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中学受験で人生は決まらない。やる気ゼロの子が中学で突然勉強し始めた、ちょっと希望のある話。

  • 2026.7.21

公開授業で、まさかの再会

「ぽにさん!こんにちは!」突然名前を呼ばれて振り向くと、そこには同じ会社で働く方が立っていて、私は思わず「えっ、なんでここに!?」と、かなり大きめの声を出してしまいました。その日は、家族でとある私立中学校の公開授業に来ていたのですが、関西でも偏差値が高いことで知られる学校だったため、我が家としては「せっかくだから一度見てみようか」という、半分は社会科見学のような気持ちで参加していたのです。当時、息子は小学5年生。まだ受験生というよりは、【これから本格的に受験モードに入っていく前の助走期間】といった時期で、親の私のほうが勝手に緊張していたように思います。お相手のお子さんも同じ5年生とのことで、「お互い受験ですね」「またどこかの説明会で会うかもしれませんね」と、立ち話をしながら笑い合い、最後は「頑張りましょうね」と言って別れました。あの時は本当に、それだけの出来事だったのです。数年後に、その“続き”を聞くことになるとは、夢にも思っていませんでした。

夏は天王山。でも予定表は、だいたい裏切られる

そして迎えた6年生の夏。受験界隈ではおなじみの、「夏は天王山」という言葉が、朝から晩まで耳に入ってくる季節です。塾からは大量の宿題と講習スケジュールが配られ、親は親で、「この教材をいつまでに終わらせて、過去問はここから始めて…」と、まるでプロジェクトマネージャーのように予定表を作り始めます。もちろん、我が家も気合い十分で、色分けまでした立派なスケジュール表を作成しました。今見返すと、あまりにも完璧すぎて、逆に笑えてきます。現実はというと、とにかく塾・塾・塾三昧。午前中に塾に行き、お昼ご飯も夕ご飯も塾で食べ、夜まで自習室へ。凄く頑張っているのですが、みんなも頑張っているので大して成績は上がっている感じはない。さらに、夏の疲れはじわじわと蓄積していくので、本人も親も、思っている以上に消耗します。それでも、「ここで踏ん張らないと」と、お互いを励ましながら、なんとか毎日の課題をこなしていました。受験生の夏というのは、キラキラした努力物語というより、地味な修行を淡々と積み重ねる日々に近かったように思います。

夏休みの終わりに、最難関が突然やってきた

そんな我が家の予定をひっくり返したのが、夏休みの終盤に参加した、塾主催の学校見学会でした。「ちょっと気分転換に行ってみる?」という軽いノリで訪れたのは、関西でも【最難関】と呼ばれる学校。正直なところ、その時点では受験校として考えておらず、「記念に見ておこう」くらいの気持ちだったのです。ところが帰り道、息子がぽつりと言いました。「ここ、受けてみたい。」…え? 今、なんと?さらに続けます。「もし受かったとしても、行くのは第一志望の学校。でも、小学生のうちに1回くらい、こういう学校に挑戦してみたい。」その瞬間、私の頭の中では、せっかく作った夏以降の計画表が、バラバラと音を立てて崩れていきました。いやいや、もう夏休み終わるよ? これから第一志望校の過去問を本格的に始めるタイミングだよ? そこに最難関対策を追加するの!? と、心の中では完全にパニックです。結局、予定よりもギアを一段階上げることになり、親子でヒーヒー言いながら問題集と向き合う日々が始まりました。あの時期、私は「受験生の母」というより、補給係兼メンタルトレーナー兼スケジュール管理係だった気がします。先日まで盛り上がっていたワールドカップでも良いトレーナーとして帯同できたのではないでしょうか。くらい。なかなかの仕事ぶりだったと思っています。

最後まで泣かされた国語と、直前の奇跡

特に苦しかったのが国語でした。算数は、解法がハマれば点数につながります。理科や社会も、覚えたことがそのまま武器になります。ところが国語だけは、「なんとなく分かった気がするのに、点が取れない」という状態がずっと続き、模試の結果を見るたびに、親子でどんよりした空気になっていました。本人も相当つらかったと思います。「読めているつもりなのに、答えがずれる」という感覚は、努力が成果に結びついている実感を持ちにくいですからね。ところが、本当に不思議なことが起こりました。受験の一週間前、それまで苦戦していた文章問題に、急に対応できるようになったのです。設問の意図をつかむスピードが上がり、記述も以前よりまとまるようになっていました。親から見ると、まるで神様が「そろそろ間に合わせてあげるか」とスイッチを入れてくれたような感覚で、「え、今!?」と驚くばかりでした。もちろん、それまで積み重ねてきたものがあったからこその変化なのでしょうが、受験には時々、こういう理屈では説明しにくい瞬間があります。そして迎えた本番。息子は、ずっと憧れていた第一志望校に合格しました。発表を見た瞬間の、あのふわっと力が抜ける感覚は、きっと一生忘れないと思います。なお、最難関校の結果については…その話を始めると長くなるので、また別の機会に。

