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山田洋次が選ぶ、日本の名作映画100本

  • 2026.7.17

かつてNHK BSプレミアムで放送される番組のために、山田洋次さんが日本の名作100本を選んだことがある。「家族」と「喜劇」で50本ずつ。まさに監督・山田洋次を表すこの2つのキーワードについて、改めて語っていただいた。

text: Ryota Mukai

映画監督・山田洋次
BRUTUS

「奇跡は起きる。だから人生は捨てたもんじゃない」

90年以上前の古典から、黒沢清監督作の『トウキョウソナタ』など近年の作品まで揃う「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本」。選定の軸となった「家族」と「喜劇」は、監督にとってどういう存在なのだろう。尋ねると、この2つの言葉を鉛筆で紙に書き、それを見つめながら考えた後、こう語ってくれた。

「寅さんというのは家族の喜劇だよね。例えば、僕らは忌野清志郎の歌や声、ライブを通して“彼はこういうことを言いたかったんだな”と感じる。文学者も画家も同じで、表現したいことは作品そのものにしかない。僕も、スクリーンを観て笑ったり、涙ぐんだりしてもらえるような映画を作りたかった。それだけなんだよ。

だから“何を言いたかったんですか?”と聞かれても、“寅さんということを言いたかった”としか言えない。清志郎が歌い、大セザンヌが絵を描くように、僕は映画を作ってきた。集団芸術だから、俳優がいて、何十人ものスタッフがいて、キャメラマンがいて、照明技師がいて、みんなの力で作り上げる。僕は棟梁みたいなものだね。

最初の喜劇『馬鹿まるだし』は、撮影所の試写室で観る限り笑えないから失敗したと思った。でも上映したら、観客がよく笑うんだなあ。つまり、僕が表現したいものが、結果として人を笑わせたり、泣かせたりするんだと気づかされた。最初から家族を描こうとか、喜劇を作ろうと思ったわけじゃなくて、結果としてそうなったんだ」

そこから監督としてのキャリアを積んで六十余年。今でも映画作りは発見の連続だという。

「映画を作るときには“こんなものを撮りたい”という漠然としたイメージがある。小説家が一字一字積み上げていくように、僕らもワンカットずつ積み重ねていく。撮りながら考え、ぶつかりながら直していく。新作の『TOKYOタクシー』で何度もロケハンに行った老人ホームは、夜になると静まり返って外にも出られない。暗い部屋にいる老人の寂しさを感じて、脚本を直した。そんなふうにして作っていくんだな、映画というのは。

この作品の最後の場面は理屈では説明できない、奇跡みたいなもの。そんなことがあればいいなという、夢を描いてみた。そういうことって人間の世界でたまに起きると思う。だから人生は捨てたもんじゃない、ということかな」

映画『TOKYOタクシー』
『TOKYOタクシー』(103分/'25)  木村拓哉演じるタクシー運転手・宇佐美浩二の元に、東京・柴又から神奈川・葉山の高齢者施設への送迎依頼が舞い込んだ。依頼主は倍賞千恵子演じるマダム・高野すみれ。「東京の見納めに、いくつか寄ってみたいところがあるの」と話すすみれとともに2人の小さな旅が始まる。原作は、山田監督が「内容は重いのに軽快かつユーモラスに観られる」と評したフランス映画『パリタクシー』。ラストで描かれる「奇跡」とは。25年11月21日、全国公開。

