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毎日1分、深呼吸を続けると体と心はどう変わる?【1週間~1ヶ月の変化】

  • 2026.7.17

「深呼吸すると落ち着くよ」とよく言われますよね。

緊張したときやイライラしたとき、思わず大きく息を吸って吐く――そんな何気ない深呼吸ですが、実は心と体の仕組みに基づいたセルフケアのひとつです。

精神科医・心療内科医の飯島 慶郎先生によると、深呼吸は「吸う」ことよりも「吐く」ことが大切なのだそう。

毎日1分ほど続けることでどのような変化が期待できるのか、1週間・2週間・1ヶ月の目安や、効果を高めるやり方を紹介します。

なぜ深呼吸は心と体にいい?

カギは、自律神経にあります。私たちの体には、活動するときに働く「交感神経(アクセル)」と、休息するときに働く「副交感神経(ブレーキ)」があり、この2つが状況に応じてバランスを取りながら、心拍や呼吸などを調整しています。

しかし、自律神経そのものを自分の意思で動かすことはできません。たとえば、「心臓よ、もっとゆっくり動いて」と思っても、心拍数を自由にコントロールすることはできないでしょう。

ところが、呼吸だけは例外です。呼吸は無意識でも続きますが、自分の意思で速さや深さを変えることができます。つまり呼吸は、自律神経に意識的に働きかけられる数少ない入り口なのです。

実際、これまでの研究をまとめて分析した「系統的レビュー」[1]では、1分間に10回を下回るようなゆっくりした呼吸は、副交感神経の働きを高めるだけでなく、心地よさや落ち着き、活力を高め、不安や緊張、いらだちを和らげる可能性があると報告されています。

毎日1分、深呼吸を続けると体と心はどう変わる?

※変化の現れ方には個人差があります。

1週間|呼吸で気持ちを切り替えやすくなる

深呼吸を毎日続けると、まずは「呼吸を整えると気持ちが落ち着く」という感覚をつかみやすくなります。

飯島先生によると、診療でも1週間ほど続けるうちに、「呼吸で落ち着ける感覚」を実感し始める方が多いそうです。

実際、223件の研究をまとめた解析[2]では、ゆっくりした呼吸は行っている最中だけでなく、終わったあとも副交感神経の働きを示す指標が高まることが報告されています。緊張した場面でその場の気持ちを立て直す方法として、深呼吸は即効性のあるセルフケアといえるでしょう。

毎日深呼吸を続けることで、自律神経を整えるきっかけとして呼吸を使う感覚が少しずつ身についていきます。

2〜3週間|ストレスを感じたときに深呼吸を活用しやすくなる

2〜3週間ほど続けると、ストレスや緊張を感じた場面で、自分から深呼吸を取り入れられるようになる人もいます。

イライラしたときやドキドキしたとき、焦ったときに、まず呼吸を整えるという行動が自然と選択肢に入るようになり、気持ちを切り替えやすくなるでしょう。

呼吸を整えることで、自律神経を落ち着いた状態へ導くきっかけを自分で作れるようになってきます。

1ヶ月|自律神経を整えるセルフケアとして習慣になる

1ヶ月ほど続ける頃には、深呼吸を行うタイミングが自然と決まり、生活の一部になってくる人もいます。

朝起きたときや歯磨きのあと、電車に乗る前・会社に入る前など、毎日の行動や緊張する場面とセットにすることで習慣化しやすくなるでしょう。

続けているうちに、ストレスや緊張を感じたときに深呼吸を自然と取り入れられるようになり、気持ちを切り替える「安心スイッチ」として活用しやすくなるでしょう。

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次:深呼吸で期待できる4つの効果

深呼吸で期待できる4つの効果

呼吸は、自律神経に意識的に働きかけられる数少ない方法のひとつです。深呼吸によりどんな効果を期待できるのか、見ていきましょう。

1. リラックスしやすくなる

深呼吸をすると「ホッとする」と感じるのは、気分の問題だけではありません。ゆっくり息を吐くことで、副交感神経が働きやすくなり、心拍数や体の緊張がゆるみやすくなります。

近年の「系統的レビュー」でも、ゆっくりした呼吸は副交感神経の働きを高め、不安やストレスを和らげる可能性があると報告されています。

2. 集中しやすい状態をつくる

ゆっくりとした深呼吸は、リラックスするだけでなく、頭の中を整理し、集中しやすい状態をつくることにも役立ちます。

ある研究[3]では、8週間にわたり腹式呼吸を続けたグループは、ストレスホルモンであるコルチゾールの値が低下し、集中力を必要とする課題の成績が向上したほか、後ろ向きな気分も減少しました。

