1. トップ
  2. 少女漫画歴ゼロの男性ライターが、個性派ラブコメの名手・池ジュン子の新作をがっつりレビュー! 甘いひと言と王道展開に思わず頬を赤らめたワケ

少女漫画歴ゼロの男性ライターが、個性派ラブコメの名手・池ジュン子の新作をがっつりレビュー! 甘いひと言と王道展開に思わず頬を赤らめたワケ

  • 2026.7.3
100回まわって愛を啼け 池ジュン子/白泉社
100回まわって愛を啼け 池ジュン子/白泉社

この記事の画像を見る

階段を上る途中、急なめまいに襲われた女子高生がフラリと倒れる。その下敷きになったのは、超が付くほどのイケメン。しかも彼は、世界的な企業「京極HD」の御曹司でもある同級生・京極茉都李(きょうごく・まつり)だった。

……と、あらすじを書いていて、「そんな少女漫画みたいな出会いがあっていいの!?」と、思わずツッコミたくなる。だが、これは実際に少女漫画『100回まわって愛を啼け』(池ジュン子/白泉社)第1巻で巻き起こる、正真正銘の導入なのだ。

作者の池ジュン子先生は、「濃いキャラクターとテンポの良い掛け合い」を軸に、王道でありながらもエッジの効いた個性派ラブコメを手掛ける人気漫画家。今回は、少女漫画にほとんど馴染みのない男性ライターの筆者が、この“少女漫画ド真ん中”とも言える作品をじっくりと読み込んでみることにした。

「ただしイケメンに限る」を凌駕する絵の説得力

下敷きになったのがただの金持ちのイケメンなら、「はいはい、素敵な出会いで良かったですね」とページを閉じてしまうところだったが、その京極くんは入学早々に停学になった札付きのワル。一方で、彼を下敷きにしたヒロインの椛(いろは)は、極貧生活を送る特待生。両者の極端な対比が実に見事に効いていて、続きを読みたい気持ちにさせてくれる。

そして翌朝、骨折したのかアームスリング(三角巾)で腕を吊った京極くんは、「骨折の原因、大人にバレたら困るよな特待生」「犬、探してたんだよねぇ。従順で賢いの」と、慰謝料代わりに自分の“犬(ペット)”になることを椛に要求してくるのだ。

こうやって強引に迫られるストーリーは、文字面だけを追えば「ただしイケメンに限る話だろ」と言いたくなる。しかし、そこに説得力のある「絵」が加わると、話はガラリと変わってくる。

京極くんは『野ブタ。をプロデュース』の頃の山P(山下智久さん)のようなシャープな美青年だし、無造作な髪型から覗く意地悪そうな視線と、時折見せる子どものような笑顔のギャップに触れると、「こんな人に意地悪をされたら、そりゃあ嬉しいだろうな」と、男の私でも妙に納得(共感)させられてしまう。

つまり、男性読者すらも強引に引きずり込んでしまう引力が、この男にはあるのだ。

甘いひと言と、王道展開に男性ライターも頬を赤らめる?

その後も京極くんの言動は、文字に起こせばかなり過激でキツい。それなのに決して嫌悪感へ振り切らないのは、要所で漏れる甘い一言と、圧倒的な描写力で読者を引き戻す池先生の手腕の賜物だろう。

暴漢に襲われた椛を鮮やかに助け出しつつ、「椛ちゃんを躾けて良いのは俺だけだよ」とドキリとさせる言葉を呟いてみたり、店頭に置かれたピアノで突然美しい旋律を奏でてみたり――。少女漫画のツボをこれでもかと押さえた王道のセリフと怒涛の展開に、男性である筆者も完全にノックアウト。頬を赤らめる椛と一緒になって、胸の鼓動を狂わされてしまった。

そして物語が進み、新たな謎のイケメンキャラが登場した最高の引きで第1巻が終わったとき、筆者の心には「普通に続きが読みたいんですけど!?」という純粋な欲望が芽生えていた。少女漫画に疎い男性の壁をあっさりとぶち壊し、夢中にさせてしまう池ジュン子先生の圧倒的な手腕に、ただただ感服させられる一冊だ。

文=古澤誠一郎

元記事で読む
の記事をもっとみる