1. トップ
  2. 江戸時代中期を舞台に、可愛くて格好いい「猫又」が怪事件に立ち向かう! 猫好き、時代劇好き、サスペンス好きを唸らせる妖怪活劇、開幕!【書評】

江戸時代中期を舞台に、可愛くて格好いい「猫又」が怪事件に立ち向かう! 猫好き、時代劇好き、サスペンス好きを唸らせる妖怪活劇、開幕!【書評】

  • 2026.7.14

【漫画】本編を読む

猫を取り上げた作品は数多くあるが、これほど格好いい猫の主人公は珍しいのではないだろうか。『猫又黒兵衛』(十月士也/秋田書店)は、町人文化が華やぎ、日常のすぐ隣に化物や妖怪、そして「憑き物」が当たり前に存在していた江戸時代中期を舞台にした物語だ。

主人公は、額に十字の傷を持ち、二又に分かれた尻尾を持つ「猫又」の黒兵衛。彼が江戸の妖怪を束ねる「赤目稲荷」から、吉原に現れたという「憑き物」の退治を命じられるところから物語が動き出す。そんな黒兵衛が「あおい」という名の謎の少女を探すため、江戸の街で次々と起こる奇怪な事件に立ち向かっていく。

猫又の黒兵衛は人の言葉を完全に理解しているが、自ら人間の言葉を喋ることはない。意思疎通は仕草や表情、そして時折見せる圧倒的な威圧感で行われる。この「喋らない」という設定が、逆に黒兵衛のミステリアスな格好良さを引き立てており、本作の大きな魅力となっている。

「憑き物落とし」のシーンも圧巻だ。黒兵衛は、人間を惑わすモノの正体を見破り、その「名」を暴くことで憑き物を引き剥がす。さらに、ひとたび本気を出せば、かつてひとつの村を滅ぼしたと恐れられる「朧火山の化猫」として巨大で恐ろしい姿を現すのだ。普段の愛くるしい黒猫の姿と、怪物を圧倒する化猫の姿のギャップに、読み手はシビれてしまうだろう。また、江戸の街並みや喧騒、おどろおどろしい妖怪たち、そして何より動物たちの躍動感あふれる描写にも引きつけられる。

江戸の情緒と妖怪ファンタジー、そして硬派なアクションが見事に融合し、猫好きはもちろん、骨太な時代劇やミステリーを楽しみたい人にも手にとってほしい作品だ。黒兵衛がその鋭い眼光の先に何を見つけるのか目が離せない。

文=坪谷佳保

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