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“感受性が強い”と言う人、「感覚が鋭い」わけではなかった

  • 2026.7.23
「自分は敏感」という感覚と実際の能力は異なる / Credit:Canva

周囲の音やにおい、光の強さが人一倍気になる人は、「自分は感受性が強く、普通より鋭い感覚を持っている」と思うかもしれません。

実際、刺激に敏感だと感じる人は、環境の細かな変化に気づきやすいと自ら答える傾向があります。

ところが、スイスのベルン大学(University of Bern)を中心とする研究チームが実際の感覚能力を測ったところ、感受性が強い人ほど弱い刺激を検出できるという証拠は得られませんでした。

では、本人が感じている「敏感さ」は、一体何を表しているのでしょうか。

研究は2026年5月15日付で学術誌『Journal of Research in Personality』にオンライン掲載されました。

目次

  • 「自分は敏感」という感覚と、実際の検出能力を比較
  • 「刺激を見つける能力」よりも「不快感の自己評価」と関連

「自分は敏感」という感覚と、実際の検出能力を比較

心理学では、刺激を深く処理し、刺激の多い環境で圧倒されやすいといった個人差を表す概念として、「感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity:SPS)」が提案されています。

一般に感受性が高い人(HSP)と関連づけられる概念ですが、今回の研究では参加者一人ひとりのSPS得点を測り、得点が高いほど実際の感覚能力も高くなるのかを調べています。

研究には19~43歳の女性150人が参加し、平均年齢は23.45歳でした。

参加者はまず、SPSを測るDOES ScaleとHighly Sensitive Person Scaleという2種類の質問票に回答しました。

質問票では、刺激に圧倒されやすい傾向、環境の細かな変化に気づくという自己認識、感情的な反応の強さなどが測定されます。

さらに、結果が一般的な性格傾向の影響を受けていないか確認するため、外向性と神経症傾向も調べています。

ここでいう神経症傾向とは、不安や心配、ストレスなどを経験しやすい性格傾向のことです。

続いて研究チームは、弱い刺激に初めて気づける「検出閾値」を、聴覚、温度感覚、嗅覚、身体の動きを検知する前庭覚おいて測定しました。

音量を変化させてどれほど小さな音まで聞き分けられるかを調べ、濃度を変えたにおいを嗅ぎ分ける実験や、腕の温度変化に気づく実験も行っています。

前庭覚の実験では、参加者を左右に動く装置へ座らせ、目隠しと雑音によって手掛かりを遮ったうえで、どちらへ動いたかを答えてもらいました。

また、音、光、熱をどの強さから不快または痛いと感じるかも測定しました。

なお、視覚について調べたのは弱い光を見つける能力ではなく、光を不快と感じ始める明るさです。

こうした実験の結果、SPS得点が高いとしても、その人は、小さな音、薄いにおい、温度変化、身体の動きを他の人より早く検出できるわけではありませんでした。

音や光を不快と感じる境目には一部で小さな関連が見られましたが、一貫した結果ではありませんでした。

では、感受性の強さと比較的はっきり関連していたものは何だったのでしょうか。

より詳しい結果を次項で見ていきます。

「刺激を見つける能力」よりも「不快感の自己評価」と関連

研究者たちは最初に、ある感覚が鋭い人は、他の感覚も鋭いのかを調べました。

もし感覚全般に共通する鋭さがあるなら、小さな音を聞き取れる人は、薄いにおいやわずかな温度変化にも気づきやすいはずです。

しかし、聴覚、温度感覚、嗅覚、前庭覚の検出閾値には、ほとんど一貫した関連がありませんでした。

感覚の鋭さは人全体に共通する1つの能力ではなく、感覚の種類ごとにかなり独立している可能性があります。

さらに、SPS質問票で高得点だった人も、4種類の検出閾値が低いわけではありませんでした。

質問票で「環境の細かな刺激に気づく」と答えた人でさえ、実験では弱い刺激を他の人より早く見つけられなかったのです。

一方、比較的はっきりした関連が見られたのは、刺激をどれほど早く不快と感じると思っているかという自己評価でした。

刺激に圧倒されやすいと答えた人ほど、音、光、熱を他の人より低い強さで不快に感じると自己評価していました。

ただし、こうした自己評価と実際に測定された閾値も、ほとんど一致していませんでした。

本人の評価と客観的な測定値の間で有意な関連が見つかったのは聴覚の疼痛閾値だけで、その関連も小さなものでした。

研究者たちは、SPSが基礎的な感覚検出能力よりも、刺激を主観的に経験し、不快なものとして評価する傾向を反映している可能性を指摘しています。

たとえば、2人が同じ音量のエアコン音を聞き取っていても、一方はすぐに背景音として無視できるのに対し、もう一方は音が気になり続けるかもしれません。

ただし、今回の研究には限界があります。

参加者は若い女性に限られ、実験では短く単純な刺激が使われました。

また視覚実験では150人中29人が最大の明るさでも不快感を示さなかったため、参加者間の差を十分に捉えられなかった可能性もあります。

それでも今回の結果は、「自分は感受性が強い。刺激に敏感だ」と感じることと、弱い刺激を実際に検出できることを同一視できないと示しています。

感受性の強さは、刺激を拾う能力よりも、受け取った刺激をどのように経験するかに表れるのかもしれません。

参考文献

Highly sensitive people don’t actually have sharper senses, study finds
https://www.psypost.org/highly-sensitive-people-dont-actually-have-sharper-senses-study-finds/

元論文

Sensory processing sensitivity (SPS) is not a sensory ability: Examining the relationship of SPS with objectively and subjectively measured sensory sensitivity
https://doi.org/10.1016/j.jrp.2026.104730

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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