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カナダ11歳少年が「狂犬病」で死亡、起床時に顔の上にコウモリ

  • 2026.7.3
※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

カナダ・オンタリオ州で、11歳の少年が狂犬病により死亡したと報じられました。

きっかけは、家族で滞在していた別荘での出来事。

少年は夜中に目を覚ますと、顔の上にコウモリが乗っていることに気づいたといいます。

すぐにコウモリは払いのけられ、父親が鍋で捕まえて外に逃がしました。

しかし少年の顔には、目に見える咬み跡や引っかき傷はありませんでした。

そのため家族は、狂犬病に感染した可能性を考えず、その場では医療機関を受診しなかったという。

ところが19日後、少年に異変が現れ始めたのです。

症例報告の詳細は、2026年6月29日付でカナダの医学誌『Canadian Medical Association Journal』に掲載されています。

目次

  • 傷が見えなくても、コウモリとの接触は危険
  • 接触から19日後に異変

傷が見えなくても、コウモリとの接触は危険

今回の出来事が起きたのは、2024年のカナダ・オンタリオ州北部です。

少年は家族と別荘に滞在しており、真夜中に目を覚ましたとき、コウモリが鼻と口の上辺りに乗っていました。

少年はすぐにコウモリを払いのけ、父親が調理用の鍋で捕まえて屋外に逃がしました。

このとき、少年の顔になにかしらの傷や出血は見当たらなかったといいます。

コウモリが特に攻撃的だったようにも見えず、異常な行動も示していませんでした。

そのため家族は、少年が狂犬病に曝露した可能性を想定しなかったのです。

しかし医師らは、ここに大きな落とし穴があると指摘しています。

コウモリによる咬み傷や引っかき傷は、非常に小さく、見落とされやすいのです。

さらに、ウイルスを含んだ唾液が、目、鼻、口、あるいは皮膚の小さな傷に触れることでも感染のリスクが生じます。

つまり「傷が見えないから安全」とは言い切れません。

特にコウモリは、北米における人間の狂犬病感染で重要な動物とされています。

スカンク、アライグマ、キツネも狂犬病を媒介しますが、報告では、北米ではコウモリが主な感染源として強調されています。

また、狂犬病に感染したコウモリが、必ずしも「昼間に飛び回る」「地面にいる」「飛びにくそうにしている」「人を恐れない」といった典型的な異常行動を示すとは限りません。

今回のコウモリも、家族の目には明らかに異常とは映っていませんでした。

しかし医師らは、こうした行動が見られないからといって、狂犬病を否定することはできないと述べています。

接触から19日後に異変

コウモリとの接触から19日後、少年には顔の右側のチクチクした感覚、しびれ、腫れが現れました。

その後、顔面まひも生じ、少年は診療所や救急外来を受診しました。

当初は、ヘルペス性歯肉口内炎やベル麻痺が疑われ、治療を受けて一度は退院しました。

しかし症状は悪化していきます。

少年は再び救急外来を受診し、待機中に発熱、錯乱、重い幻覚を起こしました。

容体は急速に悪くなり、気道を守るために挿管され、小児集中治療室に入院しました。

感染症の専門チームは、コウモリとの接触歴と神経症状から、狂犬病を強く疑いました。

MRI検査では脳幹に病変が見つかり、検査でも狂犬病が示されたといいます。

少年は最終的に脳幹機能を失い、入院から17日後に亡くなりました。

狂犬病は、感染した動物の咬傷や引っかき傷などを通じて広がるウイルス性疾患です。

主に中枢神経系に影響し、発症すると重い脳の障害を引き起こします。

問題は、症状が出始めた後では、ほぼ常に致命的になることです。

一方で、発症前に適切な処置を受ければ、狂犬病は予防できます。

その中心となるのが、曝露後予防、つまりPEPです。

PEPでは、傷の洗浄、抗体の投与、ワクチン接種などが行われます。

医師らは、狂犬病を防ぐ唯一の有効な手段は、曝露を早く認識し、適切なタイミングでPEPを行うことだと強調しています。

カナダで人間の狂犬病は極めてまれです。

報告によると、カナダでは1924年以降に記録された症例は28例とされ、オンタリオ州では1967年以来の症例でした。

しかし、まれであることは、無視してよいことを意味しません。

むしろ、日常的に意識されにくいからこそ、接触後の判断が遅れやすいのです。

コウモリと直接接触した場合、たとえ傷が見えなくても、医療機関で評価を受ける必要があります。

今回の症例は、「何も起きていないように見える接触」が、実は命に関わる感染リスクを含んでいる可能性を示しています。

狂犬病は、発症してから治す病気ではなく、発症する前に防ぐ病気です。

顔の上に乗っていただけ、傷は見えなかった、動物は攻撃的ではなかった。

そうした安心材料がそろっていても、コウモリとの直接接触では、すぐに医療機関へ相談することが命を守る分かれ道になるのです。

参考文献

11-year-old boy in Canada dies from rabies after waking up with a bat on his face
https://www.livescience.com/health/viruses-infections-disease/11-year-old-boy-in-canada-dies-from-rabies-after-waking-up-with-a-bat-on-his-face

11-year-old boy dies of rabies in Canada after waking to find bat on his face in the middle of the night
https://www.nbcnews.com/news/animal-news/11-year-old-boy-dies-rabies-waking-find-bat-face-middle-night-rcna352803

Canadian boy dies of rabies after waking to find bat on his face
https://www.theguardian.com/world/2026/jul/02/canadian-boy-dies-rabies-bat-on-face

元論文

Fatal rabies in a child(PDF)
https://www.cmaj.ca/content/cmaj/198/25/E969.full.pdf

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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