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8月だからこそ味わいたい本格ホラードラマ… わずか“15分弱”で背筋が寒くなる、奇妙で不気味な物語

  • 2026.8.28
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ドラマ24『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』第6話(C)テレビ東京

蒸し暑い日が続く8月だが、こんな時は怖いドラマを観て、背筋が寒くなりたい。 そんな方におすすめしたいのが、現在放送中のオムニバスドラマ『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』(以下、『ストレンジ』)だ。

※以下本文には放送内容が含まれます。

本作はホラー漫画家・伊藤潤二の短編漫画をドラマ化したものだ。
謎の美少女・富江が、周囲の人間を翻弄し不幸に陥れていく『富江』シリーズや、ある町で起こるうずまきにまつわる怪奇現象や悲劇を描いた『うずまき』などの作品で知られる伊藤潤二の漫画は、どれも恐ろしく、細部まで丁寧に書き込まれた端正で美しい作画と、奇抜な着想によって構築された不気味でおぞましい物語が強烈で、一度読んだら忘れることができない。
今回の『ストレンジ』で映像化されたエピソードも、どれも不気味で観ているだけで背筋が寒くなる。

怪物の恐怖、世界の恐怖

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ドラマ24『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』第6話(C)テレビ東京

ドラマ内で描かれる恐怖は、怪奇現象を扱ったものが多いのだが、大きく分類すると怪物的な存在に襲われる恐怖を描いたものと、世界そのものがおかしくなっていく恐怖を描いたものがある。

第2話「いじめっ娘」は、結婚して5年になる栗子(真木よう子)が幼馴染の直哉(宮澤佑)と再会する場面から始まる。直哉と意気投合した栗子は子供の頃、直哉をいじめていたことを思い出す。どれだけいじめても直哉は栗子に懐いていたのだが、次第にいじめはエスカレートしていく。 直哉を追い込む幼い栗子の姿は怪物のようで恐ろしいのだが、大人になった栗子が普通の女性に成長し、過去のことを忘れていたことに一番ゾッとする。
過去の記憶が蘇った栗子がたどりついた結末は必見である。

一方、世界全体がおかしくなっていく恐怖を描いたのが、第3話「地縛者」。
ある日、日本各地で特定の場所に立ち尽くして動かなくなる人間が増えていく。彼らは「地縛者」と呼ばれ社会問題となっていた。 民間ボランティア団体に所属する浅野結衣(円井わん)は地縛者の支援活動を続けていたが、やがて彼らが地縛者となった原因を知ることになる。
まず何より、地縛者という奇抜なアイデアに圧倒される。彼らはゾンビのような存在だが、他の人に害を及ぼすわけではなく、ただその土地の前に立っているだけだ。その意味で被害者と言える哀れな存在なのだが、その風貌の不気味さゆえに周囲からは恐れられている。 こういう特殊なシチュエーションを作るのが伊藤潤二はとても上手いのだが、この異様な世界観をさらりと見せることで逆に不気味さを際立たせている。
やがて、ボランティア団体のリーダー・渡辺慎二(福山翔大)も地縛者となるのだが、なぜか結衣の自宅の中で立ち尽くしてしまう。その理由が判明する瞬間に本作の本当の恐怖が訪れる。

また、ホラーとしては古典的な話だが、それゆえ恐ろしさを感じたのが、第4話「あばら骨の女」だ。
女子大生のユリ(齊藤なぎさ)は兄の恋人・瑠璃子(小倉ゆうか)の腰のくびれに憧れており、自分の体型にコンプレックスを抱いていた。
ある日、瑠璃子は「弦の音が聞こえる」「あばら骨を取られる」と不可解なことを言うようになるのだが、数日後に彼女は命を落とし、あばら骨を失った姿で発見される。
その後、ユリの体形は変化し瑠璃子のように美しくなっていくのだが、やがて彼女にも弦の音が聞こえるようになる。
謎の力によって「あばら骨を取られる」という展開は恐ろしいが、ユリの中にある「憧れの女性と同じ存在になりたい」という欲望も、不気味で恐ろしかった。
この「憧れの女性と同じ存在になりたい」という欲望も伊藤潤二の作品には度々登場するモチーフで、第7話の「顔泥棒」も同じテーマを異なる切り口で描いた怪異譚となっていた。

短い話の2本立てだからこそ、恐怖が凝縮された第6話

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ドラマ24『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』第6話(C)テレビ東京

『富江』を筆頭に、美女が物語に絡むホラー漫画を伊藤は繰り返し描いているが、女性が抱える美醜にまつわる葛藤は恐怖と相性がいいのだろう。 第6話で放送された「記憶」を観て、それを強く感じた。
裕福な家で暮らす美女の里恵(中村里帆)は、鏡を見ながら自分の顔が美しいとうっとりしていたが、自分の過去の記憶の一部が抜け落ちていることに気付く。そして曖昧な記憶の中で浮かぶ醜い顔こそが本当の自分の顔ではないかと思うようになる。 その後、記憶にまつわる意外な真相が明らかとなるのだが、本当の自分は醜い存在ではないか? と怯える美女の感情が、何より恐ろしかった。

この第6話は2本立てだが、もう1つのエピソード「富夫・赤いハイネック」も短い尺だからこそ、斬新な切り口が印象に残った。
ある夜、まどか(伊礼姫奈)のアパートに、占い師と浮気したことが原因で別れた元恋人の富夫(杉田雷麟)が現れる。 富夫は頭部を両手で押さえ、実は自分の首は切れていると告白する。
浮気相手の占い師は実は魔女で、富夫の生首を欲しがっていた。
魔女の髪の毛で頭部を切断された富夫はなんとか頭を押さえてまどかの元にやってきたが、頭部は重く、一歩間違えると地面に落としてしまうという最悪の状況が描かれる。

第6話と第7話は2本立てで、1話15分弱という短さだが、だからこそ恐怖の衝撃がダイレクトに響く。
オムニバスドラマなので、どのエピソードから観ても楽しめるが、興味を持たれた方は、第6話の「富夫・赤いハイネック」と「記憶」から観ると作品世界に入りやすいのではないかと思う。 短いからこそ恐ろしい伊藤潤二の奇妙な世界を是非、味わってほしい。


テレビ東京系 ドラマ24『ストレンジ -伊藤潤二の夜も眠れぬ奇妙な話-』毎週金曜 深夜24時12分~

ライター:成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)、『坂元裕二論 未来に生きる私たちへの手紙』(blueprint)などがある。

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