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眠れる獅子ならぬ“眠れる高級ミニバンの元祖”覚醒なるか?

  • 2026.7.17

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第479回)

■控えめに、しかし満を持して……、横浜で開かれた「新型エルグランド」発表会

7月16日午前、横浜市の日産本社ギャラリー。メインステージには鮮やかな白とブロンズのような輝き……、2台の「新型エルグランド」が鎮座していました。

16年ぶりの刷新 四代目となった新型エルグランド(右は杉本全執行職)

日産自動車の高級ミニバン、エルグランドの新型はすでに昨年秋のジャパン・モビリティショーで参考出品としてお目見えしています。当時、イヴァン・エスピノーサ社長は「厳しい状況の中でも、日産は大胆に、より良い未来をつくるべくまい進している。国内市場で成果を出すことが肝心だ」と決意を語っていました。

あれから8カ月あまり、日産本社で満を持して発表会が開かれました。新型は四代目、動力源は第三世代となる日産独自のハイブリッド「ePOWER(イーパワー)」、発電専用のエンジンは1500cc。燃費はガソリン車のみだった旧型から大幅に向上し、16.8km/lになりました(WLTCモード 国土交通省審査値)。これに電動の四輪駆動「e-4ORCE(イーフォース)」、電子制御サスペンションの各電動化技術を日産車として初めて組み合わせました。「e-4ORCE」と電子制御サスペンションはGT-Rの技術が生かされているということです。

左上:すっきりとした上品な運転席周り右上:コンソールにはリアル感ある木目調パネルが左下:オットマンを装備 くつろぎを演出する二列目シート右下:国内ミニバン初のシート後部に設置されたモニター(オプション)

「まるでレールの上を走るような滑らかな移動体験こそが、新しいプレミアムミニバンの価値になる。日産の成長をけん引する重要なモデルと位置付けている」

日本市場担当の杉本全執行職はエルグランドの特徴をこのように表現しました。

デザインも「リニアモーターカー」をイメージ。運転する楽しさと「もっと乗っていたい」と乗員全員が思えるクルマを目指したといいます。

電子制御サスペンションは減衰力が路面に応じて変化し、フラットな乗り心地に寄与します。発表会では「本も読めそう」という話もありました。通常、クルマの中で走行中に本を読めば酔ってしまいそうですが、これが本当ならば大きな価値だと思います。試乗で確かめてみたいものです。

会場には歴代エルグランドが勢ぞろいした

■初代のヒットから約30年、ライバルに席巻された「高級ミニバン」市場

エルグランドは初代が1997年にデビュー。車名は当初キャラバン、ホーミーのサブネームの扱いでした。商用ワンボックスカーをベースにしたワゴンとは一線を画して高級ミニバンの市場を切り開き、月販1万5000台を超える大ヒット。折りしも当時の日産は2兆円の有利子負債を抱えるなど「青息吐息」の状況で、マーチ、セフィーロとともに数少ない売れ筋車種として日産の業績に貢献しました。

しかし、例によってトヨタ自動車が遅れてアルファード(+ヴェルファイア 以下アルヴェル)を投入、いつの間にか高級ミニバン代表のお株を奪っていきました。対して、これまた「日産あるある」で、二代目以降は初代の人気を維持できずに存在感は低下します。2010年に登場した三代目はFFに衣替えして、捲土重来を期したものの、実に16年もの長きにわたって生産され続けました。アルヴェルはこの間に2回のモデルチェンジを敢行し、商品力を上げる中、エルグランドは細かな改良はあったものの、いわば「棚ざらし」状態でした。「眠れる獅子」ならぬ「眠れる高級ミニバンの元祖」、16年の歳月はライバルから大きく水を開けられるに十分な時間で、2025年は「アルヴェル」合計で月平均1万台近くを売り上げたのに対し、エルグランドは年間販売台数がアルヴェルの1か月分にも満たない1400台あまりにとどまっています。

