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「パトレイバー」は「サザエさん」!?出渕裕監督が語る、最新作『EZY』制作背景と“1話完結モノ”の流儀

  • 2026.8.14

全8話を全3章構成にて劇場公開する「機動警察パトレイバー」シリーズの待望の新作アニメーション作品『機動警察パトレイバー EZY』(以下、『EZY』)。いよいよ第2章となる『File 2』が、8月14日(金)より公開となる。『File 1』では、レイバーが大捕物を繰り広げる話や妄想の話、映画撮影現場を舞台にした話など、多彩な物語が1話完結で繰り広げられたが、『File 2』では、それらとはまた趣が少し異なるテイストの物語が展開されていく。

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MOVIE WALKER PRESSでは、「機動警察パトレイバー」を生みだした“HEADGEAR”の一人であり、本作の監督を務めた出渕 裕監督にインタビューを敢行!「『パトレイバー』は『サザエさん』。それくらい懐が深く、どこから観ていただいてもOKです」と語る出渕監督に、「パトレイバー」自体が持つ魅力から『EZY』の見どころまで語ってもらった。

「『パトレイバー』は“ロボットもの”ではないと言えるのかも」

『EZY』の監督を務めた出渕 裕に直撃!
『EZY』の監督を務めた出渕 裕に直撃!

――もともとは監督をするつもりではなかったと、公式サイトでも語っておりましたが。実際にやられていかがですか?

「みんな辞めてしまったので、自分がケツ持ちをするしかないなと(笑)。新たに信頼できる監督が見つかったとしても、前任者が作っていたものを引き継ぐのはやりにくいでしょう。そもそも最初からスーパーバイザーというか総監督のような立場で携わっていましたし、『ラーゼフォン』や『宇宙戦艦ヤマト2199』などで監督経験もあったので、もう自分でやるしかないだろうと思いましたね」

――出渕さんが監督を務めることで、作品にどんなカラーが出ると思いましたか?

「やっているうちに出るだろうと。と言うか、そもそも出ていますし(笑)。別の監督を立ててやっていたと言っても、実質的に伊藤さんと脚本やコンテの振り分けもやっていましたし、方向性はそこで決めていましたから、そういう意味ではあまり変わらない感じですね」

日常にレイバーが溶け込んでいる「パトレイバー」の作劇 [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会
日常にレイバーが溶け込んでいる「パトレイバー」の作劇 [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会

――「パトレイバー」は、ロボットもの然とした物語展開よりも、日常的な事件や物語に重きを置いて描かれています。それだけレイバーが当たり前に存在し、日常に溶け込んだ世界なのだなと実感しました。

「『パトレイバー』という作品のフォーマットは、レイバー(人が乗って動かす作業ロボット)が普通にいて、警察用のレイバーと、それを運用する警察内の“特車二課パトロールレイバー中隊”という部署が警視庁内部にある。そういう世界だからこそいろんな物語へのアプローチができていると考えています。日常的な物語でレイバーが活躍する隙が無かったとしても、世界観としてレイバーの存在は必要不可欠です。もちろん活躍もしたりはしますけど、ロボットが毎回出てきて毎回戦闘アクションがあるというのとは違っていて、いわゆるロボットもののフォーマットとは異なっている。でも、それが『パトレイバー』のスタンダードなフォーマットなんですよ。そういう意味では、『パトレイバー』は“ロボットもの”ではないと言えるのかもしれませんね」

――主人公はロボットではなく、むしろ人や街だったりするということでしょうか。

「それとも少し違います。例えば『機動戦士ガンダム』にも主役=メカというベースがあったうえで、それに乗る主人公のキャラクターがいますよね。『パトレイバー』にも主人公となるキャラクターがいますが、毎回必ず活躍するとか、物語を切り拓いたり、牽引していくようなポジションにはいません。だって主人公は公務員(警察官)ですから(笑)。要はお仕事モノなんです。主人公は、なにか宿命を背負っているわけでもないし、なにか新しい地平を切り拓くような旅をして行くわけでもない。ただ、お仕事モノとしてキッチリしているところとユルいところのバランスが絶妙だから、いろんな題材にアプローチできるんです。そのなかに必ずどこかでロボット(レイバー)が入ってなきゃいけないという枷もありません。無理に入れようとすればむしろ破綻してしまうでしょう。とは言え、たまにはロボットが活躍するお話もやりますよっていう。主役機があってもたまにしか活躍しないって、考えたら一般的な“ロボットもの”の逆張りですよね。

例えば『File 1』の第1話は、レイバーが犯罪を起こしてパトレイバーが取り押さえるという、いわゆるロボットもののスタンダードでした。第2話でも、妄想のなかとは言えレイバーが戦いましたし、第3話では、映画撮影でレイバーが使われていて暴走します。そういう意味で『File 1』は、かなりレイバーをフィーチャーした3本になっていたと思います」

「SFを作っているわけではない」

――『File 1』第1話は吉祥寺が舞台になっていて、『File 2』では世田谷線や三軒茶屋なども出てきます。そういう街選びはどのように?

