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オープンワールドゲームは孤独感を軽減し、勇気、忍耐力、自立心を養う可能性

  • 2026.6.28
Credit:OpenAI,ナゾロジー編集部

現代では大人たちにとっても、ゲームは非常に身近で当たり前の娯楽になってきました。

それは日々の仕事のストレスや、孤独感の解消、困難な状況への心構えなど、人々の考え方やメンタルヘルスにも役立っている可能性があります。

特にコロナ禍以降は、オンラインゲームが人々の交流の一部となり孤独の解消に役立っているという報告も見られます。

しかし、一人で遊ぶことが前提のオフラインゲームについては、「現実逃避」や「孤独を深める」などネガティブな要因が語られることも少なくありません。

そこで、日本の九州産業大学(Kyushu Sangyo University)のCongcong Hou氏、英国インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のAndreas Benedikt Eisingerich氏らの研究チームは、一人で遊ぶことが前提のゲームが、孤独感や考え方にどういう影響を与えるかについて調査を行いました。

その結果、、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』などのオープンワールドゲームを遊ぶ人や、『ヨッシークラフトワールド』のような親しみやすいゲームを遊ぶ人は、遊ばない人に比べて孤独感が低く、困難な場面でも冷静に行動する傾向が高いことが示されたのです。

ソロのゲームでも孤独感が解消されるというのは興味深い報告です。また困難に対する姿勢が変わるというもの面白い発見です。

この研究の詳細は、2026年6月17日付けで科学雑誌『JMIR Serious Games』に掲載されています。

目次

  • 「ゲームの中の経験」は心とどう関係するのか
  • オープンワールドゲームは「一人の時間」の感じ方を変える

「ゲームの中の経験」は心とどう関係するのか

孤立や、孤独感は社会的に大きな問題になって来ていますが、孤独感は、友人の数や会話の回数だけで決まるものではありません。

人に囲まれていても孤独を感じることがありますし、逆に一人でも特に孤独や寂しさを感じない場合もよくあります。

こうした中で、注目されるのが、基本的に家で一人で遊ぶことの多いゲームがもたらす影響です。

ゲームと孤独感の関係と言われると、多くの人がまずオンラインゲームを思い浮かべるかもしれません。

ボイスチャットで話す。協力して敵を倒す。ギルドやチームで知り合いができる。このようなゲームなら、家に一人だとしても人との交流を保て、孤独感を和らげる効果は想像しやすいでしょう。

一方で、今回の研究チームが注目したのは、一人で遊ぶことが前提のゲームです。

こうしたゲームでは、コミュニケーションツールとしての側面を除外して、その影響を見ることが出来ます。

特にオープンワールドゲーム(open-world game)では、プレイヤーは広い仮想世界を自由に移動し、決められた一本道ではなく、どこへ行くか、何を試すかを自分で選びます。

敵に負ければ準備を変え、道に迷えば別のルートを探します。

研究チームは、このようなゲーム内の体験が、ストイシズムと関係するのではないかと考えました。

ストイシズム(Stoicism)とは、自分で変えられることに意識を向け、変えられない出来事には振り回されないようにする考え方のことです。

これは元は哲学の概念でしたが、近年はメンタルヘルスと関連する要因として、心理学研究で注目されています。

そこ今回の研究では、ショッピングモール内のビデオゲーム店の近くで参加者を募り、2300人にタブレットで短いアンケートに回答してもらいました。

調査では、ストイシズムを測定する質問票とともに、『ゼルダ』シリーズのオープンワールドゲームを最近または現在遊んでいるか、『ヨッシー』シリーズのような、親しみやすく遊びやすいゲームを遊んでいるかという質問が行われました。

また孤独感についても、「周囲に空虚さを感じるか」「頼れる人がいないと感じるか」「仲間が足りないと感じるか」といった質問が行われました。

その結果、オープンワールドゲームを遊ぶ人は、遊ばない人よりも孤独感が低く、ストイシズムの得点が高い傾向を示しました。

ここでいうストイシズムの高さとは、うまくいかないことが起きたときに、「なぜこうなったのか」と不満を抱くだけでなく、「では自分は次に何ができるか」と考えやすいことを意味します。

ヨッシーのような親しみやすいゲームを遊ぶ人でも、同じ傾向が見られました。

では、ゼルダやヨッシーなど、一人プレイ用ゲームを好む人のほうが孤独感が低くなる背景には何があるのでしょうか?

オープンワールドゲームは「一人の時間」の感じ方を変える

今回の研究で興味深いのは、ゲームと孤独感の関係を「人と交流できるかどうか」だけで見ていない点です。

オンラインゲームで友人ができれば、孤独感が下がるのは当たり前です。

しかし今回の研究が注目したのは、人との交流を主な目的にしない一人用ゲームでした。

孤独感は「一人であるか」ではなく、本人がその時間をどう意味づけするかで決まります。

人に囲まれていようと、一人でいようと「話し相手がいない」と感じれば、孤独感は強まりやすくなります。

一方で、一人を「自分で考え、自分のペースで行動できる時間」と感じれば、同じ孤独であっても意味は変わります。

ここに関係してくるのが、ストイシズムだと考えられます。

この研究では、ストイシズムを「物事には終わりがあること」「自分に出来ることを考えて行動すること」「困難な状況で次に何ができるか考えること」として測定しました。

ストイシズムが高い人は、思い通りにいかない場面でも、ただ落ち込んだり不満を抱いたりするだけでなく、「自分に何ができるか、次はどうしようか」を考えやすい傾向がありました。

そしてオープンワールドゲームを遊ぶ人ほど、このストイシズムの得点が高く、さらに孤独感が低かったのです。

オープンワールドゲームでは、プレイヤーが「自分で選ぶ」「失敗してもやり直す」「次にできることを考える」という経験を重ねていきますが、それが一人の時間の感じ方に影響を与えているのかもしれません。

こうした感覚があると、一人でいる状態は、ただの欠落ではなく、自分を整えたり考えたりする時間として扱いやすくなると考えられるのです。

また、『ヨッシークラフトワールド』のような親しみやすいゲームを遊ぶ人でも、孤独感の低さやストイシズムの高さとの関連が見られました。

こちらは、安心して遊べる雰囲気や、気分を落ち着かせる時間が孤独感の低下と関係している可能性はあります。

しかし、このタイプのゲームについては、それがストイシズムとどう結びつくのかまでは、まだよくわかっていません。

またこの研究は横断調査である点に注意が必要です。

横断調査とは、ある時点での人々の状態や関係を調べる研究方法です。この調査方法では時間的な変化を追うことが出来ません。

そのため、ゲームを遊んだ結果としてストイシズムが高まり孤独感が低下したのか、もともとストイシズムが高い人がこうしたゲームを好むのかは分かりません。

また、測られたのは自己申告による孤独感とストイシズムであり、現実の人間関係や行動の変化を追跡したわけでもありません。

しかし今回の結果は、一人用ゲームにも、孤独感と関係する心理的な作用がある可能性を示しています。

ゲームが孤独感に関係するとしても、それは必ずしも「誰かとつながるから」だけではないのです。

元論文

The Effects of Open-World and Fun, Accessible Games on Perceived Loneliness and Stoicism in Adults: Cross-Sectional Survey Study
https://doi.org/10.2196/89304

ライター

相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。

編集者

ナゾロジー 編集部

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