今回の新型が、アルヴェルにどれだけ対峙できるか気になるところですが、幅広い車種展開のほか、「残クレアルファード」という流行語を生みだしたように、残価設定ローンなどのきめ細かい販売戦略で強固なブランドを構築したアルヴェルを凌駕するのは生易しいことではなさそうです。

価格はエルグランドがすべて四輪駆動のハイブリッドで689.7~757.9万円(基本車種のXとGのみ)。アルファードはガソリン車からハイブリッド、プラグインハイブリッドに二輪駆動・四輪駆動と幅広い展開で、最も安いのは559.9万円。単純比較はできませんが、エルグランドに相当する車種は581.9~661.98万円(四輪駆動・ハイブリッド)となっています。関係者によれば、発売前の受注は法人含め、6000台を超えて好調な状況。月販目標台数は明らかにしていませんが、価格競争から距離を置きながら、アルヴェルにない魅力をどう浸透させるかがカギとなります。

大ヒットした初代エルグランド

■控えめな見た目に中身で勝負、「上品路線」は貫けるか

昨今の高級ミニバン市場は、メッキグリルなどで派手に加飾された、いわゆる「オラオラ系」が主流。アルヴェルもその例に漏れないのですが、今回のエルグランドはメッキ部分を控えめにし、フロントグリルは日本の伝統工芸である「組子」をモチーフとした上品な表情をたたえていました。関係者は「いま存在するギラギラした車には乗りたくない」層をターゲットとしたと話します。ライバルとは違う個性を主張しています。

実際に乗ってみると、2画面の大型液晶ディスプレイで構成されるインパネは、ごちゃごちゃしておらず、すっきりした上品な印象です。インパネ表面やドアトリムは柔らかな素材、黒の木目調パネルは、シボの形状などをCGで調整したということで、上質感を演出していました。助手席、二列目シートはオットマンも装備され、なるほど落ち着ける空間になっています。

思えば、日産はかつて、こうした「上品路線」に挑戦したことが何度かありました。初代レパード、四代目ローレル、インフィニティQ45などはメッキ部分を極力排して独自の高級感を主張し、評論家からは高い評価を受けていました。しかし、市場の反応はいまひとつで、後の改良? でメッキ部分がどんどん増えていった経緯があります。

今回の上品路線は開発チームの中で議論の上で決められたものでしょう。どんな結果になろうと初志を貫き、この路線を育てていってほしいものです。

四代目は復権なるか

一方、車種については、基本は量販グレードのXと上級グレードのGのみ(価格は前項参照)。カスタムカーを手がけるオーテックなどの仕様はあるものの、旧型にあったハイウェイスターは廃止。豪華仕様のVIPも7人乗りのみで贅沢な4人乗りは存在せず。やや寂しさを感じます。

「何でもいいから高いものを持ってこい!」という富裕層は多くはないものの確実に存在します。実際、アルファードには1000万円を超える超豪華仕様もラインナップしています。エルグランドはエスピノーサ社長ほか日産の役員も乗るそうで、フラッグシップを担うクルマならば、イメージリーダーとして、華やかで夢のあるグレードもあっていいのではないかと思います。関係者にこの点を質したところ「要望があれば、マーケットの状況をみながら考えていきたい」と話していました。将来に期待ということでしょうか。前述の発売前受注台数6000台のうち、約9割は上級グレードのGとのこと。さらに上を欲している層も確実にあると推察します。なお、日産が推し進めているのが2027年度までにAIを活用した次世代自動運転技術の導入。将来的にはエルグランドにも採用されることが想定されます。

メインステージわきには初代からのエルグランドも展示。発表会では開発スタッフの直筆メッセージも紹介されていました。目についたのが「King is back!」の文字。その情熱は伝わってきます。はたして「高級ミニバンの元祖」が覚醒し、「日産ブランド復権の象徴」(関係者)となっていくのか注目です。

(了)

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