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「ノリ エノモト」の5周年とこれから。“絵になる小物”の造形と曲線の美学

  • 2026.7.10
Shimpei Mito

持つ人のたたずまいにそっと寄り添い、日常をひとつの作風のように彩ってきた「ノリ エノモト」。デザイナー榎本紀子さんが紡ぐ、絵画のように美しい世界観が魅力のブランドが、今年で創設5周年という節目を迎える。

この特別なアニバーサリーを祝し、2026年7月4日(土)、京都市京セラ美術館の「光の広間」にて、たった1日だけのポップアップ「5th Anniversary Kyoto Pop Up — alphabet」が開催された。

曲線が織りなす余白。5年の月日を経て形づくられた「アルファベット」

Shimpei Mito

“絵になる小物”をコンセプトに掲げ、波打つような柔らかなウェーブモチーフで多くの人の心を魅了してきた「ノリ エノモト」。今回のハイライトとなるのは、5年という歳月をじっくりと重ねて形づくられた“アルファベット コレクション”だ。一目ではアルファベットだとわからない独特なフォルムの原点は、ブランドのアイコンでもあるプロダクト、“ウェーブ ミニ”にある。

“ウェーブ アルファベット パース シリーズ” Shimpei Mito

整えられた美しい曲線を、あえて少しだけ崩してみる。そんな柔らかな解体から生まれた美しいフォルムは、文字の“A”からはじまり、やがて“Z”へと至る途切れのない物語へと広がっていった。

「波を崩していくようなアルファベットの表現は、一番最初のウェーブの形を作った直後からすぐ始めていたことなんです。私自身、緊張と緩和、あるいは対比するような関係性がすごく好きで。だからこそ、きれいなものを作るとあえて崩したくなるんです。そこにアートのおもしろさや、自分のものづくりの原点があると感じていています」と榎本さんは語る。

Shimpei Mito

一目でそれと分かる形もあれば、ふと何かのモチーフのようにも見える曖昧さを残したものも。決まった正解を持たない造形だからこそ、手にする人は自分の大切な思い出やイニシャルを重ねたり、あるいはただフォルムの美しさに心を奪われて選んだりすることができる。そこにあるのは、デザイナーが優しく残した表現の“余白”。

「アルファベットって、誰にとっても特別な意味を持っていますよね。自分の名前だったり、親からの贈り物だったり、個人のポリシーや生き方だったり……。世界共通で誰もが自分自身を投影できる存在だと思うんです。それにバッグは、洋服以上に性別を問わず誰もが持てるアイテムです。だからこそ、この特別なアルファベットというモチーフにこだわって形にしたいと思い、作り上げました。Zまで作るのに5年かかりましたが(笑)」

“ウェーブ アルファベット チャーム シリーズ”。アルファベットという固定概念をやわらかくほどいてくれるよう。 Shimpei Mito

記憶をたどる旅のように。名品たちが織りなす空間へ

Shimpei Mito

会場となる「京都市京セラ美術館」の本館、「光の広間」には、ブランド初期の名品から、上質な本革がシックな存在感を放つ“グラン ディマンシュ ニュイ”、日常の愛おしいひとときに寄り添う“サムディ ソワール ミディ”、そしてファインジュエリーブランド“ガルブ”までが一堂に会する。

なぜ京都市京セラ美術館を5周年の舞台に選んだのかという問いに、榎本さんはこう答える。「ただのバッグではなく、ひとつの“作品”として見ていただきたいという思いがあるので、周年記念のイベントは『美術館でやりたい』とずっと願っていました。私のアイテムはカラフルなので、白いキャンバスのような空間にすごく映えるんですよね。それに、ここはもともと中庭だったそうで、2020年に屋根がついて『光の広間』として生まれ変わったと聞きました。ブランドを立ち上げたのも同じ2020年なので、どこか強い親和性を感じています。また自然光がたっぷりと入るので、光の移ろいによって作品の見え方が多角的に変化します。その変化をお客様と一緒に体感したいと思い、この場所を選びました」

本ポップアップの予約チケットは、2時間120名の枠が開始2分で完売するほどの盛況ぶり。全国からファンが集まった。 Shimpei Mito

5周年を迎えて、6年目に突入する「ノリ エノモト」。今後は海外の美術館でも展示を開催したいという。

「いつか海外の美術館でもイベントをやってみたいという思いがあります。ただ、厳格な規約があり、すごくハードルが高いんですよね。今こうして国内で実現できていること自体が本当にありがたい環境ですし、難しい部分も多いのですが、そこはいつかチャレンジしてみたいことのひとつです。でも一番は……これまでブランドを続けられてきたことそのものにすごく価値を感じていて、心から感謝しているんです」と涙ぐんだ榎本さん。

今回は、アルファベットコレクションのほかに、わずかな個体差によって基準を満たさないバッグにmaya shibasakiさんによるペイントを施した“セカンドスキンコレクション”もお披露目。

“セカンドスキンコレクション” Shimpei Mito

これらのアイテムは公式オンラインストアでも展開中。アートのような造形美を身にまとう大人の贅沢――「ノリ エノモト」の“これから”に引き続き期待したい。

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