「吉祥寺は、いわゆる下町とは少し違うところがよくて。脚本・シリーズ構成の伊藤和典さんも、過去あのあたりに住んでいたことがあったみたいだし、自分もあの辺は経由地としてよく通るので。今回は出てこなかったけど、吉祥寺にはハーモニカ横町というレトロな横町があるし、高層ビルが乱立するような近未来感のある街よりも、庶民的な部分が残っているところでレイバーが動いているほうが、観ているほうも楽しいし親近感が沸く。SFを作っているわけではないのでね。もちろん近未来的な場所が舞台になることもあるかもしれないけど、基本はそれほど大都会ではなく、でもそれなりに田舎でもない、生活感が感じられる場所として吉祥寺になったんだったと思います。実際に作っている作画スタッフが、取材しやすかったのもあります。ロケ写真が撮りやすいと言うか(笑)。スタジオは吉祥寺から中央線で2つ先くらいにあるので」

見慣れた風景が登場するのも魅力の一つ [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会
見慣れた風景が登場するのも魅力の一つ [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会

――三軒茶屋も吉祥寺と似た、生活感とレトロ感が残る街ですよね。

「三軒茶屋に関してはトラムみたいなものを出してレイバーと対比させてみたかったのが一つあります。最初は蒲田の予定だったんだけど、実際に行ってみたら少しイメージと違ったので、『じゃあ住んでる近くにしちゃえ!』と思って(笑)。それこそ自分の土地勘があるということです。世田谷線も通っているし、キャロットタワーもあって、三角地帯とか整理されていないゴチャゴチャした部分が残っていて。そういういろんな顔があるとこがあって、結果として三茶にしてよかった。話外れるけど、三茶にある“茶沢通り”は、なんでも“世界で最もクールな通り”の9位に選ばれたらしいですね。あの辺に住んでる身としては『なんで?』って思いますけど(笑)」

――茶沢通りと言うのは、下北沢に向かう“ゴリラビル”があることで有名な通りですよね。

「はい。ゴリラビルも入れようか迷ったけど、世田谷線から少し離れていて。配置的にムリが出ちゃうのでやめました」

「File 1」の構成について語る出渕監督
「File 1」の構成について語る出渕監督

――何話にどの話が来るかといった、順番はどのように決められたのですか?

「基本は伊藤さんのほうでだいたい。第2話は片山(一良)くんの本で、おもしろかったので使わせてもらったかたちです」

――すごく意外性があっておもしろかったです。平和な日々に飽きた隊員達が、日誌に妄想の事件を書き込んで行くという。

「2話目で変化球です(笑)。変化球ではあるけど、キャラクター紹介も兼ねている感じですね。第1話は、昔から『パトレイバー』を観ている人なら、『こういう話がパトレイバーの基本だよね』ってわかってもらえると思うんです。でも気がついたらいろんなことが終わっていて、『じゃあ新しいキャラクターたちはどういう人なのか?』というところを、深掘りというわけでもないけど、紹介の意味も込めて、『この人はこういう性格でこういうリアクションをするということが見えてくるような話』になっている。アクションもあって、大事件もあって、あり得ない大事件だけど、妄想なので見せることもできて、絵面的にもおもしろいものになってくれたと思います」

――佐伯隊長のシメがいいですよね。

「『…ということがなくてよかったです』と。こういうのがパトレイバーらしさかもですよね」

林原めぐみが演じる佐伯貴美香(写真は「File 1」より) [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会
林原めぐみが演じる佐伯貴美香(写真は「File 1」より) [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会

――第1話でも最後に人情味のある言葉で締めていて。実は毎回、最後に佐伯隊長の気の利いたシメが出てきて、ウィットに富んでいると言うか、オシャレでいいなと思いました。

「『機動警察パトレイバーREBOOT』の時の演技を見て、佐伯は林原(めぐみ)一択でした。佐伯はもともと、少しとぼけたところがあって、気苦労も多いなか、ああいった隊員たちを理解してる描写があると包容力のあるキャラクターなんだなって。そういうのは林原さんは上手いなあと思いますよ。彼女に頼んで正解でした。締めのセリフは、そんなにすごく意識したわけではなかったけど、そう考えて楽しんでいただいたのならよかったです(笑)」

「何話から観てもまったく支障が無い。途中から入って来てくれても大歓迎」

――会話劇もパワーアップしているように思いましたが、会話や言葉に対するこだわりは?

