するために必要な費用を広告料として設定し、スポンサーを募集したところ、この想いに強く共鳴したアメリカのシューズブランド「オールバーズ」がエコパートナーに就任。それ以降、競技活動のカーボンニュートラル化を実践。広告料を森林保全活動に加えて、地産地消の推進や次世代のスキーヤー育成にも活用した。

自分の暮らしから出るCO2を測ることからスタート

「エコパートナーを募集する時に取り組んだことは、自分がどれくらいのCO2を出しているか知ることでした。調べてわかったのは、飛行機移動にかかるCO2が大きな割合を占めていたこと。輸送も環境負荷が高いことに気づき、普段の買い物でも地産地消や国産品など、できるだけ輸送距離の短い、身近なものを選ぶことを意識するようになりました」

「そもそも世界的に見ても前例の少ないエコパートナーだったので、募集した当初は仕組みを理解してもらうのに時間や労力がかかりました。一方で、前例がないからこそ、メディアにも取材いただけたり、同じ想いを持っている方々からポジティブなメッセージや一緒にアクションを行うお誘いをいただき、活動の輪が広がっていくことを実感できました」

渡部さんのラストジャンプイベント「Watabe Akito’s Last Jump powered by you」で参加者の子どもたちと一緒にサイクル発電に挑戦! Yohei Osada/AFLO
スポーツが担う役割は大きいと信じて

「現役引退後には、子どもたちがサイクル発電をして貯めた電力をもとに、自分が地元白馬のジャンプ場でラストジャンプを行うためのリフトを動かしジャンプする、というイベントを開催。子どもも大人もスポーツを通じて楽しく汗をかきながら、発電することの大変さを学んでくれた様子を見て、気候変動へのアクションの輪を広げるために、老若男女が楽しめるスポーツが担う役割は大きいと改めて思いました」

「温暖化と雪の問題は地球環境問題のほんの一部。私の行動は小さなアクションに過ぎないかもしれません。それでも、これが一人でも多くの方の行動につながるきっかけにもなれば嬉しいと思い取り組んでいます。次世代に少しでも良い環境を残していきたい、それが私の願いです」

ファーストトラック

【Profile】 北野建設スキー部ジェネラルマネージャー・渡部暁斗
ノルディック複合スキーヤー。オリンピックでは通算4つのメダルを獲得。2026年3月に現役を引退して以降、気候変動や環境への取り組みを継続させるのはもちろんのこと、自身の競技生活からの経験や気づきを活かし【WATABE AKITO ENDURANCE LAB】を立ち上げる。ランニング、トレイルランニング、バイクをベースにレース参戦したり、さまざまなテーマの講演会も行う。

五郎丸歩さん「音楽フェス開催で子どもたちとアクション」

磐田市にゆかりのある五郎丸歩さんとEXILEのAKIRAさんがプロデュースした「Iwata Seaside DREAM Fes 2025」。音楽ライブだけでなく、使い捨てプラスチック使用の制限やEVカーの活用、太陽光発電など、環境問題の対策を地域や学生と連携して実施。開催半年前からフェス運営の準備に携わってきた学生ボランティアからは「環境を良くするための小さい一歩ずつの積み重ねをみんながやることで、それが波紋のようにどんどん広まって、当たり前になっていくのだと教えてもらった」「行動にうつしたら楽しくなってきた」と実感のこもった声があがっていた。

どんどんスポーツが縮小されていく”現状を変えていくために

「日本財団主催の『HEROs PLEDGE』をきっかけに、夏場は暑すぎて子どもたちがスポーツできないことや、雪が降らないなどの気候変動の影響を聞き、これからどんどんスポーツが縮小されていくという現実に衝撃を受けました」

「そこから、スポーツ界における先進的なサステナビリティの取り組みを国内外の現場で視察し勉強。学ぶだけでなく、次世代を担う子どもたちやさまざまな人を巻き込み、広く活動したいと考えるようになりました。というのも、気候変動はあまりにも大きな課題。その課題を一人ひとりが自分ごととして捉えて、アクションにつなげてもらうことが重要だと感じたからです」

