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「この煙、全部うちに来てますよ」毎週末BBQで洗濯物を汚す隣家。だが、普段は温厚な夫が注意してくれた瞬間

  • 2026.7.14

週末ごとに取り込む洗濯物

隣家とは一メートルしか離れていない、新興住宅地の一角にわが家はある。

その隣家が、毎年五月ごろから秋まで、晴れた週末になると決まって庭でバーベキューを始めた。

問題は、わが家が風下だということだった。

焼けた肉の煙が、干したシーツや洗濯物へまっすぐ流れ込んでくる。

「今日もこの匂い、布団に染みちゃう」

隣の庭に炭の煙が上がるたび、私は洗濯物を取り込み、窓という窓を閉めて回った。

晴れているのに部屋は薄暗く、閉め切って蒸し暑い。

年に何十回とくり返されるうちに、晴れた日でも心置きなく布団を干せなくなった。それでも角を立てたくなくて、私はただ黙って窓を閉め続けるしかなかった。

「文句を言いに行こうか?」

私がそう聞いても、夫は「まあまあ」と取り合わなかった。

もともと人ともめるのが何より苦手な、穏やかすぎる人なのだ。

(この調子だと、来年も再来年も同じね)

半ばあきらめていた、よく晴れたある週末のことだった。

穏やかな夫の意外な一言

その朝も、私はシーツと洗濯物を庭いっぱいに干していた。

案の定、昼前になると隣家の庭から炭の匂いが漂い始めた。

取り込もうと縁側に出た私の横を、夫が黙って通り過ぎた。そのまま隣家との境まで歩いていく。

「この煙、全部うちに来てますよ」

低くはないが、有無を言わせない声だった。

いつもへらへらと穏やかな夫の、初めて聞く口調だった。

網に肉をのせようとしていた隣家のご主人が、ぴたりと動きを止める。

「え、あ……そう、でしたか」

目が泳ぎ、額にうっすら汗がにじんでいた。

何か弁解しかけて、けれど続く言葉が出てこない。やがて肩を落とし、消え入るような声で言った。

「……すぐ片付けます。すみませんでした」

その日のバーベキューは、火をつける前に中止になった。

庭に並んだ食材も炭も、あっという間に家の中へ運び込まれていく。

私は縁側で、風に揺れるシーツをただ眺めていた。煙の匂いがしない週末は、何年ぶりだろうと思った。

そのうちまた始まるはず。そんな予想は、きれいに外れた。

あれから五年、隣家が庭で肉を焼くことは一度もない。

数日後、向かいの奥さんが「最近バーベキューやらなくなりましたね」と声をかけてきた。

「実はうちも煙が苦手で」と笑う顔を見て、我慢していたのは自分だけではなかったと知った。

「あなた、言うときは言うのね」

私が笑うと、夫は決まり悪そうに頭をかいた。今では顔を合わせるたび、隣家のご主人のほうが先に、そそくさと目をそらすようになった。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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