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完璧なはずの女装を見破ったのは小さな少女だった。父親を探し続ける彼女との出会い、そして「匂い」が紡ぐ、笑って泣けるドタバタコメディ!【書評】

  • 2026.7.20

【漫画】本編を読む

目に見える姿や言葉はいくらでも繕えるけれど、どうしてもごまかせないものがある。それは「匂い」だ。『匂いが嘘をつかない世界で』(ねこてぃ!/KADOKAWA)は、ケモノたちが暮らす世界を舞台に、秘密を抱えた青年と純粋な少女が織りなす、ちょっと切ないドタバタコメディだ。

主人公・レントは、大手商社に勤めるエリート社員。仕事も身だしなみも完璧で、周囲からは羨望の眼差しを受けていたが、そんな彼には誰にも言えない秘密があった。それは、女装趣味があること。外見や所作はもちろん、まとう香りにも徹底的にこだわり、完璧に隠し通してきたはずだった。ところが、そんな彼の秘密を「匂い」だけであっさりと見抜いた者が現れる。それは、どこか抜けているようでポヤポヤとした雰囲気をまとった少女・ルウだった。

人一倍鼻が利くルウに趣味を見破られ、最初は動揺するレントだったが、距離が縮まるにつれて彼女の切ない過去を知ることになる。ルウは幼い頃に両親を亡くしており、父親が毎日飲んでいたコーヒー豆の匂いを、今も探し求めているのだ。それを聞いたレントはいつしか、「彼女を支えたい」と思うようになっていく。

「匂い」という目に見えない要素がテーマになっているこの物語を読んでいると、1ページ1ページから香りが漂ってくるような感覚になる。どんな香りなんだろうと想像が膨らんでいくのも本作の大きな魅力である。

基本はテンポの良いドタバタコメディでありながら、キャラクターたちの感情があふれ出す場面には、思わず胸を突かれる。父親の記憶につながるコーヒー豆の匂いを、金を惜しまず追い求めるルウと、彼女のために商社勤めで培った人脈を頼って豆探しを手伝うレント。ふたりの姿から、かわいらしい絵柄ながらもその奥にある熱さが伝わってくるのだ。

ふたりの関係が、匂いを通じてどう変化していくのか。もふもふな世界の中で描かれる、不器用で温かい絆に心をつかまれる作品だ。

文=ゆくり

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