気持ちを落ち着かせるだけでなく、集中したい場面でのコンディションづくりにも役立つ可能性があります。

3. ネガティブな気分を切り替えやすくなる

ストレスや不安を感じると、呼吸は浅く速くなりがちです。そんなときにゆっくり深呼吸をすると、一度呼吸へ意識を向けることで、気持ちを切り替えるきっかけになります。

実際に、ゆっくりした呼吸について複数の研究をまとめたレビューでは、不安や緊張、いらだちなどのネガティブな気分が和らぎ、心地よさや活力が高まる可能性が示されています。

4. 自分の心の状態に気づきやすくなる

ストレスや不安を感じているときは、呼吸が浅く速くなっていることが少なくありません。

深呼吸を習慣にすると、呼吸へ意識を向ける時間が生まれ、「今、自分は緊張しているな」「少し疲れているな」と、自分の心や体の状態に気づきやすくなります。

こうした小さな気づきは、無理をしすぎる前に休息を取るきっかけにもなるでしょう。

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最新研究でも「ゆっくりした呼吸」に注目

では、どれくらいの時間から効果が期待できるのでしょうか。

スタンフォード大学の研究[4]では、参加者に1日5分の呼吸法を1か月続けてもらい、呼吸に意識を向ける瞑想法(マインドフルネス瞑想)と比較しました。

その結果、最も気分の改善が大きかったのは、「吐く息を意識的に長くとる呼吸法」だったと報告されています。

1日5分。研究として効果が確かめられている時間としては、これがもっとも短い部類です。

一方、飯島先生は診療で「まずは1分から始めましょう」と勧めています。

「ゆっくり長く吐く呼吸を1分続けるだけでも、肩の力が抜け、気持ちが落ち着いてくるのを実感する方は多い」と話します。

無理に長時間続けようとするよりも、まずは1分から始め、少しずつ習慣にしていくことが大切です。

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次:効果を高める深呼吸のやり方

効果を高める深呼吸のやり方

深呼吸は、ただ大きく息を吸えばよいわけではありません。飯島先生は、「吸う」よりも「吐く」ことを意識するのがポイントだと話します。

STEP1 肩の力を抜き、まずは息を吐く

まずは楽な姿勢になり、肩の力を抜きます。そして、口(または鼻)からゆっくりと息を吐きましょう。

しっかり吐き切ることで、吸う息は自然と入ってきます。

STEP2 鼻からゆっくり息を吸う

鼻からゆっくり息を吸い、お腹がふくらむのを感じます。肩や胸を持ち上げるのではなく、お腹が風船のようにふくらむイメージです。

時間の目安とポイント

目安は、吸う:4秒、吐く:6〜8秒です。吐く時間を少し長めに意識すると、副交感神経が働きやすくなります。

秒数にこだわりすぎず、「心地よい」と感じるペースで行いましょう。

深呼吸で初心者がやりがちな間違い

初心者が特にやりがちなのは、次のような呼吸です。

・大きく吸おうと頑張りすぎる
・肩や胸を持ち上げてしまう
・秒数を意識しすぎて苦しくなる

大切なのは、「たくさん吸う」ことではなく、「楽に、ゆっくり吐く」ことです。

深呼吸の時間・頻度・続けるコツ

深呼吸は1日何分、何回やればいい?

回数に決まりはありません。飯島先生は、まずは1回1分程度(5~6呼吸)を目安に始めることを勧めています。

これまでの研究をまとめて分析した「系統的レビュー」[5]では、1分間に6回程度(1呼吸約10秒)のゆっくりした呼吸が、自律神経に働きかけやすいペースとされています。

これは、ブランコをタイミングよくこぐと、小さな力でも大きく揺れるように、体のリズムと呼吸のリズムが重なることで、心身の反応が高まりやすくなるためです。

慣れてきたら、ストレスを感じたときや気分を切り替えたいときなど、必要に応じて取り入れてもよいでしょう。

深呼吸を毎日続けるコツ

例えば次のような毎日の習慣や場面と組み合わせると、続けやすくなります。

・朝起きたあと
・寝る前
・仕事や家事の合間
・ストレスを感じたとき

「このタイミングで深呼吸」と決めておくと、忘れずに継続して取り入れられます。

深呼吸は朝・夜どちらがおすすめ?

