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「ラーメン大好き小池さん」が食べた〈松葉〉のラーメン。トキワ荘の住人を虜にしたその魅力とは?

  • 2026.8.16
南長崎〈松葉〉復刻 松葉ラーメン

俺はラーメンを食べるために生きているようなもんだ──天然パーマとメガネがトレードマークの「ラーメン大好き小池さん」こと鈴木伸一さんが、〈トキワ荘〉に入居したのは昭和30(1955)年。

「みんな懐が寂しく、ラーメンもごちそうでした。月に1度は会合と称して映画の話に熱中するのですが、そんな時“ラーメンを頼んでこようか”と近くの〈松葉〉へ注文しに行くのは、面倒見のいい藤子不二雄Ⓐ氏。新たな仲間が入居した時は、アニキ分の寺田ヒロオさんが引っ越しそばの代わりに〈松葉〉の出前ラーメンを振る舞ってくれました」

南長崎〈松葉〉外観
創業は昭和27(1952)年頃。南長崎で愛され続ける町中華〈松葉〉。3代目の山本麗華さん母娘が初代の味を守る。
藤子不二雄A『まんが道』
藤子不二雄Ⓐの自伝的漫画『まんが道』にも、〈松葉〉はたびたび登場。

1杯45円のあっさり醤油味。『まんが道』には、どんぶり片手に「やっぱり松葉がいちばん!」とうなずき合う漫画家たちが何度も登場する。何が彼らをそこまで惹きつけたのか。理由の一つとして鈴木さんが挙げるのが、店とトキワ荘の“距離”だ。

「出前を運ぶ数分間の岡持ちの揺れが、ゆで上げ直後のまだ硬い麺の表面とつゆを馴染ませて、おいしさを増幅させていたのではないかと思うんです」

アニメーション作家・鈴木伸一
「初めてラーメンを食べたのは上京してトキワ荘に入ってから。それが〈松葉〉のラーメン」と鈴木さん。袋麺も大好きだった。photo:『鈴木伸一 アニメと漫画と楽しい仲間』(玄光社)より
鈴木伸一 イラスト
漫画『オバケのQ太郎』『ドラえもん』などに時折姿を現すラーメン大好き小池さん。モデルは〈トキワ荘〉の住人で、アニメーション作家の鈴木伸一さん(現在92歳)。イラストは自身が描いた自画像。illustration:Shinichi Suzuki

〈松葉〉のラーメンは、基本の味を守りつつも、食材や味のバランスは時代とともに変化してきた。2024年、地域に残せるものがあればと、当時の味を復刻。スープは鶏ガラ、豚ガラ、昆布と煮干しでとる、初代と同じ味。当時トキワ荘へ出前もしていた従業員にレシピを聞き、隠し味とナルトのトッピングも加わった。その名も「復刻 松葉ラーメン」。

「ザ・普通でしょう?でもあの頃のトキワ荘の方々も、おいしいって言ってくれると思います」と3代目店主の娘、山本桃子さん。鮮やかな鳳凰柄のどんぶりも、当時使われていたものだ。

南長崎〈松葉〉復刻 松葉ラーメン
トキワ荘があった頃の味を再現した「復刻 松葉ラーメン」(700円)。チャーシューやメンマ、固ゆで卵の横にナルトが添えられる。

「店の倉庫に眠っていたのを発見したんです。トキワ荘の皆さんも、このどんぶりで食べていたはず」当時の彼らは20代前半。一つ屋根の下で生活し、夢を語り合った。家族より親密。ライバルではなく一生の仲間。傍らには、いつも〈松葉〉のラーメンがあった。

あれから七十数年。街の景色は変わっても、その青春の味は変わらずここにある。一杯を介して、私たちは彼らと同じ記憶を、時代を超えて分かち合うことができるのだ。

Information

松葉

店内には〈トキワ荘〉の住人たちの寄せ書きやサイン色紙も。

住所:東京都豊島区南長崎3-4-11
TEL:03-3951-8394
営:11時~14時30分LO、17時~19時30分LO(売り切れ次第終了)
休:月曜(祝日は営業、翌日休)
*支払いは現金のみ

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