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『口に関するアンケート』板垣李光人が刺激を受けた、“初めて”のホラー映画「プレッシャーをやり甲斐に替えて」

  • 2026.7.2

人気作家・背筋の同名大ヒット小説を、「呪怨」シリーズ、『あのコはだぁれ?』(24)などのJホラーの鬼才・清水崇監督が映画化した『口に関するアンケート』(7月3日公開)。原作本は掌に乗るぐらい小さい異様なサイズでわずか60ページのボリューム、登場人物たちの独白だけで構成されているため、実写化の情報が解禁された際には「これをどう映像化するのか想像できない」「あの不気味さを(映像で)どう表現するのか気になる」と声が相次いだ。

【写真を見る】不敵な笑みに魅了される…板垣李光人の“美”が詰まった撮りおろし!

本作が意外にも実写映画単独初主演となる板垣李光人も、オファーを聞いた時はその思いは同じだったようで、「台本をいただく前でしたから、文字というメディアの特性を最大限に活かした小説のおもしろさを映像でどう表現するんだろうと思いました。でも、Jホラーの巨匠の清水監督とご一緒できるのがうれしかったですし、原作の小説がおもしろかったので、ありがたく受けさせていただきました」と振り返る。

「原作の濃度を100%保ったままで映画に仕上がっている」

ホラー映画というジャンルにも初挑戦となった板垣だが、「“ヒトコワ系”の作品も好きですし、(『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』などの)アリ・アスター監督の映画も好きなので、ホラー作品も出演作を選ぶ選択肢になかったわけではなくて。映画としておもしろそうな作品にはぜひとも挑戦させていただきたいです」というスタンスだと話す。ようやく手元に届いた台本は、そんな彼を唸らせるものだったという。

実写映画単独初主演&ホラー映画初挑戦だった板垣 撮影/杉映貴子 ヘアメイク/FUJIU JIMI スタイリスト/Dai Ishii
実写映画単独初主演&ホラー映画初挑戦だった板垣 撮影/杉映貴子 ヘアメイク/FUJIU JIMI スタイリスト/Dai Ishii

心霊スポットとして知られる墓地に肝試しに行った大学生たち。だが、そのうちの1人が忽然と姿を消し、5人の周りでも不可解なことが起こり始めたため、彼らは1人ずつあの夜のことを語り始める…。原作はたったそれだけのシンプルな内容だが、板垣は「映画版はいま出版されている背筋さんの作品に、背筋さんの頭のなかにある世に出ていないものをプラスしたような形になっているんです」と強調する。

「原作に映画のオリジナルの要素を足すって聞くと、小説のファンの方は心配に思う部分があるかもしれないけど、(『爆弾』の山浦雅大による)今回の脚本は、原作の濃度を100%保ったままで映画のボリュームに仕上げられていたから、読んだ時にとても引き込まれました。それに大学生の1人が消えてからいろいろな怪事件が起こるミステリーの要素もある作品ですけど、中村獅童さんが演じられた刑事の草壁など映画のオリジナルのキャラクターを登場させたことで観客の視点も定まって。彼らと一緒に、彼らの気持ちになって事件の真相を暴いていく構成になっていたので、きっとおもしろい映画になるだろうなと思いました」。

ある大学生のグループが肝試しに訪れるが… [c]2026 映画「口に関するアンケート」製作委員会
ある大学生のグループが肝試しに訪れるが… [c]2026 映画「口に関するアンケート」製作委員会

とはいえ、原作の魅力を損なうことなく映画に変換させた本作は、小説と同じように大学生たちがカメラに向かって証言する独白シーンが全体の半分を占め、それが最大の見どころ。演じるうえでかなり緊張しそうなシチュエーションだが、板垣は「プレッシャーはありましたけど、現場に入ったらもうやるしかないので、プレッシャーをやり甲斐に替えて挑みました(笑)」とのこと。

「ただ、普通の感情の出し方でよければいつも通りのプロセスですけど、本作の状況は特殊ですからね。“呪い”という、自分の意思に反するものに突き動かされて口なり感情が動く、通常の芝居とは違うイレギュラーなものなので、清水監督に参考になる映画を薦めていただきました。ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』です。催眠術をかけられた主人公(ダニエル・カルーヤ)が無表情のまま涙をボロボロ流すあのシーンが監督のイメージに近かったようで。そういうものは自分の想像だけでやるより、視覚的に参考になるものがあったほうが自分のイメージの輪郭がはっきりするので助かりました」。

「どう反応するかで観客の“怖がる”温度が決まってくる」

その尋常ではない芝居こそが、小説ではできない、映画ならではの衝撃になっているのは言うまでもない。段階を追いながら何度も入り乱れるように各登場人物たちの証言映像が挿入され、板垣の表情もある時は片目の下だけがピクピク痙攣していて、それがどんどん崩れていくからおぞましさが増していく。いったいあれはどんな風にやっているのか?思わず問うと、板垣は微かに笑みを浮かべながら「イレギュラーな芝居とは言いましたけど、自分のなかのものをもちろん動かさないといけないので」と断ったうえで続ける。

証言シーンで披露する狂気の表情。いったいなにが [c]2026 映画「口に関するアンケート」製作委員会
証言シーンで披露する狂気の表情。いったいなにが [c]2026 映画「口に関するアンケート」製作委員会