朝は、1日を始める前に呼吸を整える時間としておすすめです。

一方、夜は副交感神経が働きやすくなるため、リラックスした状態で眠りにつきたい人に向いています。

また、イライラしたときや緊張しているときなど、ストレスを感じたタイミングで取り入れるのもおすすめです。

なお、食後すぐは腹式呼吸で苦しく感じることがあるため、少し時間を空けて行うとよいでしょう。

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次:深呼吸をするときの注意点とデメリット

深呼吸をするときの注意点とデメリット

深呼吸は正しく行えば安全性の高いセルフケアですが、やり方によっては体調を崩すこともあります。安心して続けるために、知っておきたい注意点やデメリットを確認しておきましょう。

深呼吸をやりすぎるとどうなる?

大きく速く息を吸いすぎると、過換気(一般的には「過呼吸」と呼ばれる状態)になることがあります。

血液中の二酸化炭素が減りすぎることで、次のような症状などが起こることがあります。

・めまい
・手足や口の周りのしびれ
・動悸

深呼吸は回数を増やすこと自体が問題なのではなく、大きく速く息を吸いすぎることが負担になります。正しい方法でゆっくり行えば、大きな副作用はほとんどありません。

無理をせず、「楽に、ゆっくり」を意識しましょう。

深呼吸だけで不調を改善しようとしない

深呼吸はセルフケアとして有効ですが、強い不安や不眠、気分の落ち込みなどが続く場合は、背景に治療が必要な病気が隠れていることもあります。

症状が長く続く場合は、医療機関へ相談しましょう。

深呼吸でよくある質問

深呼吸だけでダイエットできますか?

いいえ。深呼吸だけで脂肪が燃えたり、体重が減ったりすることは期待できません。

一方で、深呼吸によってストレスや緊張を和らげたり、気持ちを切り替えたりすることは期待できます。こうした心身のコンディションづくりが、結果として運動や健康的な生活習慣を続けやすくする一助になる可能性はあります。

腹式呼吸でないと意味がありませんか?

「腹式呼吸でなければ意味がない」というわけではありません。

深くゆったりとした呼吸を行いやすいため、基本は腹式呼吸がおすすめです。ただし、胸や肩に力を入れず、ゆっくり息を吐くことを意識できていれば、過度に腹式呼吸にこだわる必要はありません。

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参考文献
[1] Zaccaro A, et al. How Breath-Control Can Change Your Life: A Systematic Review on Psycho-Physiological Correlates of Slow Breathing. Front Hum Neurosci. 2018;12:353.
[2] Laborde S, et al. Effects of voluntary slow breathing on heart rate and heart rate variability: A systematic review and a meta-analysis. Neurosci Biobehav Rev. 2022;138:104711.
[3] Ma X, et al. The Effect of Diaphragmatic Breathing on Attention, Negative Affect and Stress in Healthy Adults. Front Psychol. 2017;8:874. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.00874
[4] Balban MY, et al. Brief structured respiration practices enhance mood and reduce physiological arousal. Cell Rep Med. 2023;4(1):100895.
[5] Sevoz-Couche C, Laborde S. Heart rate variability and slow-paced breathing: when coherence meets resonance. Neurosci Biobehav Rev. 2022;135:104576.

監修者プロフィール

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科 出雲いいじまクリニック 院長 飯島慶郎(いいじま・よしろう)

■公式サイト https://sites.google.com/view/izumo-iijima-clinic

■著書情報
『不登校は病気?〜医師の診断が子供と家族を救う〜』

著者:飯島慶郎(いいじまよしろう)/イラスト:わさび
出版社:みらいパブリッシング(健康・医療のフロントラインシリーズ)
発売日:2026年1月27日
判型:四六判・224ページ・ソフトカバー
価格:1,870円(税込)
ISBN:978-4-434-37267-4

心療内科医、臨床心理士、総合診療医、内科医、漢方医、産業医など、マルチドクターとして活動。得意とする分野は「心身症・不定愁訴」に対する漢方薬・向精神薬・心理療法・ケースワークを統合した総合的対人援助。心身の軽微な不調を入口にクライアントの「人生そのもの」を癒やすことを実践。近年は特に不登校診療に特化し、多くのこどもたちを改善に導いている。

<Edit:編集部>

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