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ベルリンで始動した「CHANEL Commission」第2弾、リナ・ラペリテの“生きたモニュメント”

  • 2026.7.28
© Lina Lapelytė. VG Bild-Kunst, Bonn 2026. photo: Staatliche Museen zu Berlin, Nationalgalerie / art/beats, Florian Mag

2027年1月10日まで、ベルリンのハンブルガー・バーンホフ現代美術館にて、リトアニア出身のアーティスト兼コンポーザー、リナ・ラペリテ(Lina Lapelytė)によるオペラ・インスタレーション『We Make Years Out of Hours』が開催されている。

本展は、シャネル・カルチャー・ファンドとハンブルガー・バーンホフが2025年から始動したアートプロジェクト「CHANEL Commission」の第2弾となる。シャネル・カルチャー・ファンドは、2021年に設立された現代アート・文化におけるグローバル支援プログラムであり、世界各地の文化機関と提携し、若手アーティストの支援を行うことを目的としている。

ハンブルガー・バーンホフは、1840年代に建てられたベルリンとハンブルクを結ぶ鉄道の終着駅舎の跡地だ。建築家ヨーゼフ・パウル・クライフスによって改装され、1996年に美術館としてオープンした。エントランスを抜けると、すぐ目の前に敷地面積2,500平方メートルの大ホールが広がり、「CHANEL Commission」の会場となっている。その先には6つのホールからなる、総面積1万平方メートルを超える展示エリアが広がる。

第2弾アーティストに選ばれたラペリテは、現在ヴィリニュスとロンドンを拠点に活動中。これまでに、パリのフェスティバル・ドートンヌ、ニューヨークのブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック(BAM)、ロサンゼルス現代美術館(MOCA)などで作品を発表してきた。2019年の第58回ヴェネチア・ビエンナーレでは、ヴァイヴァ・グライニテとルギレ・バルジュジュカイテと共同制作したオペラ・パフォーマンス『Sun & Sea』が金獅子賞を受賞し、国際的な評価を獲得している。

リナ・ラペリテ、ハンブルガー・バーンホフ現代美術館にて。 © Lina Lapelytė. VG Bild-Kunst, Bonn 2026. photo: Staatliche Museen zu Berlin, Nationalgalerie / art/beats, Florian Mag

『We Make Years Out of Hours』は、床一面に40万個の木製のキューブが敷き詰められ、高く積み上げられたり、壁のように連結されたり、まるで建築物のような形態が空間のいたるところに現れる。観客は木製キューブに触ったり自由に動かしたりすることができ、絶えず移動することによって、木のランドスケープは常に新たな形へと再構築されていく。

木製キューブはラペリテの母国リトアニアのトウヒとマツ材から作られており、10センチ四方にカットされている。ほんのりとした香りが空間に漂っている。なかには割れてしまったり、ひび割れているものもあり、人の手によって移動を繰り返しているうちに作品の素材自体も変化していく様子が感じられる。本作のテーマには「何が残り、何が失われていくのか」という問いが含まれ、また「何を建て、何を取り除くかを誰が決めるのか」、そして「その変化の重みを誰が背負うのか」という問題も提起している。

© Lina Lapelytė. VG Bild-Kunst, Bonn 2026. photo: Staatliche Museen zu Berlin, Nationalgalerie / art/beats, Florian Mag

また、会場内では、毎週火・木・土・日に、12人のパフォーマーたちによるコレクティブな合唱パフォーマンスが披露される。パフォーマーたちは観客に混ざり、音響とともに歌いながら木のキューブを移動させ、空間を変容させていく。レバノン出身の詩人カリール・ジブラン、作家・画家のエテル・アドナン、20世紀イランを代表する女性詩人で映画監督のフォルグ・ファロフザードら、20世紀初頭から現代までの15人の国際的な作家による詩をもとにした歌詞が歌われ、共同体、形成、愛、喪失、希望についての短い詩句が、本作のリブレット(歌詞台本)を構成している。

© Lina Lapelytė. VG Bild-Kunst, Bonn 2026. photo: Staatliche Museen zu Berlin, Nationalgalerie / art/beats, Florian Mag

彫刻とパフォーマンス、個人と集団の境界を越えながら変化し続ける本作は、時間、ケア、共生をたたえる“生きたモニュメント”として構想されている。観客が作品制作に直接関わるこの参加型形式は、ハンブルガー・バーンホフの開館30周年のテーマである「開かれたミュージアム」という理念を強調しているという。なお、使用されている木製のキューブは、2027年にドイツの都市アイゼンヒュッテンシュタットのパブリックアートプロジェクトの資材として再利用されることが決まっており、持続可能性が徹底されている。

シャネル・カルチャー・ファンドのアーツ・カルチャー&ヘリテージ部門代表を務めるヤナ・ピールは本展において、以下のステートメントを残している。

「19世紀には旅人たちが列車を目指して行き交ったハンブルガー・バーンホフの歴史あるホールを、リナ・ラペリテは『We Make Years Out of Hours』によって、多様な声が響き合う参加型の舞台へと変貌させました。来館者は単なる鑑賞者ではなく、音や動き、そして木製キューブを介した共同制作に参加することで、作品そのものの一部となります。一つひとつのキューブが積み上げられ、解体される過程は、未来をともに想像し、築き上げる営みを象徴しています。

『CHANEL Commission』は、広大な美術館のホールを、もっとも革新的なアーティストたちが新たな表現へと変容させるプロジェクトです。『CHANEL Culture Fund』は、文化を前進させるアイデアを育み、アーティストや文化機関を支援することを使命としています。ハンブルガー・バーンホフとの長期的なパートナーシップは、その理念を体現するものです。

テクノロジーの進歩によって、まるで数年が数時間に圧縮されたかのように世界が加速する今だからこそ、『We Make Years Out of Hours』は、立ち止まり、耳を傾け、人と人とのつながりを見つめ直すことの大切さを私たちに問いかけています。かつて駅だったこの場所で生まれるのは、一瞬の出会いではなく、分断された世界に連帯を呼びかける新たな体験なのです」

© Lina Lapelytė. VG Bild-Kunst, Bonn 2026. photo: Staatliche Museen zu Berlin, Nationalgalerie / art/beats, Florian Mag

2025年5月に始まった「CHANEL Commission」の第1弾には、チェコ出身の彫刻家クララ・ホスネドロヴァーが選出され、自身最大規模となるインスタレーションを発表して大きな注目を集めた。ハンブルガー・バーンホフで3年間にわたり展開される同プロジェクトは、若手アーティストに潤沢な制作予算を提供することで、通常の展覧会では実現が難しい大規模な新作の制作・発表を可能にし、その活動を国際的に広げる機会を創出している。



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