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会計を申し出た俺に、店員が告げた「お会計はもう頂いております」

  • 2026.7.25
ハウコレ

気の利く男を演じているつもりだった俺は、会計の場面で、自分が相手を何も見ていなかったと思い知らされます。

彼女が席を立ったあとも、店員の一言が耳から離れませんでした。店に着く前、俺はスマホのメモに並べた鉄板の質問を、最後にもう1度読み返していました。

会話は、教わった通りに始めたはずだった

文面のやりとりだけでは距離が縮まらないと、俺は先輩から何度も言われていました。だから会って早い段階で相手の恋愛の話に触れ、主導権を握るつもりでした。席に着いてすぐ「最後に彼氏いたのいつ?」と切り出したのも、その作戦の1つです。彼女が言葉を濁したので、場を持たせようと「そんなに前なんだ」と受けて笑いました。手応えは悪くないと、そのときの俺は思っていました。

褒めたつもりの言葉が、どれも上からだった

料理が来たとき「写真より顔タイプだったわ」と伝えたのは、素直な感想でした。よく食べる彼女に「意外とよく食べるね」と言ったのも、親しみのつもりでした。貯金や老後の話を振ったのは、将来を任せられる相手か確かめたかったからです。相手を値踏みしているということに、あのときの俺は気づいていませんでした。返事が短くなっていく彼女に、俺はメニューの端を意味もなく折り曲げていました。緊張がほぐれてきたのだろうと、都合よく考えていました。

席に戻った俺は、まだ何も気づいていなかった

手を洗って席に戻ると、彼女はもう帰り支度を始めていました。ここは奢って器の大きさを見せる場面だと、俺は店員を呼び出し「奢られたことなさそうだし、今日は俺が払ってあげるよ」と口にしました。ところが店員さんは、俺に「お会計はもう頂いております」と告げます。俺がトイレに立った間に、彼女が先に済ませていたのだと、そこでようやく飲み込めました。顔を上げると、彼女は会釈だけを残して店を出ていくところでした。奢る側に回れば格好がつくと思っていた自分の浅はかさだけが、伸ばした手の先に残っていました。

そして...

あの店を出てから、俺は自分の言動を振り返っていました。彼女の名前を1度も呼ばないまま終わった食事が、答えの全てでした。次に誰かと向かい合うときは、自分をよく見せようとするのではなく、自分の本心を見せるべきだと思いました。

(30代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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