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朝ドラで見られた“型破り”な幕開け「ぴったり」「結構攻めてる」今聞いても面白い、脚本家の遊び心

  • 2026.8.28
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NHK連続テレビ小説『ひよっこ』第5回(C)NHK

NHK連続テレビ小説『ひよっこ』を語るうえで、忘れられないのが増田明美によるナレーションだ。第1回からいきなり自身の名前を名乗ったかと思えば、「朝ドラには変なおじさんがよく出てきますよね」と作品そのものにツッコミを入れることも。さらには途中から見始めた視聴者への呼びかけまで飛び出す。SNS上でも「ドラマにぴったりのナレーション」「結構攻めてる」と話題にのぼる、自由で、ときに攻めていて、それでもどこか温かい。“増田節”が生んだ名ナレーションを振り返る。

※以下本文には放送内容が含まれます。

開始早々、自己紹介?

2017年に放送された『ひよっこ』は、東京オリンピックを目前に控えた1964年から始まる物語。茨城県北西部の奥茨城村で育った谷田部みね子(有村架純)が、東京へ出稼ぎに出たまま行方不明になった父・実(沢村一樹)を探すことも兼ね、集団就職で上京する。

向島のラジオ部品工場で働き、倒産後は赤坂の洋食屋・すずふり亭へ。大きな夢を抱いて東京へ向かったわけではなかったみね子が、たくさんの人と出会いながら自分の居場所を見つけていく青春群像劇だ。

そんな『ひよっこ』の世界へ視聴者を案内してくれたのが、元マラソン選手で解説者の増田明美だった。

第1回、物語が始まって早々に聞こえてきたのは、「おはようございます。増田明美です」という自己紹介。これから半年間、声のお付き合いをしていくことを視聴者に直接伝えるという、なんとも自由な幕開けだった。

普通ならナレーションとは、物語の背後に存在するものだろう。登場人物が知らない事情を説明したり、時間の経過を補足したりする。しかし『ひよっこ』では、増田自身が名乗ってしまった。だからこそ、彼女の語りには不思議な親近感がある。

遠くからみね子の人生を俯瞰するというより、視聴者と同じ場所から見守っているように聞こえるのだ。まるで奥茨城やすずふり亭の人々を昔から知っている近所の人のように。

作品そのものにツッコむ大胆さ

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NHK連続テレビ小説『ひよっこ』第2回(C)NHK

そして『ひよっこ』のナレーションの魅力の一つは、ときどき驚くほど“攻めた”言葉が飛び出してくるところだ。その片鱗は、なんと第2回からすでに見えている。

みね子の叔父・小祝宗男(峯田和伸)が登場すると、増田は「朝ドラには、変なおじさんがよく出てきますよね」と語りかける。

宗男だけにツッコむのではなく、“朝ドラ”というジャンルそのものに言及してしまうメタさ。物語が始まってわずか2回目にして、画面の外にいる視聴者と一緒にドラマを眺めるような視点が飛び出した。

さらに第2週では、これまでの物語を振り返りながら「今週からでも大丈夫ですよ」と、新しく見始めた視聴者を迎え入れるような発言も。朝ドラはとくに、その長さから途中離脱や途中視聴も多い作品形態である。ナレーション自らが“まだ間に合いますよ”とでも言うように手招きしてくれるのは、視聴者にとってもありがたい。

そして極めつきは、増田自身の本編出演だ。

みね子たちが通う高校の体育教師・木脇先生として画面に登場したあと、ナレーションに戻ると「大変失礼いたしました」。自分で出演して、自分で謝る。この自由さには思わず笑ってしまう。

“増田節”が物語に馴染んだ理由

そもそも増田といえば、マラソン中継で披露する細かな選手情報でも知られる存在だ。

競技の展開だけではなく、選手の人柄が見えてくるような情報まで拾い上げる。そんな“増田節”は、『ひよっこ』にも見事に生かされている。

誰が何を思っているのか。どんな人物なのか。時には細かな豆知識まで添えながら、その人をもっと好きになるための情報をそっと渡してくれる。つまり『ひよっこ』における増田は、単なるナレーターというより、登場人物たちの実況解説者に近かったのかもしれない。

みね子が苦しいときには応援し、個性的な人物が現れれば一緒におもしろがる。視聴者が抱きそうな感情を少しだけ先回りして言葉にしてくれるから、画面のこちら側と物語の距離が縮まっていく。

そこには、脚本を手掛けた岡田惠和の遊び心もあるだろう。増田が読むからこそ成立するような言葉を随所に散りばめ、ナレーションまで物語の楽しみに変えてしまった。

今日はみね子に何が起こるのだろう。それと同じくらい、今日は増田さんが何を言うのだろう、と耳を澄ませたくなる。そんな“声の登場人物”がいたことも、『ひよっこ』を何度でも味わいたくなる理由のひとつなのだ。


連続テレビ小説『ひよっこ』毎週月曜〜金曜 午後0時30分放送
NHK ONE(新NHKプラス)見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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