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映画化で描かれた“原作にはない”仕掛け「脚本すばらしい」「声出して笑った」“名脚本家”のオリジナル要素に賛辞の声

  • 2026.7.25
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綾野剛 (C)SANKEI

「このマンガがすごい!2021」オンナ編第5位、「マンガ大賞2021」第3位を受賞し累計50万部を突破した和山やまの同名コミックを、山下敦弘監督×野木亜紀子脚本のタッグで映画化した『カラオケ行こ!』。『アンナチュラル』『MIU404』など数々のヒット作を手がけてきた野木亜紀子が脚本を担当したことで、原作の持つ独特なユーモアと繊細さをそのまま映像に落とし込むことに成功した一作となっている。

※以下本文にはネタバレが含まれます。

ヤクザと中学生、ありえない組み合わせが生む奇妙な友情

合唱部の部長を務める中学生・岡聡実(齋藤潤)は、ある日突然ヤクザの成田狂児(綾野剛)にカラオケへ誘われる。組のカラオケ大会で最下位になると恐怖の罰ゲームが待ち受けているという狂児は、聡実に歌のレッスンを頼み込む。勝負曲はX JAPANの「紅」。嫌々ながらも歌唱指導を引き受けた聡実だったが、週を重ねるうちにふたりの間には奇妙な変化が訪れる。

「このマンガがすごい!」で上位に選ばれた原作の実写化であるため、ファンの期待値は高かった。しかし、野木亜紀子の手によるオリジナル要素も加えながら、原作ファンからも高く評価される完成度を誇っている。北村一輝、芳根京子、RED RICE(湘南乃風)ら実力派が脇を固め、主題歌はLittle Glee Monsterが『紅』を担当した。

野木亜紀子脚本が引き出した、綾野剛と齋藤潤の化学反応

本作最大の見どころは、綾野剛と齋藤潤という異色コンビの掛け合いだ。「ふたりの絶妙な関係が好き」というSNSの声が示す通り、年齢も立場もまるで異なるふたりが、カラオケを通じてじわじわと心を通わせていく過程が本作の核心だ。

聡実役の齋藤潤はオーディションで選ばれた新星で、等身大の中学生としてのリアリティと瑞々しさが光る。変声期という思春期特有の悩みを抱えながら、狂児との交流を通じて少しずつ自分と向き合っていく聡実の姿は愛らしく、思わず応援したくなる。

一方の綾野剛は、怖そうでどこか憎めない関西弁のヤクザ・狂児を体当たりで演じた。映画『ヤクザと家族 The Family』でシリアスなヤクザ役を演じた綾野が、今回は打って変わってコメディに挑んでいる。余裕と穏やかな雰囲気ながら、底知れない迫力を漂わせる狂児を見事に体現している。

4本の名作映画が聡実の心境を表す

さらに本作には、原作漫画と異なる演出として聡実が幽霊部員として所属する「映画を観る部」のシーンが重要な演出のひとつとなっている。

聡実と部員の栗山(井澤徹)は、クラシック映画を4本観ている。1つ目は1949年の『白熱』。そこで登場するギャングに聡実はヤクザである狂児を重ねて見ていた。2つ目は1942年のロマンス映画の有名作『カサブランカ』。「愛」という感情にピンとこない聡実は本作を観ながら栗山から「愛とは与えるものらしい」という言葉を受けて考えるようになる。3つ目は1947年のクリスマス映画『三十四丁目の奇蹟』。声変わりによってこれまで通りに歌えない聡実が抱える、成長という現実に対する葛藤を示す。4つ目は1948年の戦後のローマを舞台に不条理なドラマを描いた『自転車泥棒』。物語の終盤、部活のコンクールや狂児との関係性など、思春期らしい世界への苛立ちやもどかしさが重ねられている。

そしてこれらの映画を観る装置にも、巧みな仕掛けが施されている。巻き戻し機能が壊れたビデオデッキで観ているのがミソだ。ヤクザとの交流が主軸でありながら、一度きりの学生生活を送る聡実の青春物語でもあることを感じさせる。クラシック映画が登場することで時代やテーマを匂わせる演出はままあることだが、“巻き戻せない装置”として登場したことで、この映画に欠かせない一要素に。漫画を原作とする映画化作品として映像ならではの演出を、巧みに加えたオリジナリティが光っている。

「脚本すばらしい」「声出して笑った」という声の通り、本作はシンプルにエンタメとして抜群に面白い。しかしそれだけにとどまらず、変声期という“失われていく何か”への切なさや、ヤクザと中学生という本来交わるはずのないふたりが互いの孤独に気づいていく瞬間の温かさも、しっかりと心に刺さってくる。「エンタメとして最高!」という声は、その両方を兼ね備えた本作への、これ以上ない賛辞だろう。


出典:映画『カラオケ行こ!』公式サイトより

ライター:山田あゆみ
映画コラム、インタビュー記事執筆やオフィシャルライターとして活動。X:@AyumiSand

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