1. トップ
  2. エピソード
  3. 「喉渇いた、早く冷やせよ」休日にソファから動かない夫、妻がペットボトルを置いて返した一言とは

「喉渇いた、早く冷やせよ」休日にソファから動かない夫、妻がペットボトルを置いて返した一言とは

  • 2026.7.11

ソファから動かない夫

その休日、私は朝から掃除と洗濯に追われ、午後には家族のためのまとめ買いに出かけた。両手に重い袋を提げて帰宅すると、夫は朝と寸分変わらぬ格好で、ソファに寝そべってスマートフォンをいじっていた。

こちらが玄関で悪戦苦闘していても、手を貸そうという気配すらない。この人にとって、休日は指一本動かさないための日らしかった。

買ってきた物をキッチンへ運ぶだけで、腕が悲鳴をあげていた。冷凍食品も飲み物も、まとめて買えばずっしりと重い。腕には袋の持ち手のあとがくっきり残り、指の感覚も鈍くなっていた。

その私を横目に、夫は画面から顔も上げずに口を開いた。

「喉渇いた、早く冷やせよ」

買ってきたばかりの炭酸水を、今すぐ冷たくして持ってこい、というのだ。

自分はソファから一歩も動かないまま、飲み物だけは冷えたものを寄こせと言う。

「見てのとおり、まだ荷物も片付いてないんだけど」

「そんなのあとでいいだろ。喉渇いてるって言ってんの」

「あとで、っていつも私がやるんでしょ」

台所のダイニングテーブルでは、子どもが宿題をしていた。両親のやりとりに気づいたのか、鉛筆を動かす手が、ふと止まっている。普段は口を挟まない子が、ちらりとこちらの様子をうかがっていた。

テーブルに響いた音

私は袋の中から炭酸水を一本つかみ出すと、夫の目の前のテーブルに置いた。

「ドン」と、部屋に低い音が響く。それから、努めて静かに言い返した。

「自分で冷やして、自分で開けたら?」

たった一言だった。けれど、その一言で夫の動きが止まった。いつもならすかさず口答えしてくる人が、今日は何も言い返せずにいる。

ペットボトルと私の顔を、交互に見比べている。部屋には、しばらく気まずい沈黙が流れた。

宿題をしていた子どもが、こらえきれずにくすっと笑った。

「お母さん、言うねえ」

その声で、夫はますますばつが悪そうな顔になった。しばらく黙り込んだあと、のっそりと起き上がる。

「……分かったよ」

ぶっきらぼうにそう言って、ペットボトルを持って冷蔵庫へ歩いていった。

あれほど「冷やせよ」と命じていた人が、結局は自分の足で冷蔵庫を開けている。決まり悪そうなその背中を、私は黙って見送った。

この日を境に、夫はソファに寝転んだまま指図することをやめた。私が帰宅する物音がすると、こんな声が飛んでくる。

「荷物、重かっただろ。こっち持つよ」

ソファから飛んでくるのは、命令ではなく、そんな一言に変わった。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる