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「バイト代は財布ごと、渡しなさい」10代から続いた母の要求。だが、実家を出た私が取り戻したのは

  • 2026.7.29

初めてのバイト代を渡した日

高校生になって、初めてアルバイトを始めました。

ひと月ぶんの給料を封筒で受け取った日のことは、今でもよく覚えています。

家に帰って封筒を鞄から出すと、中を確かめる前に、母が横から手を伸ばしてきました。

「バイト代は財布ごと、渡しなさい」

財布ごと、というのは言葉のあやではありませんでした。

小銭入れもレシートも、まとめて渡すのが当たり前だという顔をしています。

「家族のために渡すのが、娘でしょう」

10代のあいだ、その言葉に逆らったことはありませんでした。

うちはお金がかかるのだと、小さい頃から聞かされて育ったからです。

20代まで続いた要求

渡し方は、社会人になっても変わりませんでした。

就職して給料が上がっても、母は当然のように手を差し出します。

「今月は、いくら入るの」

「私が、あんたのためにどれだけやってきたと思ってるの」

断ろうとすると、決まってこの一言が返ってきました。

母は意地悪で言っているのではなく、本気で、娘の稼ぎは家のものだと信じているようでした。

おかしいと気づいたのは、職場の同僚と昼食をとっていたときです。

毎月3万円を家に入れていると話すと、相手が箸を止めました。

「それ、全部お母さんに渡してるの?」

「就職してからずっとね」

「家賃を入れてるとかじゃなくて、給料をまるごと?」

驚いた顔で聞き返されて、私のほうが戸惑いました。

よその家では、そんなことはしていない。当たり前だと思っていたことが、当たり前ではなかったと、そこで初めて知りました。

一人の部屋で迎えた朝

その年の春、私は黙って部屋を借りました。母を責めたいわけではなく、自分の生活を一度、自分の手に戻したかったのです。

引っ越した朝、静かな部屋で目が覚めました。

台所に立って、自分で買ったカップにお湯を注ぎます。

財布を開けても、そこから抜かれていくお金はもうありません。

ひと月ぶんの給料が、まるごと私のものとしてそこにありました。

母とは、それから少しずつ疎遠になりました。怒鳴りあったわけでも、縁を切ると告げたわけでもありません。

ただ、静かに距離を置いただけです。

窓から朝の光が差し込んで、湯気の向こうで指先が温まっていきます。取り戻したのは、たぶんお金だけではありませんでした。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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