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【五大湖のヌシ】ミズウミチョウザメの寿命は「300年」に達する可能性

  • 2026.8.12
五大湖のヌシ「ミズウミチョウザメ」/ Credit: commons.wikimedia

北米の五大湖には、人間の何世代分もの歴史を見届けてきた魚が泳いでいるのかもしれません。

その魚は、全長1.8メートル前後にもなる大型淡水魚「ミズウミチョウザメ(Acipenser fulvescens)」です。

これまでもミズウミチョウザメは非常に長寿な魚として知られていましたが、新たな研究から、その寿命は従来考えられていたよりはるかに長く、個体によっては200年を超え、300年近くに達する可能性が示されました。

もし現在300歳の個体がいるなら、その魚が生まれたのはアメリカ独立宣言より約50年も前ということになります。

研究の詳細は、米ミシガン州立大学(MSU)らにより、2026年4月28日付で学術誌『Journal of Fish Biology』に掲載されています。

目次

  • 年輪では分からなかった「本当の年齢」
  • 200年超えは珍しくない? 数百年を生きる可能性

年輪では分からなかった「本当の年齢」

魚の年齢を調べる方法としてよく使われるのが、骨や鱗などに刻まれた成長輪を数える方法です。

ミズウミチョウザメでは、胸びれの棘(とげ)に形成される成長輪が年齢推定に使われてきました。

スペリオル湖で捕獲された個体/ Credit: en.wikipedia

しかし、ここには問題があります。

魚が高齢になるほど成長そのものが遅くなり、成長輪同士の間隔も狭くなるため、古い成長輪を正確に読み取ることが難しくなるのです。

そのため研究者たちは、従来の方法では特に高齢個体の年齢を過小評価している可能性があると考えました。

そこでチームは、成長輪を数える代わりに、実際の魚が何十年の間にどれだけ成長したのかを見る方法を採用しました。

対象となったのは、五大湖水系に生息する5つの個体群です。

研究者らは、過去数十年にわたり標識を付けて放流され、その後ふたたび捕獲されたミズウミチョウザメの記録を解析。

成長解析には合計5007個体が用いられ、同じ個体を再測定した期間は最長42年に及びました。

その結果、成熟後の年間成長量は性別や個体群によって平均約0.26~1.15センチと、非常に遅いことが分かりました。

中には、1990年に117センチだったオスが、34年後の2024年にも124センチにしかなっていない例もありました。

つまり、大型のミズウミチョウザメが現在の体長に達するまでには、これまで想定されていた以上に長い時間が必要だった可能性があるのです。

200年超えは珍しくない? 数百年を生きる可能性

チームは、この長期的な成長データを使って、体が大きくなるにつれて成長速度がどの程度低下していくのかを数学モデルで推定しました。

これは、数百年生きることで知られるニシオンデンザメの寿命を推定する際に使われてきたアプローチとも似ています。

その結果、個体群によって推定値には大きな違いがあるものの、ミズウミチョウザメには200年以上生き、300年近い年齢に達する個体が存在する可能性が示されました。

これは、従来よく引用されてきた約150年という寿命を大きく上回ります。

ただし、ここで注意しなければならない点があります。

今回の研究で「300歳のミズウミチョウザメが発見された」わけではありません。

研究者らが直接測定したのは、標識を付けた魚が数十年間にどれほど成長したかです。

そこから「これほど成長が遅いなら、この大きさになるまでに何年必要なのか」をモデルによって逆算しています。

つまり300年という数字は、実際に300年間追跡した魚の年齢ではなく、長期的な実測データに基づく推定値なのです。

ミズウミチョウザメの幼魚/ Credit: en.wikipedia

それでも今回の発見は、ミズウミチョウザメの保全を考えるうえで重要です。

この魚は成熟までに長い時間がかかり、繁殖頻度も低いため、一度個体数が減少すると回復には長い年月を要します。

もし成体が200年、300年という時間尺度で生きる動物なら、その生存率や漁獲の影響を評価する際にも、それだけ長い時間軸で考える必要があります。

今回の発見にたどり着けたのも、大学や州政府、先住民族のコミュニティなどが何十年にもわたり標識調査と保全活動を続けてきたからでした。

研究者のスコット・コルボーン(Scott Colborne)氏によると、一部の先住民族コミュニティでは以前から、ミズウミチョウザメは400年ほど生きる可能性があると考えられてきたといいます。

現代の長期データ解析が、そうした古くからの認識と重なる方向を示したことも興味深い点です。

ミズウミチョウザメが実際に300年近く生きることを確定するには、既知年齢の個体や別の年代推定法を用いたさらなる検証が必要です。

しかし今回の研究は、五大湖を泳ぐ巨大魚の中に、人間の歴史を数世紀にわたって生き抜いてきた個体が存在する可能性を示しました。

湖の「ヌシ」という言葉が、これほど似合う魚も珍しいのかもしれません。

参考文献

300-year-old sturgeon are swimming around the Great Lakes
https://www.popsci.com/environment/lake-sturgeon-live-300-years/

Lake sturgeon may live for centuries, study finds
https://msutoday.msu.edu/news/2026/08/sturgeon-live-for-centuries

元論文

Lake sturgeon (Acipenser fulvescens) growth and longevity estimated from adult capture–mark–recapture data
https://doi.org/10.1111/jfb.70478

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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