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「赤字10億円」でも救いたい命がある 日本最北の救命医療が選んだ『役割分担』とは

  • 2026.7.25

地方の医療を担ってきた公立病院が、いま危機に瀕しています。
『命の砦』をどう守っていくのか。北海道北部にある救命救急センターに密着しました。

連載「じぶんごとニュース」

名寄市立総合病院には、『日本最北』の救命救急センターがあります。

その現場に立つ、救急科の鮎田真佳医師はキャリア3年目。
「女性が草取り中に倒れた」との一報が飛び込みました。
ドクターカーに乗り込み、看護師とともに患者が待つ現場へ向かいます。

救命救急の現場では一刻を争います。
患者がいる場所で救急車と合流。すぐに救命救急センターに運び、処置に当たります。

鮎田医師は患者に「モノを運んでいたら、目の前真っ暗に?こうやって倒れたのは初めて?」などと問いかけながら状態を把握していきます。

その間にも、別の患者が運ばれてきました。医師や看護師ら、救命救急センターの医療スタッフは、速やかに対応を判断します。

四国4県分をカバー 約10億円の赤字で危機に

Sitakke

24時間365日。最北の救命救急センターには、年間約8000人もの患者が運び込まれます。

名寄市は人口2万4000人ほど。名寄市立総合病院は、道内6つのエリアに置かれた、高度医療を必要とする患者らを受け入れる『三次医療圏』の拠点病院です。

約300の病床を持ち、四国4県に匹敵する道北全域をほぼカバーしています。
ただ、地域医療を取り巻く厳しさは、ここも例外ではありません。

名寄市の加藤剛士市長は「10億円弱の赤字になりそうな見通し。この状況が、あと1~2年と続くともう病院は看過できないような厳しい状況になる。これは病院だけでなく、自治体の財政にも大きな影響を及ぼしかねない、危機的な状況」だと話し、危機感を募らせます。

「病院消滅」の現実

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名寄市立総合病院は2015年に救命救急センターに指定されました。
ドクターヘリの搬送受け入れや、ドクターカーも運用しています。
いつ、どこから、どんな患者が運ばれてくるのか、予測することはできません。

砂田大貴センター長は「救命救急なので、ここは電気や水道と同じインフラ。田舎でも当たり前に使えることが求められている」と話します。

『命の砦』である、高度な救命救急医療。
ところが、自治体が経営する病院にとっては大きな負担です。
いま全国の公立病院では、8割以上が赤字経営に陥っています。

北海道の太平洋側にある室蘭市では、2026年2月、市立室蘭総合病院の閉院を明らかにしました。

理由について、室蘭市の青山剛市長は「病院事業会計の経営状況は、数年の間に室蘭市が財政再生団体に転落する危機的な水準」と述べました。

診療報酬や薬価は公定価格で、病院の事情で値上げは許されません。
また、人口減少や高齢化による医療ニーズの変化、医師や看護師らの不足も深刻です。

『病院消滅』という事態が、地方では現実になろうとしています。

生き残りをかけた「役割分担」

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救命救急の現場で年間約8000人もの患者を受け入れる名寄市立総合病院は、どうやって『命の砦』を守るのか。もはや、待ったなしの状況です。

名寄市の加藤剛士市長は「生まれた地域によって『医療の格差』『命の格差』があってはならない。そこが公立病院の役割であり、使命」と断言します。

そこで選んだのが、隣町の士別市立病院との機能集約です。

救急や周産期医療などの『高度医療』が必要な患者は、三次医療圏の拠点である名寄市立総合病院が担当します。
士別市立病院は、リハビリなどの『回復期』の患者を中心に担います。
共倒れしないための取り組みです。

名寄市の和泉裕病院事業管理者は「急性期の色々な医療機器を必要とする患者は、人手も物もすごくかかる。慢性期の自分の家には帰れないが療養が必要な患者は、診療密度が少ないので医療従事者は少なくて済む。そこを分担する」と説明します。

また、地域の医療機関が役割を分けることで、薬や医療機器の共同購入など、公立病院の経営負担の軽減にもつながります。

このような取り組みは、オホーツクなどほかの地域でも始まっています。

「命の格差」がないように

診療報酬は、2026年6月1日に12年ぶりに引き上げられました。
しかし、引き上げ幅は約3パーセントで、病院の経営がすぐ立ち直るレベルでは当然ありません。

地方の医療機関は、地方で働く医療従事者の育成や、若い人材に来てもらう環境の維持なども考える必要があります。

『命の格差』を生じさせないために。
公立病院の現場では「やれることは全部やる」ーそんな模索が続いています。

連載「じぶんごとニュース」

取材・文:HBC報道部
編集:Sitakke読者編集部ぬまぬま

※掲載の内容は、HBC「今日ドキッ!」放送時(2026年6月1日)の情報に基づきます。

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