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ゲームで頭は少し良くなる、133の研究分析で「記憶力の向上」を確認

  • 2026.7.3
ゲームは記憶力の向上に役立つ。メタ分析で判明 / Credit:Canva

「ゲームばかりしていると頭が悪くなる」と言われた経験がある人は少なくないでしょう。

しかし中国・上海師範大学(SHNU)の研究チームは、133件の研究を統合して、ゲームと認知能力の関係を分析。

ビデオゲームが記憶力や注意力などの認知能力に、小さいながらプラスに働く可能性を報告しました。

研究成果は2026年5月25日付で学術誌『Acta Psychologica』に掲載されています。

目次

  • ゲームは本当に「脳トレ」になるのか?133の研究を分析
  • ゲームプレイにより「小さな記憶力の改善」が見られる

ゲームは本当に「脳トレ」になるのか?133の研究を分析

認知能力とは、情報を受け取り、処理し、記憶し、必要なときに取り出す力のことです。

たとえば、物事に集中する力、空間の中で位置関係を理解する力、ルールを切り替える力、記憶を保つ力などが含まれます。

こうした能力は、学業や仕事だけでなく、日常生活の判断や健康にも関係します。

そのため研究者たちは、年齢とともに衰えやすい認知機能をどう維持するかに関心を持ってきました。

そこで注目されている候補の1つが、ビデオゲームです。

ゲームには、明確な目標、少しずつ上がる難易度、すぐ返ってくるフィードバックがあります。

プレイヤーは、敵や地形を見分け、ルールを覚え、失敗から次の行動を調整します。

このような特徴から、ゲームは認知トレーニングの媒体になり得ると考えられてきました。

ただし、研究者の見方は一致していません。

ゲームによって注意力や記憶力が鍛えられると考える人がいる一方で、「上達するのはそのゲームや似た課題だけではないか」という慎重な見方もあります。

そこで研究チームは、2005年から2025年までの研究を集め、133件の独立した研究、合計1万4245人分のデータを統合しました。

対象となったのは、記憶、空間能力、視覚的注意、認知制御、知能の5領域です。

なお、この研究で扱われたのは市販の商業ゲームであり、認知能力向上を目的に作られたゲームは除外されています。

分析は大きく3種類に分けられました。

1つ目は、ゲームプレイの程度と認知テストの関係を見る相関研究です。

2つ目は、ゲーマーと非ゲーマーを比べる比較研究です。

3つ目は、実際に一定期間ゲームをプレイさせる介入試験です。

その結果、3種類の分析すべてで、ゲームと認知能力のあいだに小さいながら統計的に有意なプラスの関係が見つかりました。

ただし、目立った領域は研究デザインによって異なり、相関研究と介入試験では特に記憶に関する結果が目立ちました。

より詳細な結果は次項で見ていきます。

ゲームプレイにより「小さな記憶力の改善」が見られる

まず相関研究では、ゲームプレイの程度と全体的な認知能力のあいだに、弱い正の関連がありました。

ただし、領域別に見ると、はっきり有意だったのは記憶だけでした。

これは、よくゲームをする人ほど記憶課題でやや良い成績を示したという意味です。

しかし相関研究だけでは、「ゲームが記憶力を高めた」とは言えません。

もともと記憶力が高い人がゲームを好みやすい可能性もあるためです。

次に、ゲーマーと非ゲーマーを比べた研究では、ゲーマーの方が全体として高い認知成績を示しました。

特に、空間能力、視覚的注意、認知制御、知能で有意な差が確認されています。

空間能力とは、頭の中で物体を回転させたり、地図や立体の位置関係を理解したりする力です。

視覚的注意とは、画面上の重要な情報を素早く見つける力です。

認知制御とは、衝動を抑えたり、ルールを切り替えたりする力です。

ゲームでは、こうした能力を同時に使います。

たとえば広いマップを覚え、敵の動きを見分け、状況に応じて操作を変える必要があります。

ただし、この比較だけでは、ゲームによって能力が高まったのか、もともとそうした能力が高い人がゲームを好みやすいのかは分かりません。

そして最も因果関係に近い介入試験でも、ゲームをプレイした人には小さな認知改善が見られました。

ただし、ここでも効果は大きくありません。

全体の効果量は小さく、領域別に有意だったのは記憶だけでした。

では、なぜ記憶が目立ったのでしょうか。

研究チームは、現代のゲームに含まれる豊かな仮想環境が関係している可能性を挙げています。

大きなマップを探索し、場所やアイテム、ルートを覚える作業は、脳にとって環境的な刺激になります。

またゲームには、レベルクリアや報酬獲得のようなフィードバックが頻繁にあります。

論文では、こうした報酬がドーパミン系を通じて、記憶の符号化や固定を助ける可能性があると説明されています。

もちろんこれは、長時間プレイやゲーム依存をすすめる結果ではありません。

今回の研究に含まれた多くの研究は中程度の品質と評価されており、最高水準の厳密な実験だけを集めた分析でもありません。

また、プレイ時間や測定方法にはばらつきがあり、長期的に効果が続くかもまだ分かっていません。

それでも今回の結果が示しているのは、ゲームは単なる時間つぶしではないということです。

適切な範囲であれば、記憶を中心に脳を少しだけ刺激する活動になり得るのです。

参考文献

Video games might offer a small boost to memory and mental skills
https://www.psypost.org/video-games-might-offer-a-small-boost-to-memory-and-mental-skills/

元論文

The association between video game play and cognitive ability: A systematic review and meta-analysis
https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2026.107110

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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