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111歳で初めて父親になった驚異のムカシトカゲ「ヘンリー」、現在は推定130歳

  • 2026.6.28
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

111歳で初めて父親になる。

人間ならまず考えられないような偉業を成し遂げた爬虫類が、ニュージーランドにいます。

その名はヘンリー

ニュージーランド固有のムカシトカゲで、現在は推定130歳前後ともされる、世界最長寿級の個体です。

しかもヘンリーの人生は、ただ長いだけではありません。

若いころから気難しく、メスにかみつき、長く単独飼育されていたにもかかわらず、高齢になってから突然、繁殖に成功したのです。

いったいヘンリーとは、どんな生き物なのでしょうか。

目次

  • 気難しい“老人”だったヘンリーが111歳で父親に
  • 「第三の眼」をもつ神秘のムカシトカゲ

気難しい“老人”だったヘンリーが111歳で父親に

ヘンリーは、ニュージーランド南島北部のスティーブンズ島で、1890年代から、遅くとも1910年代ごろに孵化したと考えられています。

1970年には、インバーカーギルのサウスランド博物館に移され、以後、長く人々に親しまれてきました。

名前の由来は、イングランド王ヘンリー8世です。

当初、飼育スタッフはヘンリーが多くのメスと繁殖することを期待していました。

しかし実際のヘンリーは、なかなかの問題児でした。

他のオスと争い、メスの「ミルドレッド」と引き合わせられたときには、彼女の尾の先端を噛み切ったとされています。

しかも、それは一度だけではありません。

こうした攻撃的な性格のため、ヘンリーは長いあいだ単独で飼育されることになりました。

繁殖どころか、他の個体と一緒に過ごすことさえ難しかったのです。

実際の「ヘンリー」の写真/ Credit: en.wikipedia

ところが2008年ごろ、転機が訪れます。

ヘンリーの生殖器付近にあった「がん性の腫瘍」が取り除かれたのです。

するとヘンリーの行動は変化し、繁殖行動を示すようになりました。

そして2009年、推定111歳でついに初めて父親になりました。

相手は、かつて尾を噛まれたミルドレッドです。

彼女も当時70代と考えられていました。

ミルドレッドは12個の卵を産み、そのうち11個が約223日後に孵化しました。

「高齢すぎて繁殖は難しい」と思われていたヘンリーの成功は、世界中のメディアで報じられました。

気難しい老ムカシトカゲが、111歳で突然パパになる。

このあまりにドラマチックな展開によって、ヘンリーは一躍、国際的なスターとなったのです。

「第三の眼」をもつ神秘のムカシトカゲ

ヘンリーの面白さは、個体としてのエピソードだけではありません。

そもそも「ムカシトカゲ」という生き物自体が、非常に奇妙です。

名前には「トカゲ」とありますが、ムカシトカゲはトカゲではありません。

彼らはムカシトカゲ目と呼ばれる古代爬虫類のグループに属しています。

この系統は、トカゲやヘビの祖先と非常に古い時代(約2億5000万年前)に分かれたもので、現在ではムカシトカゲだけが生き残っています。

そのためムカシトカゲはしばしば「生きた化石」と呼ばれます。

見た目はトカゲに似ていても、進化の歴史をたどれば、まったく別系統の古代的な爬虫類なのです。

実際の「ヘンリー」の写真/ Credit: en.wikipedia

さらにムカシトカゲには、頭頂部に「第三の目」と呼ばれる器官があります。

これは頭頂眼と呼ばれ、明暗を感じ取ることができるとされています。

人間の目のように景色を見るものではありませんが、基本的なレンズや網膜、神経接続を備えた不思議な器官です。

また成長が非常に遅く、長寿であることも大きな特徴です。

ムカシトカゲは100歳を超えても繁殖できる可能性があり、200年近く生きるともいわれます。

ヘンリーの111歳での初めての父親デビューは、例外的なニュースであると同時に、ムカシトカゲという生物の驚くべき長寿性を象徴する出来事でもあります。

2024年、ヘンリーは他のムカシトカゲたちとともに、ニュージーランド南島、インバーカーギルのクイーンズ・パーク動物保護区にある新しい屋外型の飼育施設へ移されました。

現在はミルドレッドや、もう1匹のメスであるルーシーとともに暮らしていると報じられています。

かつては孤独で気難しい個体だったヘンリーは、今ではニュージーランドを代表する人気者となりました。

ハリー王子と対面したこともあり、ドキュメンタリー作品にも登場しています。

その姿は、単なる長寿動物という枠を超え、ニュージーランド固有の自然の不思議を伝える象徴になっているのです。

ヘンリーの物語が教えてくれるのは、生命の時間感覚は私たち人間の尺度だけでは測れないということです。

推定130歳前後となっている現在も、ヘンリーは静かに生き続けています。

長い進化の歴史を背負ったその小さな体は、まるで「生きる時間の長さ」そのものを私たちに見せているようです。

参考文献

At 111 Years Of Age, Henry The Tuatara Shocked His Keepers When He Became A First-Time Father
https://www.iflscience.com/at-111-years-of-age-henry-the-tuatara-shocked-his-keepers-when-he-became-a-first-time-father-83889

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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