「家族」の50本

『トウキョウソナタ』 (119分/'08)監督/黒沢清

『誰も知らない』 (141分/'04)監督/是枝裕和

『父と暮せば』 (99分/'04)監督/黒木和雄

『クイール』 (100分/'03)監督/崔洋一

『鉄道員(ぽっぽや)』 (112分/'99)監督/降旗康男

『Shall we ダンス?』 (136分/'96)監督/周防正行

『毎日が夏休み』 (94分/'94)監督/金子修介

『お引越し』 (124分/'93)監督/相米慎二

『利休』 (135分/'89)監督/勅使河原宏

『異人たちとの夏』 (108分/'88)監督/大林宣彦

『ウホッホ探険隊』 (105分/'86)監督/根岸吉太郎

『お葬式』 (124分/'84)監督/伊丹十三

『家族ゲーム』 (106分/'83)監督/森田芳光

『泥の河』 (105分/'81)監督/小栗康平

『恍惚の人』 (102分/'73)監督/豊田四郎

『家族』 (106分/'70)監督/山田洋次

『若者たち』 (87分/'67)監督/森川時久

『紀ノ川』 (173分/'66)監督/中村登

『私は二歳』 (87分/'62)監督/市川崑

『秋刀魚の味』 (113分/'62)監督/小津安二郎

『キューポラのある街』 (99分/'62)監督/浦山桐郎

『名もなく貧しく美しく』 (128分/'61)監督/松山善三

『裸の島』 (98分/'60)監督/新藤兼人

『おとうと』 (97分/'60)監督/市川崑

『にあんちゃん』 (101分/'59)監督/今村昌平

『人間の條件 1〜6部』 ('59、'61)監督/小林正樹

『楢山節考』 (98分/'58)監督/木下惠介

『無法松の一生』 (104分/'58)監督/稲垣浩

『暖流』 (94分/'57)監督/増村保造

『乳母車』 (110分/'56)監督/田坂具隆

『狂った果実』 (86分/'56)監督/中平康

『姉妹』 (94分/'55)監督/家城巳代治

『二十四の瞳』 (154分/'54)監督/木下惠介

『真実一路』 (104分/'54)監督/川島雄三

『にごりえ』 (130分/'53)監督/今井正

『東京物語』 (135分/'53)監督/小津安二郎

『君の名は 第一部』 (127分/'53)監督/大庭秀雄

『雨月物語』 (96分/'53)監督/溝口健二

『煙突の見える場所』 (108分/'53)監督/五所平之助

『生きる』 (143分/'52)監督/黒澤明

『おかあさん』 (100分/'52)監督/成瀬巳喜男

『本日休診』 (97分/'52)監督/渋谷実

『めし』 (97分/'51)監督/成瀬巳喜男

『王将』 (94分/'48)監督/伊藤大輔

『安城家の舞踏會』 (89分/'47)監督/吉村公三郎

『兄とその妹』 (104分/'39)監督/島津保次郎

『愛染かつら 前後篇』 ('38)監督/野村浩将

『風の中の子供』 (86分/'37)監督/清水宏

『人情紙風船』 (86分/'37)監督/山中貞雄

『祇園の姉妹(きょうだい)』 (95分/'36)監督/溝口健二

「喜劇」の50本

『トイレット』 (109分/'10)監督/荻上直子

『ディア・ドクター』 (127分/'09)監督/西川美和

『ALWAYS 三丁目の夕日』 (132分/'05)監督/山崎貴

『下妻物語』 (102分/'04)監督/中島哲也

『ウォーターボーイズ』 (91分/'01)監督/矢口史靖

『ラヂオの時間』 (103分/'97)監督/三谷幸喜

『お日柄もよくご愁傷さま』 (105分/'96)監督/和泉聖治

『シコふんじゃった。』 (103分/'91)監督/周防正行

『12人の優しい日本人』 (116分/'91)監督/中原俊

『釣りバカ日誌3』 (96分/'90)監督/栗山富夫

『タンポポ』 (114分/'85)監督/伊丹十三

『時代屋の女房』 (97分/'83)監督/森㟢東

『蒲田行進曲』 (107分/'82)監督/深作欣二

『転校生』 (112分/'82)監督/大林宣彦

『神様のくれた赤ん坊』 (91分/'79)監督/前田陽一

『喜劇 女は度胸』 (90分/'69)監督/森㟢東

『男はつらいよ』 (91分/'69)監督/山田洋次

『馬鹿まるだし』 (87分/'64)監督/山田洋次

『拝啓天皇陛下様』 (98分/'63)監督/野村芳太郎

『ニッポン無責任時代』 (86分/'62)監督/古澤憲吾

『雲の上団五郎一座』 (84分/'62)監督/青柳信雄

『喜劇 にっぽんのお婆あちゃん』 (94分/'62)監督/今井正

『好人好日』 (88分/'61)監督/渋谷実

『夕陽に赤い俺の顔』 (82分/'61)監督/篠田正浩

『豚と軍艦』 (108分/'61)監督/今村昌平

『ひばりの森の石松』 (83分/'60)監督/沢島忠

『独立愚連隊』 (108分/'59)監督/岡本喜八

『お早よう』 (94分/'59)監督/小津安二郎

『源氏九郎颯爽記 白狐二刀流』 (87分/'58)監督/加藤泰

『社長三代記』 (86分/'58)監督/松林宗恵

『幕末太陽傳』 (110分/'57)監督/川島雄三

『抱かれた花嫁』 (96分/'57)監督/番匠義彰

『台風騒動記』 (107分/'56)監督/山本薩夫

『二等兵物語 女と兵隊・蚤と兵隊』 (95分/'55)監督/福田晴一

『夫婦善哉』 (120分/'55)監督/豊田四郎

『警察日記』 (111分/'55)監督/久松静児

『次郎長三国志 第三部 次郎長と石松』 (87分/'53)監督/マキノ雅弘

『プーサン』 (97分/'53)監督/市川崑

『三等重役』 (98分/'52)監督/春原政久

『とんかつ大将』 (95分/'52)監督/川島雄三

『カルメン故郷に帰る』 (86分/'51)監督/木下惠介

『東京キッド』 (81分/'50)監督/斎藤寅次郎

『お嬢さん乾杯!』 (89分/'49)監督/木下惠介

『東京五人男』 (84分/'45)監督/斎藤寅次郎

『狐の呉れた赤ん坊』 (85分/'45)監督/丸根賛太郎

『エノケンのちゃっきり金太 前篇・後篇』 ('37)監督/山本嘉次郎

『有りがたうさん』 (78分/'36)監督/清水宏

『丹下左膳余話 百万両の壺』 (92分/'35)監督/山中貞雄

『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』 (91分/'32)監督/小津安二郎

『マダムと女房』 (56分/'31)監督/五所平之助


profile

映画監督・山田洋次
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山田洋次(映画監督)

やまだ・ようじ/1931年大阪府生まれ。監督作に『男はつらいよ』や『学校』シリーズ、『家族』『幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ』など90作以上。60年以上、第一線で映画を作り続けている。

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