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母が遺した犬を引き取ることに…これまで自由気ままに生きてきた女性が家族と人生を見つめ直していく、ひとりと一匹の物語【書評】

  • 2026.7.2

【漫画】本編を読む

『娘飼わんより犬の子飼え 上』(スズキスズヒロ/KADOKAWA)は、母の死と、母が遺した犬との出会いをきっかけに、ひとりの女性の生き方が少しずつ変わっていく物語。『空飛ぶくじら スズキスズヒロ作品集』で第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した著者による、初の長編連載作品である。

主人公・みさきは、お金を貯めては仕事を辞め、バックパックひとつで世界中を旅している女性。誰にも頼らず、自分の責任は自分で負うということを口にしながら、自由な生き方を選び、これからもひとりで生きていくつもりでいた。しかしロンドンを旅している最中に、疎遠だった母の訃報が届く。急ぎ帰国した彼女を待っていたのは、母が飼っていた一匹の大きな犬だった。

小さな子どもがいる弟は引き取ることができず、みさきはとりあえずペット禁止の自宅のアパートにこっそりと連れ帰る。しかしこれまで自分の身ひとつでどこへでも行っていた彼女が、言葉の通じない、世話の必要な生き物を前にして戸惑い、そして葛藤する。この犬は彼女にとって自由を阻害する存在であり、背負わなくていいと感じる責任の象徴にほかならない。だからみさきは当初、犬を手放そうとするのだが――。

みさきの生き方と考え方は、言葉では聞こえがいいが、やっていることは行き当たりばったりである。そんな彼女が犬と向き合うことは、これまで責任を持とうとせず背を向けていた家族というものに向き合うきっかけとなるのだ。

誰かと一緒に生きることは、不自由なことだらけだ。しかし、その不自由さの中にしか生まれない安心感や、自分ひとりでは決して見ることのできない景色がある。一匹の母の遺した犬によって、みさきはこれからどんな人生を選んでいくのか。同時発売された下巻とともに、その先を見守ってほしい。

文=坪谷佳保

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