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僅か300頭のフクロアリクイ、40年間の保護活動で10倍に回復

  • 2026.7.16
フクロアリクイ / Credit: Martybugs, Wikipedia Commons, CC BY 3.0

1970年代後半、オーストラリア固有のフクロアリクイは、わずか約300個体まで減少していました。

しかし、外来捕食者の管理や動物園での繁殖、野生復帰などを40年以上続けた結果、現在の個体数は推定2,000〜3,000個体まで回復しています。

この成果を受け、フクロアリクイの絶滅リスクを示す国際的な評価も、「絶滅危惧」から「準絶滅危惧」へ引き下げられました。

目次

  • 白い縞模様が可愛い「オーストラリア固有の有袋類」はなぜ300個体まで減ったのか
  • 40年にわたる保護活動で最大10倍に増加!それでも保護を続ける理由とは

白い縞模様が可愛い「オーストラリア固有の有袋類」はなぜ300個体まで減ったのか

フクロアリクイ(Myrmecobius fasciatus)は、「ナンバット」とも呼ばれるオーストラリア固有の有袋類です。

赤褐色の体に白い横縞が並び、長くふさふさした尾を持っています。

主食はシロアリで、細長い口を地面や倒木の隙間に差し込みながら食べ物を探します。

有袋類としては珍しく昼間に活動する動物であり、現存するフクロアリクイ科の動物は本種しかいません。

そのため絶滅すれば、一つの種だけでなく、系統そのものが失われることになります。

このフクロアリクイは、かつてオーストラリア南部の広い範囲に生息していました。

しかし、ヨーロッパ人の入植に伴ってアカギツネやネコが持ち込まれると、外来捕食者による被害が急増。

さらに、農地開発などによる生息地の減少や、火災の頻度・強さの変化も重なりました。

火災によって茂みや倒木が失われれば、フクロアリクイは隠れ場所を失い、捕食者にも発見されやすくなります。

こうして1970年代後半には、西オーストラリア州に残った個体を中心に、約300個体まで減少。絶滅の危機に瀕しました。

そこで1980年代には、研究者たちが残存個体群の生態調査を進めることになりました。

その成果を土台として、1994年には本格的な回復計画が作られ、西オーストラリア州政府やオーストラリア野生生物の保護協会などが外来捕食者対策を進めます。

キツネや野生化ネコを餌による駆除や捕獲で減らすとともに、捕食者が入れないフェンス付き保護区も設けられました。

さらにパース動物園では1987年から野生復帰を目的とした繁殖計画が始まり、1993年には動物園生まれの個体が初めて野生へ放されました。

飼育下で繁殖した個体と野生個体を安全な地域へ移すことで、失われた地域に個体群を作り直していったのです。

では、こうした保護活動はどのような結果になったでしょうか。

40年にわたる保護活動で最大10倍に増加!それでも保護を続ける理由とは

40年にもわたる地道な保護活動により、フクロアリクイの総数は2026年までに推定2,000〜3,000個体となりました。

最も少なかった時期と比べると、約6.7倍から最大10倍の回復です。

西オーストラリア州に残っていた個体群が増えただけでなく、西オーストラリア州、南オーストラリア州、ニューサウスウェールズ州には、新たな個体群も作られました。

IUCN(国際自然保護連合)によると、繁殖個体の野生復帰や野生個体の移送によって、少なくとも五つの自立した個体群が確立されています。

ここでいう自立した個体群とは、人間が絶えず個体を補充しなくても、その地域で繁殖しながら存続できる集団のことです。

この回復を受け、IUCNレッドリストの評価は「絶滅危惧(Endangered)」から「準絶滅危惧(Near Threatened)」へ変更されました。

準絶滅危惧とは、現在は「絶滅危惧」の基準には当てはまらないものの、近い将来に再び絶滅危惧種となる可能性がある状態です。

つまり、「もう安全になった」のではなく、「絶滅の危険が以前より一段階下がった」という意味です。

一方、オーストラリア連邦政府のEPBC法では、フクロアリクイは現在も「絶滅危惧」に指定されています。

IUCNによる国際的な評価と、オーストラリア国内の法的指定は別々の制度であり、一方の変更によってもう一方が自動的に変わるわけではありません。

そして、フクロアリクイが現在生息している範囲は、かつての分布域のわずか0.04%にすぎません。

キツネや野生化ネコも依然として存在しており、捕食者対策やフェンスの管理を止めれば、個体数が再び急減する恐れがあります。

総数約3,000個体も一つの種としてはまだ少なく、干ばつ、病気、大規模火災などが起きた場合に備え、個体数と生息地域の両方を増やす必要があるでしょう。

フクロアリクイの回復は、長く地道な保護活動が絶滅への流れを変えられること、その成果を守るには努力を続けなければならないことの両方を教えているのです。

参考文献

Australia’s Cutest Banded Anteater Is Finally on the Mend After 40 Years of Conservation From 300 animals to thousands the numbat is fighting back.
https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/australias-cutest-banded-anteater-is-finally-on-the-mend-after-40-years-of-conservation/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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