「なんでしょうね(笑)。声優さんのなかでキャラクターが見えたりつかんだりすると、その部分の掛け合いや空気みたいなものが自然に生まれるのかなと思います。感覚的なものなので言葉で説明するのは難しいのですが、声優さんやシナリオライターさんとやりとりするなかで、お互いを見て『こういうふうに育てていけばいいんだな』とつかんで、それをまた『こういうふうにしよう』とか、『こうしたらもっとおもしろく膨らんでいくんじゃないか』と育てて行く感じです」

十和のこの表情の理由とは? [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会
十和のこの表情の理由とは? [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会

――アドリブも結構あるのですか?

「ありますよ。ほかの現場がどのくらいあるのか知らないので、多いとか少ないとか言えませんけど、アドリブには寛容な現場です(笑)。おもしろいなと思ったら採用する。そこは、声優の皆さんが早い段階でキャラクターをつかんでいたからこそ、そういうことができていたと思います」

――サブタイトルもいいですよね。

「『File 1』で言うと、『EPISODE ; 1トレンドは#第二小隊』と『EPISODE ; 3ホンモノが一番』は伊藤さん、『閑中妄あり』は片山くんが名付け親です。『File 2』は『EPISODE ; 4 ワインと銃弾』は脚本の横手(美智子)さん、『EPISODE;5 あさき夢みし』は自分で、『EPISODE ; 6 恋のサバイバル』は水上(清資)くんですね」

――「EPISODE ; 6 恋のサバイバル」は、災害救助のお話です。タイトルの「恋のサバイバル」は、実際にそういうタイトルのディスコソングが1970年代にあって。

「水上くんが、その曲が好きだと聞いたことはなかったけど、きっと好きだったんじゃないですか(笑)。アフレコ現場で『これって本当にある曲だよね?』って、調べた覚えがあります」

制作の裏話までたっぷり話してくれた
制作の裏話までたっぷり話してくれた

――また、出渕監督が手掛けた「EPISODE ; 5 あさき夢みし」は、ロボットものでありながらスピリチュアルな物語が展開されて意外性がありました。天鳥桔平には霊的なものが見えて。

「見えるような、見えないような。呼んだような、呼ばれたようなね(笑)」

――天鳥は部屋でアナログレコードを聴いているシーンがあったり、古いものが好きで大事にできていた人だから、見える人に選ばれたのかなと。

「それはもう、想像を膨らませて、いろいろに解釈してもらえたらうれしいです(笑)。天鳥はメカに対する知識はあっても、決して最先端のものが好きというわけではないのです。いまの若い人はCDよりレコードだったりしますよね。観て受け取って消化するだけじゃなくて、想像することが楽しい。それこそが、本来の視聴することの喜びだと思います。『おもしろかった!』で終わりじゃなくて、引っかかったり、『これってどういうことかな?』と思っていただけるような、それだけの余白は作っているつもりなので、存分に想像を膨らませて楽しんでもらえればと」

『機動警察パトレイバー EZY File2』は8月14日(金)公開! [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会
『機動警察パトレイバー EZY File2』は8月14日(金)公開! [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会

――「世にも奇妙な物語」のような感じだなと。

「そういう“幻想奇譚”みたいなこともできてしまうのが、『パトレイバー』というフォーマットの魅力です。過去のテレビシリーズもOVAもそうでした。“ロボットもの”だと思って初めて観る人はミスマッチに感じるかもしれないけど、実際この作品ってそれくらい懐が深いんです。最近の作品だとカチッとした設定とストーリーラインがあって、大河ドラマのように連続性があって、シリーズを通して一貫した物語性がある作品が主流になっていますが、これはそういうタイプの作品ではない。逆にそういう1話完結ものが少ないからこそ、新鮮に感じてもらうことができるかなという気がします」

――基本的に1話完結というのも、観やすくていいですね。

「『ルパン三世』とか『うる星やつら』みたいなものです。もっと言えば『サザエさん』(笑)。つまり、どこから入ってもOKな作品ということ。前の『パトレイバー』を観ていなくても大丈夫だし、何話から観てもまったく支障が無い。途中から入って来てくれても大歓迎です」

――では最後に『File 2』の3つのお話のなかで、お気に入りのシーンを教えてください。

「『恋のサバイバル』に出てくる、イノシシのシーンの作画はいいですよ!そこは劇場版第1作の作画監督だった黄瀬(和哉)くんがイノシシのデザイン込みで担当していて、好きな人なら観れば動きや芝居のよさがわかるんじゃないかと思います」

【写真を見る】イノシシVSレイバー!?IG作画三大神・黄瀬和哉が手掛けた作画に、出渕監督も絶賛 [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会
【写真を見る】イノシシVSレイバー!?IG作画三大神・黄瀬和哉が手掛けた作画に、出渕監督も絶賛 [c] HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会

取材・文/榑林史章

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