音楽フェス終了後には、学生たちと一緒に磐田市長らに向けて環境に関する政策提言も行った Hearst Owned
垣根を超えて一つとなる経験を、次世代と

「そこで考えたのが音楽フェスでした。ただ開催するだけでなく、その開催の約半年前から、高校生と大学生を対象に、気候変動の現状とスポーツをかけ合わせた学びの機会をつくりました。学生たち自身が学びながら音楽フェスを開催し、最後は開催地の磐田市長らに向けて環境に関する政策提言も行うことに」

「スポーツ、そして音楽フェスを通して、多くの生徒が垣根を超えて一つとなり活動し、アクションの輪を大きくできました。学生たちの感想や意識の変化を聞いた時には、やってよかったと思いました。乗り越えるべき課題が見つかり、2026度の音楽フェスの開催は見送りとなりましたが、こうした経験を糧に、現在もさまざまな人たちと気候変動アクションに取り組んでいます」

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【Profile】 元ラグビー日本代表・五郎丸歩
大学卒業後、磐田市を拠点とするヤマハ発動機ジュビロへ入団。2015年ラグビーワールドカップでは強豪、南アフリカを破り世界のラグビー界に衝撃を与えるなど、副キャプテンとしてもチームを牽引。21年選手を引退後、24年6月までクラブ運営に携わり、現在は磐田市に本拠地を置く一般社団法人Future Innovation Lab代表理事を務める。

岡本圭司さん「滑るだけで気候変動対策になるアプリを制作」

高橋とんこ

雪山用ポータルアプリ「yukiyama」の企画・運営を行う株式会社ユキヤマの代表として活動する岡本圭司さん。一般社団法人Protect Our Winters Japan(POW JAPAN)と連携し、アプリの利用がスキー場の気候変動対策のための寄付につながるプロジェクト「RIDE FOR GOOD」をスタート。初年度でユーザー数が約23万人に到達。ユーザーへのアンケートによると、「滑るだけで貢献できる」「環境やスキー場を意識するようになった」など、4人のうち3人がいつも通り滑るだけで地球温暖化について気づきを得ているという結果が出ている。

全国約400のスキー場で現在地や滑走データを自動記録し、仲間とリアルタイムで位置情報を共有しながらウィンタースポーツを楽しむことができる 高橋とんこ
“知らないうちにアクションを起こしていた”実体験が鍵に

「正直に言うと、もともと気候変動という課題に関心がある方ではありませんでした。アウトドアスポーツやスノーコミュニティを気候変動から守るために活動するPOW JAPANのアンバサダーに任命され、地球温暖化について一緒に勉強をしていても、『自分なんか意識が低いのではないか』と周りの目を気にしちゃったり。でも勉強するなかで、『確かに大雪は降るのにすぐ溶けてしまい、シーズンが終わるのが早いな』とずっと思っていたことを地球温暖化の現象として理解が深まってきました。こうして自分の競技生活に気候変動が大きく影響していると気づいた時、同時にこの自分ごと化の大事さにも気づきました」

「僕は気候変動問題に関して意識が低かったのに、ご縁があってPOWの活動に巻き込まれ、ここまで活動するようになりました。この“勝手に巻き込まれてた”プロセスが鍵なのではないかと仲間と話していて気づき、アプリのアイディアが生まれました。つまり、ユーザーはいつも通り雪山を滑っているだけなのに、アプリの中で『あなたは今日○円寄付しました』と勝手に表示される。気がついたら気候変動対策に貢献していて、ちょっとずつアクションの輪に足踏み入れている。ユーザーが参加できるイベントも開催しコミュニティも増やしていて、ユーザーは楽しんでいるだけなのに、知らないうちに自分が変わっていくきっかけができているんです」

オフラインでのイベントも開催。スノーコミュニティとの交流を図る岡本さん 高橋とんこ
いかに“かっこよく、面白く”アクションできるか

「かっこいいかどうか。僕の判断する時の軸はそこです。なにごとも楽しんでやっている人は、かっこよく見えます。気候変動対策も“やらなければいけない”と思うと、宿題っぽくなってしまったり、個人の責任感に委ねられてしまう傾向があります。でも、“かっこいい”からはじまる行動は広まりやすいし、長続きしやすい」

