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異例の10分“スタンディングオベーション”「とてつもない」興行収入32億円 13年前、“世界に衝撃”を与えた名作映画

  • 2026.8.6
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左から是枝裕和監督、黄升炫、二宮慶多、福山雅治(C)SANKEI

現在公開中の映画『箱の中の羊』で、亡くなった息子に瓜二つのヒューマノイドを家族として迎え入れる一家の悲しみと再生を描いた是枝裕和監督。そんな是枝監督は13年前にも、親子の関係性を「血縁」と「共に過ごした時間」という二つの軸で問いかける名作を生み出している。それが、2013年に公開された福山雅治主演の映画『そして父になる』だ。

『そして父になる』は、第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で審査員賞を受賞。日本映画としては26年ぶりとなる快挙を成し遂げ、現地では10分以上にも及ぶスタンディングオベーションが巻き起こった。さらにスティーヴン・スピルバーグ監督が深く感銘を受け、ドリームワークスでのリメイクが決まるなど、世界中に大きな衝撃を与えた一作である。日本国内でも「とてつもない映画に出会ってしまった」と多くの観客を魅了し、今なお人々の心に残り続けている。

※以下、作品内容に関するネタバレが含まれます。

血か、時間か。ふたつの家族が迫られる無情な選択

大手建設会社に勤める野々宮良多(福山雅治)は、都心の高級マンションで妻みどり(尾野真千子)と6歳の息子・慶多と暮らすエリートだ。仕事にも家庭にも恵まれていた良多のもとに、ある日病院から衝撃の連絡が届く。6年間育ててきた慶多が、出生時に取り違えられた他人の子どもだったというのだ。

取り違えられた子どもは、電器店を営む斎木雄大(リリー・フランキー)と妻ゆかり(真木よう子)の一家にいる琉晴(黄升炫)。斎木家は、野々宮家とはあらゆる意味で対照的な、賑やかで大らかな家族だ。互いの実の子と育ての子を“交換”するという決断を迫られたふたつの家族は、それぞれの葛藤を抱えながら向き合うことになる。“血のつながり”か「共に過ごした時間」か。本作はその問いに揺れる二組の家族を丁寧に描き出す。

福山雅治とリリー・フランキー、対照的な父親像から見える親子とは

エリートの良多が雄大の家族と過ごすうちに自分の“父親像”を問い直していく過程こそ、タイトルの示す通り本作の核心だ。福山雅治演じる良多は、厳格な父親とそりが合わなかった過去や、実の母ではなく後妻に育てられた経験から、親子の関係性について自身の中に明確な答えを持てずにいた。その結果、ありのままの自分としてではなく、父親という役割をこなすように生きてきた。

慶多と琉晴を交換し、それぞれの家族が暮らし始めた時、良多は琉晴に「お父さんと呼ぶように」と告げる。「なんで?」と繰り返す琉晴に「いずれ分かる」と答えた良多だったが、「なんでだろうな…」と言葉に詰まってしまう。役割として父親であり続けてきたつもりだった良多が、改めてその役割を言葉にしようとした瞬間、自身の中にも疑問が芽生えた場面だ。その後、あることをきっかけに琉晴への接し方は変化していく。

雄大を演じたリリー・フランキーは、完璧主義で感情を抑制する良多とは対照的に、不器用ながらも子どもと同じ目線で自然体に向き合う父親を体現した。正解があるわけではないが、一人の人間として子どもに向き合っていたのは雄大だった。

リリー・フランキーは現在、TBS金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』に出演中。本作での飄々とした温かみある父親役とはまた異なる顔を見せている。
妻・みどり役を演じた尾野真千子、ゆかり役の真木よう子も、それぞれ異なる母親像を体現し物語に奥行きをもたらしている。さらに、是枝監督は子役たちに台詞を伝えずに意味だけ説明するという演出を用いており、母親たちが返す言葉にも自然な説得力が宿っている。

第66回カンヌ審査員賞が示す、普遍的な問い

カンヌ国際映画祭審査員賞のほか、サン・セバスチャン映画祭観客賞も受賞した本作。興行収入は32億円を記録し、是枝監督作品の中でも屈指のヒット作となった。「設定からしてすごい」という声が示す通り、子どもの取り違えという現実に起きた事件をもとに描かれた本作は、家族・親子とはどういうものかというテーマを問いかけ続ける。観終わったあと、『そして父になる』というタイトルがじんわりと胸に染みてくる。そんな映画だ。


ライター:山田あゆみ
映画コラム、インタビュー記事執筆やオフィシャルライターとして活動。X:@AyumiSand

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