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大通りの工事日、疲れた客を乗せた迂回運転で伝え損ねた案内の話

  • 2026.7.28
ハウコレ

「大通りが混んでますので、少し裏を通りますね」走り出してすぐ、私は1度だけそう伝えたつもりでした。届いていたかどうかは、降車間際までわからないままでした。

無線の呼び出し音が3度続いたのは、駅前で客を乗せて信号を2つ越えたところでした。

駅前で乗せた、まぶたの重そうな客

スーツケースを抱えたお客さんが後部座席に乗り込んで、行き先を告げると、すぐにスマホの画面に目を落としました。まぶたが重そうで、あまり話しかけない方がいいと私は判断しました。無線から、大通り沿いで工事が始まって車線規制が入っているという連絡が入ったのは、信号を2つ越えたあたりです。

迂回の一言、届いていたかどうか

私はハンドルを右に切りながら、ミラー越しに「大通りが混んでますので、少し裏を通りますね」と告げました。返事はありませんでした。うなずいた気配もなく、お客さんはスマホを見たままです。聞こえていなかったかもしれない、と思いながら、走り出してしまえば説明のタイミングはもう戻ってきません。細い道を選びながら、私はメーターの数字を何度も横目で確かめていました。

ホテル前で、客が口にした引っかかり

駅前のホテルに着いて、料金を告げる直前、後部座席から少し遠慮がちな声がしました。

「あの、いつもよりだいぶ長かった気がして…」

私はメーターを1度確かめて、振り返りました。

「大通りで工事がありまして、遠回りに見えたかもしれませんね。すみません」

走り出す前に、もう1度はっきり伝えるべきだったのだと、そのとき初めて気づきました。

そして...

お客さんが降りたあと、私は運転席で領収書の控えをそろえながら、次に迂回することがあれば、返事が返ってくるまで待とうと決めました。案内は、こちらが言ったつもりでいるうちは案内にならないのだと、この日に教わりました。

(50代男性・タクシー運転手)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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