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生まれたての「Tレックスの赤ちゃん化石」を発見

  • 2026.7.16
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

史上最大級の陸上捕食者として知られるティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex、以下Tレックス)

彼らは、成体になると体重が数トンに達した巨大恐竜でした。

それほど大きな親から生まれるなら、赤ちゃんも相当な大きさだったと思うかもしれません。

しかし実際には、孵化したばかりのTレックスは体重約1.7キログラムと、イエネコほどの重さしかなかった可能性が浮上しました。

英国バース大学(University of Bath)らの研究チームは、博物館で長年見過ごされてきた小さな骨や歯を調べ、ティラノサウルス科の孵化幼体を特定したと報告しました。

研究の詳細は2026年7月7日付で学術誌『Biology』に掲載されています。

目次

  • 生まれたてのTレックスはイエネコくらいの大きさ?
  • 孵化後すぐに歩き、自分で肉を食べていた

生まれたてのTレックスはイエネコくらいの大きさ?

Tレックスは世界で最も有名な恐竜の一つですが、その誕生直後の姿はほとんど分かっていません。

巨大な成体の骨は見つかりやすく、発見されれば研究者の注目も集まります。

一方、赤ちゃんの骨は小さく壊れやすいうえ、全身骨格ではなく、ばらばらの骨として見つかることが多いため、採集されても種類を特定されないまま収蔵庫に置かれがちです。

実際、これまでティラノサウルス科の孵化直後の個体に確実に分類できる骨は報告されておらず、その幼少期は大きな空白となっていました。

そこでチームは、北米の後期白亜紀の地層から集められた博物館資料を調べ、小さな足の骨、顎の一部、抜け落ちた歯を探しました。

調査の中心となったのは、カナダ・サスカチュワン州のフレンチマン層で見つかった左脚の第3中足骨です。

これは足の中央に位置し、体重を支える重要な骨です。

実際に調査された化石の画像がこちら

骨には、表面のくぼみや裏側の隆起など、ティラノサウルス科に特徴的な形が残されていました。

さらに、同時代に生息していた恐竜との比較から、この標本はTレックスのものと判断されました。

チームは、顎や小さな歯についても、歯の太さや断面形状、縁に並ぶギザギザなどを比較し、Tレックスに特徴的な構造と一致することを確認しました。

つまり今回見つかったのは、赤ちゃんTレックスの完全な骨格ではありません。

博物館の引き出しに眠っていた断片的な骨と歯を、一つずつ解剖学的に読み解くことで、これまで知られていなかった成長段階の姿を復元したのです。

Tレックスの幼体の推定サイズを示した画像がこちら

ただし、主な足の骨を残した個体は、卵から出た直後に死んだわけではありません。

骨の内部には孵化後に形成されたとみられる層があり、研究者らは、この個体が孵化してから数週間から数カ月ほど生存していた可能性があると考えています。

死亡時の全長は約70~75センチ、体重は約2.5キログラム以下と推定されました。

さらに、孵化後に成長した分を差し引くと、卵から出た時点の体重は約1.7キログラムだったと見積もられます。

数トンに成長するTレックスも、最初は小型のネコほどの重さから出発していたのです。

孵化後すぐに歩き、自分で肉を食べていた

小さな足の骨は、赤ちゃんの大きさだけでなく、どのように暮らしていたのかも教えてくれました。

チームは、カナダ光源施設(Canadian Light Source)のシンクロトロンを使い、骨を切断せずに内部を約4.4マイクロメートルの解像度で撮影。

その結果、骨の内側には、卵の中で作られたとみられる血管の多い多孔質な組織があり、外側には孵化後に形成されたと考えられる、より密度の高い組織が確認されました。

卵の中では脚に体重がかかりませんが、孵化すれば地面からの衝撃や体重による負荷が加わります。

骨の密度が変化していたことは、この個体が卵から出た後も生きていたことを示す重要な手がかりです。

さらにTレックスの足の骨には、負荷によって傷んだ骨を修復した痕跡も見つかりました。

この骨の再構築は、脚に繰り返し力が加わっていたことを示します。

関節面もよく発達していたため、研究者らは、赤ちゃんが巣の中で動けずにいたのではなく、孵化後まもなく自分の脚で歩き回っていた可能性が高いと考えています。

小さな歯には、実際に何かへ噛みついたことで生じた摩耗も残されていました。

その摩耗の状態は、昆虫のような小さく柔らかい獲物だけでなく、比較的大きな脊椎動物の肉や骨を食べていた可能性を示しています。

これは、親が運んできた肉を食べたのか、それとも自分で小動物を捕らえたのかまでは分かりません。

それでも、孵化幼体が早い段階から移動し、自力で食べられる「早成性」の動物だったという解釈を支える証拠になります。

Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

また、推定された赤ちゃんと卵の小ささから、Tレックスは一度に多くの卵を産んでいたと考えられます。

現生の鳥類やワニ類に見られる、親の体重、卵の重さ、産卵全体の重量の関係を当てはめると、保守的なモデルでは、Tレックスの一腹の卵数は約21~32個と推定されました。

チームは、ティラノサウルス類全体では少なくとも15~30個を産んだ可能性が高く、50個、あるいは100個という大きな一腹も不可能ではないとしています。

ただし、Tレックスの完全な巣が見つかり、卵が直接数えられたわけではありません。

この数字は比較モデルから求めた概算であり、チームも「正確な個数ではない」と注意しています。

それでも、複数のモデルが「少数の巨大な卵」ではなく「多数の比較的小さな卵」という共通した結果を示した点は重要です。

多くの子を産み、1匹ずつへの投資を抑える繁殖方法は、少数のヒナを手厚く育てる現代の鳥類よりも、ワニなどの爬虫類に近い特徴です。

ただし、Tレックスの親が子育てをまったくしなかったという意味ではありません。

ワニも巣や幼体を守りますし、ほかの恐竜では抱卵や親子で行動した証拠も見つかっています。

Tレックスも一定の保護は行ったものの、その赤ちゃんは親から餌を与えられ続けなければ生きられない存在ではなかった可能性があります。

巨大なTレックスは、最初から生態系の頂点に立つ姿で生まれたわけではありません。

その出発点は猫ほどに軽く、自分の脚で移動し、早い段階から食べ物を口にする小さな肉食恐竜でした。

今回の発見は、恐竜の繁殖方法が、多数の子を産む爬虫類型と、少数の子へ多くを投じる鳥類型の中間にあったことを示す、貴重な手がかりなのです。

参考文献

‘Vanishingly Rare’ Discovery: T. Rex Hatchlings Were Smaller Than a Cat And Born by The Dozen
https://www.sciencealert.com/neglected-museum-fossils-turn-out-to-be-the-first-t-rex-hatchlings-ever-found

T. rex babies were born ready to run and feed themselves
https://phys.org/news/2026-07-rex-babies-born-ready.html

元論文

Hatchlings of Tyrannosaurus rex and the Evolution of Dinosaur Reproductive Strategies
https://doi.org/10.3390/biology15131090

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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