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初性交年齢が早いほど「寿命」に不利な傾向、遺伝研究で判明

  • 2026.7.12
Credit:OpenAI,ナゾロジー編集部

初めて性交を経験した年齢は、若い時期の個人的な出来事に思えます。

しかし過去の研究では、初性交年齢が早い人ほど、年齢を重ねた後の健康状態が不利になる傾向が統計的に示されていました。

一見、初性交年齢と将来の健康にはなんの関係もなさそうに思えますが、なぜ両者のデータは相関するのでしょうか。

そこで中国・山東大学(Shandong University)公衆衛生学部のKaixian Wang氏らは、初性交年齢と寿命や虚弱などの加齢指標に因果的なつながりがあるのかを、遺伝情報を用いて調べました。

その結果、遺伝的に初性交年齢が早いと予測される傾向は、長寿になりにくい傾向や虚弱度の高さなどと関連しており、初性交年齢が早い人は両親の寿命も短いという関係も示されたのです。

この研究は、2026年3月12日付けで科学雑誌『Healthcare and Rehabilitation』に掲載されています。

目次

  • 遺伝情報から「初性交年齢と将来の健康」のつながりを探る
  • なぜ初性交年齢と老化が結びつくのか?

遺伝情報から「初性交年齢と将来の健康」のつながりを探る

初性交年齢には、思春期の家庭環境、教育、性格、精神状態、生活習慣など多くの要因が関係するため、通常の観察研究だけでは原因と結果を切り分けにくい問題があります。

性交開始年齢を研究者が意図的に変え、その後の人生を何十年も追跡する実験も、現実的にも倫理的にも行えません。

そこで研究チームは、メンデルランダム化(Mendelian randomization)という方法を用いました。

これは、初性交年齢が早い傾向と統計的に結びつく遺伝子変異を目印にして、寿命や虚弱度(フレイル指数:心身の弱りを表す指標)との因果的な関係を推定する方法です。

研究チームはまず、英国バイオバンクに登録された39万7338人のデータから、初性交年齢の個人差と統計的に関連する遺伝的傾向を取り出しました。

次に、その遺伝的傾向と、複数の大規模な遺伝研究から得られた長寿、フレイル指数、親の寿命、健康寿命、自己評価による健康状態などとの関係を調べました。

また、長生きしやすさや虚弱のなりにくさなどをまとめた遺伝的な指標「aging-GIP」も分析し、生活習慣、感情、身体的特徴、病気など145項目から、初性交年齢とaging-GIPの関係をつなぐ候補として34項目を抽出しました。

分析の結果、遺伝的に初性交年齢が早い傾向は、aging-GIPの低さ、長寿になりにくい傾向、虚弱度の高さと関連し、男女を分けても結果の方向はおおむね共通していました。

さらに興味深いことに、遺伝的に初性交年齢が早い傾向は、親の寿命が短いという傾向とも関連していたのです。

特に関連が大きかったのは、虚弱度、慢性閉塞性肺疾患(COPD:主に長年の喫煙で起きる病気)、心理的なつらさを感じやすい傾向、注意欠如・多動症(ADHD)でした。

なぜここでADHDが出てくるのでしょうか?

なぜ初性交年齢と老化が結びつくのか?

当然ですが、初性交という出来事が直接体を老化させるわけではありません。

今回の結果から見えてくるのは、若い頃の行動は、人生を通じての生活習慣と関係する可能性があるという事です。

たとえば、若い時期に始まった喫煙や乱れた生活習慣は、長年続けば呼吸器や心血管系に負担を与え、活動量や筋力の低下を通じて虚弱につながる可能性があります。

長年の喫煙習慣から起きる肺の病気「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」が大きな媒介候補に挙がったのも、初性交年齢の早い人には、喫煙などの健康リスク行動が多かったためです。

しかし、これだけではまだ、両者に何が共通しているのか見えてきません。

そこで手がかりとなるのが、今回の研究で示されたADHD傾向です。

ADHDの特徴の一つである衝動性は、十分に先の結果を考える前に行動へ移りやすい傾向を指します。

つまり、初性交年齢が早い人は、先のことを考えずに行動に移る衝動性が高く、そうした傾向の人は喫煙など健康上の危険を伴う行為もあまり考えずに習慣化する可能性が高いと考えられるのです。

※今回の研究は衝動性そのものを測定していないため、初性交年齢が早い人全般にこの説明を当てはめることはできません。

また先ほど述べた通り、遺伝的に初性交年齢が早い傾向を持つ人では、親の寿命も短い傾向が示されました。

本人の性交開始年齢が親の寿命を変えるとは考えにくいため、この結果は、親子で共有する遺伝的傾向、健康習慣、経済状態、教育環境などが、子どもの行動と家族全体の健康の両方に影響している可能性を示します。

なお、この研究の遺伝データはヨーロッパ系集団に限られるため、日本を含む他の集団にそのまま当てはまるとは限りません。

また、共通する遺伝的な項目を調べていますが、まだ明確に因果関係が証明されたわけではありません。その点には注意を払う必要があります。

今回の結果は、初性交年齢の早さという行動の特徴が、人生を通じた健康に影響する遺伝的な要因と共通している可能性を示すものです。

こうした一見無関係に見える要因同士が一種の指標になるかもしれない、というのは興味深い結果です。

もう一つ重要な点は、初性交年齢が早い場合は、衝動性が関係するかもしれませんが、初性交年齢が遅い場合に、それが慎重だったからとはならない点です。

初性交年齢が遅いことには、単に相手がいなかったから、誘うのが下手だから、魅力が低いからなど衝動性以外の原因が色々考えられます。

そのため今回の研究は初性交年齢が早い場合に寿命や虚弱に不利という報告をしていますが、それが逆に初性交年齢が遅い場合は寿命に有利と言っているわけではないので注意しましょう。

元論文

Evidence for the causal relationship between age at first sexual intercourse and multidimensional aging phenotypes from a full life cycle perspective: A mendelian randomization study
https://doi.org/10.1016/j.hcr.2026.100064

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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