「マイボトルやマイバッグを持ったり、公共交通機関での移動やライドシェアして滑りに行ったりすること。これも僕はかっこよくて、面白いと思ってやっています。まだ昨年にスタートしたばかりの『RIDE FOR GOOD』ですが、いろんな他者を巻き込んで、より“かっこよく、面白く”雪山を守るムーブメントを広めていきたいです」

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【Profile】パラスノーボード日本代表・岡本圭司
プロスノーボーダー。大会転戦と映像制作を行っていたなか、事故で脊髄損傷の障害を負う。その後、アプリ「yukiyama」の制作や世界規模のスノーパークコンテンツの運営、北海道TV『NO MATTER BOARD』でのMC、国内最高峰のスノーボードコンテストシリーズCOWDAYの運営などを担う。2022年に競技復帰し、北京、ミラノ・コルティナとパラリンピックに連続出場。

井本直歩子さん「スポーツ界から一緒に声をあげていく」

『HEROs PLEDGE』に参加したアスリートたち HEROs PLEDGE

井本直歩子さんは、髙梨さんや五郎丸さん、一ノ瀬さんなど、多くのアスリートたちやスポーツ団体が行動を起こすことを支援する『HEROs PLEDGE』の発起人。日本財団と連携してスタートしたこのプロジェクトは、スポーツ界横断で気候変動や海洋ごみ問題の一因である使い捨てプラごみをゼロにすることを目指している。いまでは多くのスポーツ団体の活動を支援し、スポーツ界全体の気候変動に関する法改正や政策提言、講座運営、講演、学会登壇、メディア出演、キャンペーン、カンファレンス開催へと広がり、さまざまな角度でスポーツ界での活動を推し進めている。

2024年に気候ネットワーク主催の講演にて五郎丸歩さん(左)と日本の気候学者の江守正多教授(右)と一緒に登壇した井本さん(中央) Hearst Owned
グレタ・トゥーンベリさん、ジェーン・グドールさんの活動に触れて決意

「2018年頃、グレタ・トゥーンベリさんの動画をきっかけに気候変動問題について深く知ることになり、地球が大変な事態になっていることを学びました。ちょうどその頃、赴任していたギリシャに講演でいらっしゃっていた動物行動学者のジェーン・グドールさんと直接お話しする機会があり、私も自分で行動を起こそうと決めました」

「それまでは、ユニセフで10年以上発展途上国の子どもたちの教育へのアクセスを広げることを仕事にしていましたが、これからは教育を通して気候変動問題を人々に伝え、一緒に行動を起こしてもらう人を増やしたいと思ったのです」

目指しているのは、気候変動に立ち向かうアスリートの伴走者

「それから、毎年イギリスで行われているスポーツと気候変動のサミットに参加し、世界の潮流に触れることができました。行動を起こしているアスリートたちに出会って、これを日本でもやりたいと思い、帰国してすぐに思い当たるアスリートたちに『一緒に学んで、声をあげたい』とアプローチしました」

「アスリートは競技を通して気候変動の危機を実感しています。これまで彼らが学びを深めた時に生まれる力強い言葉や行動が、人々の心にまっすぐ届く瞬間を目の当たりにしてきました。最初は『間違っているかもしれない』『何を言われるかわからない』と、環境問題について発信することは勇気がいるもの。でも、みんなで声をあげてきたことで、いまやアスリートが発信することは当たり前になってきました。私個人としても、気候変動を公教育でしっかりと教える方法を大学院の修士課程に在籍して研究中。これからもアスリートの挑戦にしっかりと伴走したいです」

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【Profile】 元競泳五輪代表・井本直歩子
アトランタ五輪競泳800mリレー4位入賞。引退後、JICA、ユニセフ職員として20年間発展途上国の平和構築・教育支援に従事。現在は大学院で気候変動教育を研究しながら、一般社団法人SDGs in SPORTS代表を務め、講演、コンサルティング、講座運営、政策提言、アスリート支援等を通して、スポーツ界の脱炭素・ジェンダー平等推進に従事している。

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