「あのシーンの作り方としては、監督と相談しながら証言シーンをブロックごとに何個かに分けて、あとはそのパートごとの芝居をやるという方法でした。ただ、相手がいて会話をするのではなく、カメラ目線で芝居をしないとけないから、集中力と体力はかなりいりましたね」。

その表情の揺らぎのなかに、人間のドロドロした内面や本音が見え隠れするのが本作のおもしろいところで、板垣も「そこが背筋さんの作品が持つ特色です」と訴える。「ホラーというジャンルに一応分けられていますけど、人間のどうしようもなさみたいなものが常に作品のベースにあって。“呪い”という概念が出てくる本作でも、“口は災いのもと”という人間同士の愚行が怪異を生みだしていく。超常現象ではない、そこがベースになっているのが僕は好きなんです」。

清水監督へのリスペクトまで熱く語ってくれた 撮影/杉映貴子 ヘアメイク/FUJIU JIMI スタイリスト/Dai Ishii
清水監督へのリスペクトまで熱く語ってくれた 撮影/杉映貴子 ヘアメイク/FUJIU JIMI スタイリスト/Dai Ishii

初めて参加したホラー映画の現場では新鮮な驚きもたくさんあったようで、「この世のものではない恐怖の対象に、(キャストの)我々がどう反応するかで観客の“怖がる”温度が決まってくるから、芝居をするだけではなく、カメラのアングルに対して自分をどう見せるのかもホラー作品では考えないといけない」と語るその言葉も熱を帯びてくる。

「カメラが自分を俯瞰する位置にいたら、どれだけ正面を見ながら目を大きく見開いていても映らないですから。失踪した人物の霊と対峙する高架下のシーンなどはまさにその最たるもので、カメラの動きに合わせて顔の角度をちょっとずつ合わせていきました」。

女性の姿がうしろにボンヤリと映る [c]2026 映画「口に関するアンケート」製作委員会
女性の姿がうしろにボンヤリと映る [c]2026 映画「口に関するアンケート」製作委員会

ホラー映画ならではの現場をうれしそうに述懐する板垣。だが彼自身も「特殊メイクはいい経験でした。初めてでしたから」と目を輝かせる。「それに、あの一連のシーンでは声や身体の反応に関して監督から細かい指示があって。『こういう時は筋肉がこう反応して、体がこうなるから、そんな感じでお願いします』とディレクションをいただいたんです。ホラー映画をずっと撮られてきている清水監督の言葉ですからね。説得力があって、プロの仕事を感じました。カッコよかったですし、クリエイティブの面での刺激もありました」。

「基本的にあまり余計なことは言わないようにしています(笑)」

そんな板垣に本作の裏テーマ“口は災いのもと”に絡めて、思わず口走って失敗した経験や発言する時に気をつけていることを聞いてみると「う~ん、基本的にあまり余計なことは言わないようにしています(笑)」と瞬時に返ってきた。

【写真を見る】不敵な笑みに魅了される…板垣李光人の“美”が詰まった撮りおろし! 撮影/杉映貴子 ヘアメイク/FUJIU JIMI スタイリスト/Dai Ishii
【写真を見る】不敵な笑みに魅了される…板垣李光人の“美”が詰まった撮りおろし! 撮影/杉映貴子 ヘアメイク/FUJIU JIMI スタイリスト/Dai Ishii

そして「もともと口数は少ないタイプですから」と念を押すと、「発言する時は日本語を綺麗に使いたい。こんなに美しい言葉が第一言語ですから、美しく使いたいと常々思っています」ときっぱり。板垣らしい、ささやかにして強いこだわりがうかがえた。

そこで、これまでの人生のなかで一番怖かった経験も聞いてみると「僕、数学が本当に苦手で」と今度は思いがけない答えが!「中学生のころとか、数学のテストを返される時が一番怖くて。できていないのはもちろんわかっているけれど、その現実を点数の形で突きつけられるのが本当に怖くて毎回憂鬱だったんです。だから、返してもらったらすぐに畳んで、見なかったことにしていました(笑)」。

『口に関するアンケート』は7月3日(金)公開! [c]2026 映画「口に関するアンケート」製作委員会
『口に関するアンケート』は7月3日(金)公開! [c]2026 映画「口に関するアンケート」製作委員会

そう言って、遠い日の苦い記憶と向き合いながら顔を歪める板垣に、申しわけないと思いながらも「では、これまで観たなかで、一番怖かったホラー映画は?」と畳みかけるように聞いてみた。すると、「えっ、なんだろうな~?」という言葉を挟んでから板垣は「怖かった作品で言ったらやっぱり(台湾ホラーの)『呪詛』かな」と明言する。

「怖さではあれがダントツです。今回の僕たちの映画にも川瀬(西山智樹/TAGRIGHT)と堀田(森愁斗/BUDDiiS)の自撮りの映像で進んでいくシーンがあるんですけど、こういうモキュメンタリーっぽい生々しい質感は怖いですね。『呪詛』にもそういうところがあったけれど、我々が生きている世界と映画のなかの世界の境界が曖昧になっていくあの感じはやっぱり怖い。『口に関するアンケート』の場合は、そこにさきほど話した人間のどうしようもなさみたいなもの絡んでくるし、臨場感のあるサウンドでその恐怖を増幅させている。それは映画館でしか味わえないものだし、上映時間も原作の短さに見合った89分というちょうどいい長さ。ホラーだからと言って臆せずに、小説と映画を交互に観て背筋さんの世界を考察し直してもらえたらうれしいです」。

取材・文/イソガイマサト

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