第一志望に受かっても、人生は普通に続いていく

現在、息子は憧れていた学校に通っています。毎朝制服を着て出かける姿を見るたびに、「本当に行きたかった学校に通えているんだな」と、親として嬉しく思います。ただ、ここで声を大にして言いたいのですが、第一志望に合格したからといって、急に人生がバラ色になるわけではありません。入学してすぐに入った部活が思っていた雰囲気と違い、「退部したい。でも先生に言いづらい」と悩み始めたり、友達との距離感に戸惑ったり、思春期らしいモヤモヤが次々と出てきます。勉強面も同じです。周囲はみんな、中学受験という長い戦いを乗り越えてきた猛者たち。小学校では上位だった子でも、中学では真ん中、あるいはそれ以下になることも珍しくありません。課題をきちんと出して、授業を理解して、復習を怠らない。そんな当たり前のことを積み重ねないと、あっという間に置いていかれそうになります。つまり、中学受験はゴールではなく、新しいステージへの入場券に過ぎなかったのだと、入学してから痛感しました。親のほうが、「合格したら少しは楽になるかも」なんて、勝手に期待していたのかもしれません。

数年後の再会で聞いた、まさかの後日談

そんなある日、冒頭で公開授業でお会いした会社の方と、久しぶりにゆっくり話す機会がありました。「そういえば、お子さん、今どうされています?」と聞いてみたところ、思わず前のめりになるようなお話が返ってきました。実はそのお子さん、6年生になっても最後まであまり受験勉強に積極的ではなかったそうです。中学受験はしたい。でも、自分から机には向かわない。親が声をかけても、なかなかスイッチが入らない。そんな状態が続いていたとのことでした。最終的には、あの偏差値の高い学校は受験せず、通学しやすい中堅校を受験し、無事に合格。そして春からその学校に通い始めました。ここまでは、よくある話かもしれません。でも驚いたのは、その後です。なんと中学に入学した途端、別人のように勉強し始めたというのです。毎日自分から机に向かい、課題をどんどん進め、親が「あなた、中学受験の時より勉強してない!?」とツッコミたくなるほどの熱心さだったそうです。周囲には、中学受験で燃え尽きてしまい、入学後しばらく勉強モードに戻れない子も少なくない中、そのお子さんはむしろここからが本番と言わんばかりに走り出したのだとか。親御さんは笑いながら、「あと半年早くそのスイッチが入っていたら、違う学校に行っていたかもしれないけど、でもこれがこの子らしいんですよね」と話してくださいました。なるほど。いろんなタイプがいらっしゃる!

合格のその先にある、それぞれの物語

中学受験をしていると、どうしても「合格したか、しなかったか」に意識が集中します。模試の判定に一喜一憂し、偏差値の1ポイントに振り回され、「この学校に入れれば幸せになれる」と思い込んでしまうこともあります。でも実際には、合格した後にも、それぞれの物語が続いていくのです。第一志望に進んで充実した毎日を送る子もいれば、入学後に壁にぶつかる子もいる。受験では思うような結果が出なかったけれど、中学で自信をつけて大きく伸びる子もいる。子どもの成長のタイミングは、本当に人それぞれで、親が「今だ!」と思う瞬間と、本人のスイッチが入る瞬間は、見事なくらいズレることがあります。だからこそ、今まさに夏休みを前にして、不安でいっぱいになっている受験生のご家庭に、そっとお伝えしたいのです。もちろん、夏は大事です。やるべき課題には、しっかり取り組んで頂きたいです。でも同時に、熱中症や睡眠不足、親子のメンタルの消耗にも、どうか気を配ってください。そして、「第一志望に受からなかったら終わり」と思い詰めすぎなくても大丈夫です。中学受験が終わった時点が、人生の幸福度のピークではありません。そこから先に、部活があり、友達ができ、悩みがあり、成長があります。ちなみに、中学に入ったら入ったで、「え、夏休みの宿題こんなにあるの!?」と親子で再び白目になる可能性も十分ありますので、そのあたりはぜひ、未来の自分への伏線として覚えておいていただければこれ幸い。受験の天王山を越えた先にも、子どもたちの道はまだまだ続いています。親としては、先回りして全部整えてあげたくなりますが、最後はやはり、子ども自身が自分のタイミングで歩き出すしかないのだなと、数年越しの再会を通して、改めて感じたのでした。ではまた!

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