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80代女性患者「退院はいつになるんですか!」看護師「えっ…」→突然の怒号に“頭が真っ白になった”ワケ

  • 2026.8.21
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。ひと息つきながら、読んでもらえたら嬉しいです。病棟看護師のもなです。

看護師として働いていると、患者さんやご家族から、思いがけず厳しい言葉を受けることがあります。

頭では「まずは落ち着いて話を聞こう」と分かっていても、突然強い言葉を向けられると、胸がざわつき、「どう返せばいいんだろう」と一瞬迷ってしまうものです。

みなさんも、そんな経験があるのではないでしょうか。

そのとき、どんな言葉を返しましたか?すぐに謝りましたか?

今回は、そんな経験を通して私が考えた、「伝えること」と「伝わること」の違いについてお話しします。

「退院はいつですか?」その質問が、思わぬクレームにつながった

私にも、今でも忘れられない経験があります。

転倒をきっかけに入院した80代の女性、入院後は少しずつ歩ける距離が伸び、「回復してきたな」と感じていました。

ところが、ある日のことです。

その患者さんが、険しい表情で詰所までゆっくり歩いて来られました。

私はその数日前、退院についてお話ししていました。退院時期は、今後の歩行状態などを見ながら決めていくこともお伝えしていました。

だからこそ、患者さんの表情を見た瞬間、「何かあったのだろうか」と不安になりました。

そして、このあと私は、思いもよらない言葉を受けることになります。

この出来事を通して、「伝えた」と「伝わった」は同じではないと実感します。

確かに説明はあった、それでも私は、患者さんの言葉を否定しなかった

その日の朝9時、患者さんが歩行器を押しながら、詰所までゆっくり歩いて来られました。眉間には深いしわ。表情も険しく、いつもとは明らかに違います。

そして突然、

「退院は、いつになるんですか!」

と、強い口調で訴えられました。

「えっ……」

一瞬、頭が真っ白になりました。詰所の空気が一気に変わりました。以前、退院についてお話ししたことを思い出します。

「先日、お話ししたはずなのに……」

そう思った途端、緊張で胸がドクドクと高鳴りました。背中から汗が一気に噴き出すような感覚もありました。

「私の説明が悪かった?」
「何か気に障る言い方をした?」

頭の中を、さまざまな考えが駆け巡ります。

それでも、「先日説明しましたよ」と返すのは違うと思いました。説明したことを伝えるだけでは、患者さんが今感じている不安は解決しないと思ったからです。

私は動揺を隠しながら、

「まず、座ってお話ししましょう」

と声をかけました。

椅子のある場所まで一緒に移動します。落ち着いて話せるように、お茶を患者さんのコップに注ぎました。そして、ゆっくり話を聞くことにしました。心臓はまだバクバクしています。それでも表情だけは、できるだけいつも通りに。

「これぞ、白衣の女優……」

そんなことを、自分でも思いました。

患者さんが本当に知りたかったのは「退院の日」だけではなかった

座って話を聞いてみると、患者さんが求めていたのは、単純に退院日を知ることだけではありませんでした。

「この先、自分はどうなるのか」

「家に帰った後の食事や入浴は一人でできるのか」

そんな不安も抱えていたのです。

私はそこで、「この前、説明はしたのに」という考えをいったん横に置きました。

医療者にとっては、何度も経験する退院の説明です。しかし、患者さんにとっては、自分の生活に関わる大きな話です。

入院中は、初めて経験することも続きます。体が思うように動かない不安もあります。だから私は、説明した事実を証明することよりも、「何が不安なのか」を確認することを優先しました。

「どこが分からないのか」も一つずつ聞いていきました。

話を聞きながら、一緒に整理していく。すると、最初は険しかった患者さんの表情も、少しずつ変わっていきました。

あのとき「先日説明しました」と言っていたら、私は自分が説明したという事実を守れたかもしれません。でも、それでは患者さんが抱えていた不安は、置き去りになっていたと思います。

正しさを伝える前に、相手が何に困っているのかを知ることが大切なのだと学びました。

一体、何がすれ違っていたのか

この経験をしてから、私は退院についての説明を、今まで以上に丁寧に行うようになりました。

患者さんにとって、退院は「退院日が決まってから考えること」ではありません。

入院したその日から、「いつ家に帰れるのか」「元の生活に戻れるのか」と考え続けています。だからこそ、「説明したから大丈夫」と思って終わりにしないことを意識しています。

「そんなこと聞いていない」と言われたときも、すぐに「説明しました」と返さない。まずは落ち着いて話せる場所をつくり、不安や疑問を一つずつ聞いていく。

その言葉の奥にある「分からない」「不安」「もう一度聞きたい」という気持ちに向き合うことが、すれ違いを減らす一歩なのだと思います。

説明したのに伝わらない、そのときもう一歩考えてみる

「説明したはずなのに、伝わっていない」

これは看護師だけでなく、夫婦の会話や職場でも起こります。そんなときは、「何を伝えたか」だけでなく、「相手にはどう伝わっただろう」と一度立ち止まってみる。

説明の最後に、「ここまで聞いて、どう思いましたか?」と聞いてみるのも一つの方法です。

たった一言でも、「実はよく分かっていない」「そこは違うと思っていた」という認識のズレに気づけることがあります。

「伝えた」で終わらせず、「伝わった」までを意識する。その小さな一歩が、思わぬすれ違いを減らし、相手との関係を少しだけ優しくしてくれるのだと思います。


ライター:もな|病棟看護師・看護師ライター

「もしあの時、違う言葉を選んでいたら。」
看護師歴7年。急性期・整形外科、地域包括ケア病棟(混合病棟)、訪問看護を経験し、現在も看護師として勤務しています。看護師として7年間働く中で経験したリアルなエピソードを通して、技術だけではない「看護の本質」を言葉にしています。
医療者にとっては当たり前のことでも、患者さんにとっては初めてのことがある。そんな「すれ違い」に目を向けながら、読んだ方が少しだけ相手の気持ちを想像できるような文章を届けています。 


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